報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の県道」

2021-12-10 20:23:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日22:30.天候:曇 宮城県石巻市小渕浜大宝 ファミリーマート]

 鮎川港を離脱して、最初のコンビニに入店した私達。
 大型車駐車場もあり、そこには大型トラックが2台ほど休んでいた。
 また、普通車駐車場は週末ということもあってか、若者の乗った車が目立つ。
 中には、高橋みたいなヤンチャなタイプな若者も。
 高橋が見たら、あの走り屋使用の車、なんて評価するだろうか。
 あいにくと私は、そういうのには詳しくないから、何とも言えない。
 トイレを借りた後、リサは飲み物だけでなく、ファミチキやファミコロを購入していた。

 愛原:「オマエ、また食うのか?」
 リサ:「うん、夜食。緊張してお腹減ったから。あと、さっきトイレで出したから」

 リサは自分の尻を指さして言った。

 愛原:「あ、そう……」

 かくいう私も、コーヒーを購入していたが。
 コンビニでコーヒーを入れるのは久しぶりだ。

 善場:「それでは出発します」

 善場主任は、運転席の部下に命じて車を出させた。
 再び暗い県道を突き進むことになる。
 時折、真新しい区間に入ることがある。
 カーナビを覗き見るが、同じ県道2号線であることに変わりは無いようだ。
 恐らく、震災復興区間だろう。
 旧道部分は打ち棄てられたか、或いは仮復旧時のまま残されているようである。
 で、新しい道なだけに線形が良い。
 ヤンチャな車がかっ飛ばしているのである。
 私達の乗った車も、けしてゆっくり走っているわけではないし、気持ち、法定速度オーバー気味であると言っても良い。
 まあ、警察が捕まえてこない程度のレベルであるが。
 それを軽く対向車線に飛び出して、追い抜いて行くのだから、よほどスピードを出していると見える。
 高橋も、私と出会う前はあんなことをしていたわけか。
 ただ、本当の『遊び人』達は県道2号線ではなく、220号線(コバルトライン)を走るのだとか。

[同日23:30.天候:曇 同市恵み野 ホテルルートイン石巻河南インター]

 石巻市も広いものだ。
 取引先の漁港から、途中休憩を挟んだからとはいえ、1時間以上も掛かったのだから。
 途中で牧山道路という、かつては有料県道だったトンネルを2つ通過した。
 今は無料開放されているが、これのおかげで、だいぶ時間短縮ができたのだという。
 地下トンネルではなく、山岳トンネルなのだが、かつては有料道路、つまり今でも自動車専用道路ということもあり、まるで霧生市を脱出する時の県道バイパスを彷彿とさせた。
 但し、このトンネルがある道路は、今は市道となっている。

 リサ:「

 リサは着くまでの間うたた寝をしていて、私に寄り掛かっていた。
 高橋に見られたら、ブチギレ案件だな。
 駐車場に入って、開いている駐車スペースに車が止まる。

 善場:「到着しました。お疲れさまでした」
 愛原:「ありがとうございます」

 運転席からの操作で、助手席後ろのスライドドアが度自動で開く。

 愛原:「リサ、起きろ。着いたぞ」
 リサ:「むー……」

 リサは眠い目を擦り、大きく欠伸をした。
 車から降りると、涼しい夜風が吹いて来た。
 そういえば、漁港の風も涼しかった。
 この辺りはもう秋なのだろう。
 涼しい夜風というか、風が少し強い。
 ビュウッと吹いて来て、リサや主任の髪が靡くのは当然のこと、リサのスカートも捲くれ上がりそうになるほどだ。

 愛原:「早いとこ入ろう」

 ホテルの中に入る。

 善場:「今日はありがとうございました。今夜のところはこのままお休み頂き、また明日、お話ししましょう」
 リサ:「眠い。寝る……」
 善場:「その通り。夜更かししないで寝るのよ」
 リサ:「はーい……」
 愛原:「私も、高橋が心配しているといけないので」

 先に部屋に戻ろうと思った。
 寝る前に、もう一度風呂に入ってこようかな。
 それとも、明日の朝風呂にするか。
 エレベーターに乗り込んで、客室フロアへと向かう。

 愛原:「じゃあな、リサ。また、明日」
 リサ:「うん……」
 愛原:「明日の朝は、ホテルのレストランでバイキング。つまり、食べ放題だ」
 リサ:「それは楽しみ」
 愛原:「で、昼か夜は約束通り、焼肉食べ放題に連れて行ってやるよ」
 リサ:「分かった。約束だよ」
 愛原:「ああ」

 なるべく安い店、探しておこう。
 リサは自分のシングルルームに入った。
 そして、私も自分のカードキーで同じフロアのツインルームに入る。

 愛原:「ただいまァ」

 室内は電気が点いていて、テレビも点いていたのだが、何故か室内に高橋はいなかった。

 愛原:「ん?」

 その代わり、バスルームから水の音がする。
 どうやら、シャワーか何か使っているようだ。
 出る前に一緒に大浴場に入ったのに、改めてシャワー使っているのか……。

 愛原:「ん!?」

 更に驚いたことに、高橋のベッドの上には、何故か女性用のパンティが無造作に置かれていた。
 デザインからして、大人の女性の下着のようである。
 何だってこんなものが???
 黒を基調としたシルクのショーツだ。
 恐らく、20代の女性をターゲットにしたデザインだろう。
 リサも黒いショーツを持っているが、生理用だったり、そうでなくても、まだガーリーなデザインである。
 ん?20代女性???

 高橋:「ぅおっ!?先生!?」

 その時、バスルームから高橋が出て来た。

 愛原:「オマエ1人か?!」

 私はバスタオルだけ下半身に巻いている高橋を退かして、バスルームの中を覗いた。

 高橋:「そ、そうです!」

 確かに、バスルームには高橋1人だけだったようだ。

 愛原:「この下着は何だ!?」
 高橋:「そ、それは、その……」
 愛原:「ん?何だ?言ってみろ!」
 高橋:「ぱ、パールのパンツです……」

 やっぱりか。
 それがどうしてここにあるのか……。

 愛原:「で、それがどうしてここにあるんだ?」
 高橋:「パールから分捕って来ました」
 愛原:「嘘つけ。普通に貰って来た……というか、借りて来たんだろ!」

 彼氏が彼女のパンティを持ち去ってきたというわけだ。

 高橋:「そ、そうです」

 何があったのか、私はだいたい推理できた。

 愛原:「俺達が出掛けている間、どうせヒマだったんで、パールの所に会いに行った、或いはここに呼んだか?」
 高橋:「お、俺の方から行きました……。というか、パールが迎えに来たんで……」

 パールと絵恋さんはシングルの部屋を別々に取っているらしい。
 絵恋さんの目を盗んで、高橋はパールの部屋に入り、そこで密会劇を繰り広げたようである。
 そして、私が帰って来る直前に帰り、シャワーを浴びていたというわけだ。

 愛原:「全くもう……。こっちは緊張した仕事だったってのに……」
 高橋:「さ、サーセン……」
 愛原:「何発ヤった!?」
 高橋:「え、えーと……さ、3回ですw」
 愛原:「そんなに!?若いねぇ!」
 高橋:「へへ、どうも……」

 やっぱり高橋、LGBTのGじゃないじゃないか。

 高橋:「あ、あの……。もし良かったら、俺、姉ちゃんには黙っててますんで、先生は先生で、リサん所に行っても……」
 愛原:「アホかーい!!」

 スパーン!(丸めた新聞紙で、高橋の頭を引っ叩く私)

 高橋:「ああッ!も、もっとォ~!」
 愛原:「ったく!俺は大浴場でもう一っ風呂行ってくる!」
 高橋:「い、行ってらっしゃいませ!」

 とんでもない仕事終わりだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「深夜の取引」

2021-12-10 14:35:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日18:00.天候:晴 宮城県石巻市恵み野 ホテルルートイン石巻河南インター]

 ホテルのレストランで夕食を取る。
 朝食会場にもなっているが、夜は居酒屋として営業している。
 焼肉食べ放題の報酬を先延ばしにされたリサは、今だ納得いっていないようだったが、代わりにこのレストランでがっつり食べることで気を紛らわそうとしているようだ。

 リサ:「上田カツカリー!串カツ盛り合わせ!若鶏もも焼き!鶏のから揚げ!それと……」
 善場:「はいはい」
 愛原:「そんなに食う気か……」
 リサ:「リサ・トレヴァーの食欲を無礼るなよ?」
 高橋:「どこかのウマ娘みたいなこと言いやがってw」
 愛原:「しゅ、主任、大丈夫なんですか?」
 善場:「まあ、リサの言ってることは全部事実ですので。このホテル内での諸経費は全てデイライトで持ちますので、所長方も遠慮なさらず……。あ、業務中ですので、アルコールは控えてください」
 リサ:「……塩豚カルビと、あとオレンジジュース!」
 愛原:「ほ、本当に食べる気か?」
 リサ:「先生のお肉食べていいなら、やめるけど?」
 愛原:「いや、それは勘弁してくれ……」
 高橋:「姉ちゃん、あえてホテルを出ないことに意義があるんだな?」
 善場:「その通りです。高橋助手も、洞察力が付いて来ましたね」
 高橋:「へへっ!まあ、名探偵になるなら、やっぱ名探偵の弟子になるのが一番の近道って俺の判断、正しかっただろ?」
 善場:「その通りです」
 愛原:「め、名探偵だなんてそんな……」
 善場:「もしも三流探偵だったら、所長は霧生市内でゾンビに食い殺されていたと思います」
 高橋:「それは言えてるな」
 善場:「二流の探偵なら、ゾンビの攻撃からは逃れられたかもしれませんが、そこにいるリサに食い殺されたでしょう」
 リサ:「それは言えてる。一緒にいたタイラント君が、『こいつは食い殺すべきです』って言ってたんだけど……」
 善場:「そして、食い殺さないという判断をしたリサも立派です」
 リサ:「うへへへ……。ま、まあね……」(´∀`*)
 善場:「取引先に行くまでホテルを出ないのには、理由が2つあります。1つは、既に我々がヴェルトロなどに監視されている恐れがあることです。外に出た瞬間、襲撃される恐れがあります」
 愛原:「善場主任やリサがいれば大丈夫でしょう?」
 善場:「我々はそうですが、相手はテロリストです。周囲の一般人を巻き込むことなど、躊躇だにしないでしょう」
 愛原:「……それもそうか」
 善場:「もちろんホテル内は全て安全かと言われれば、もちろん保証は無いですが、外よりはマシです」
 愛原:「なるほど」
 善場:「それと、もう1つは……。無関係な一般人2人は巻き込みたくないですからね」
 愛原:「パールと絵恋さんのこと?」
 善場:「外で食べようとするならば、絶対相伴に預かろうとするはずですから」
 高橋:「……確かにな」
 善場:「無関係な一般の方々には、違うホテルに泊まって頂き、テロ組織からの襲撃を回避してもらいます」
 愛原:「その方がいいですね」
 高橋:「それで姉ちゃん、取引先にはいつ?」
 善場:「先方は22時という時刻を提示しております」
 愛原:「深夜帯ではあるけども、案外早い時間ですな」
 善場:「恐らく、取引現場が漁港だからでしょう。夜半を過ぎると、その時点で漁に出る準備などがされ、人目がある恐れがありますから」
 愛原:「なるほど」

[同日22:00.天候:曇 同県同市鮎川浜南 鮎川漁港]

 夕食を終えた後、私達は大浴場に入った。
 大浴場は天然温泉ではなく、ラジウム人工温泉であったが、足を伸ばして湯船に入れることに意義があると私は思っている。
 洗濯したリサの服は案外きれいになっていた。
 血液はなかなか普通の洗剤では落ちないものだが、クリーチャーのそれは違うのだろうか。
 それでもリサはその服を着るわけではなく、着替えている服のまま現地に行くことにした。
 緑色のノースリーブのTシャツに黒いプリーツスカートは丈が短い。
 上着として、グレーのパーカを羽織っている。
 現地へは、善場主任達の車で向かった。
 途中で襲撃に遭うことも事故に遭うこともなく、漁港には無事に到着する。
 取引現場から少し離れた駐車場に車を止め、そこから徒歩で向かう。
 私はスーツを着用し、黒いレザーのケースを持って車を降りた。

 愛原:「取引現場はあそこだ」

 天候は曇っていたが、時々雲間から月明りが覗く。
 近くには住宅街もあって、そこからの明かりが夜景を彩っている。
 だが、漁港そのものには人の気配は無かった。
 どんなに暗くから操業を開始する漁船でも、やはり夜半過ぎないと漁師の姿は無いのかもしれない。
 私達は波止場に着いた。
 そこには、いくつもの漁船が係留されている。
 本当に、ここに取引相手が来るのだろうか。
 そう思っていると、海の向こうから一隻の舟が近づいて来た。
 何だかクルーザーのような船だった。
 ライトは一切点けておらず、よくこんな暗い漁港を進むことができるものだと思った。
 さすがに、速度はゆっくりとしたものだったが。
 そのクルーザーが桟橋に接岸する。
 そこから数人の男達が降りて来た。
 真ん中にいる男以外は、明らかにショットガンを持っているし、懐に手を入れているところをみると、ハンドガンを持っている者もいるらしい。

 男:「あなたが愛原公一名誉教授の代理人ですか?」

 真ん中の男が前に出て来た。

 愛原:「はい。愛原学と言いまして、公一の甥です」
 男:「なるほど。そこにいるのは、かの日本アンブレラが開発したという、リサ・トレヴァーの改造版ですね?」
 愛原:「改造版……というのは、少し不適切な表現かと。ですがまあ、それ以外は正しいです」

 私はリサが被っているフードを取った。

 男:「おおっ!」

 リサは第一形態に戻っており、『鬼』の姿になっていた。
 暗闇で光る赤い瞳に、クルーザーから降りて来た男達が息を飲んだ。

 男:「……おい」

 男が後ろに控えている男に、何かを命じた。
 すると、控えの男が何かを取り出す。
 大きな銃のようだったが、そういう形をしたもので、銃そのものではないようだ。

 男:「済まないが、スキャンさせてもらうよ」

 どうやら、バイオスキャナーらしい。
 確か、2005年頃、BSAAで開発されたものだ。
 それが今や、敵対組織のヴェルトロも持っているとは……。

 男:「凄い数値だ。確かに、あのリサ・トレヴァーで間違いないだろう。本当にそこのリサ・トレヴァーは、キミの言う事を聞くのか?」
 愛原:「リサが俺の味方である証拠を見せろだって」
 リサ:「ん」

 リサはスッと愛原と腕を組んだ。
 まるで、恋人同士のようである。

 愛原:「どうですか?あのリサ・トレヴァーが、こんなことできると思いますか?」
 男:「本当に制御不能なら、そもそもここまで来ることなどできませんな。それでは、取引と行きましょう。ここに100万ドルがあります。これを、そこのリサ・トレヴァーが受け取ってもらいたい」
 愛原:「……リサ」
 リサ:「うん」

 リサは愛原から離れると、別の男が持っているケースを受け取った。

 男:「本当に命令を聞いている。実に素晴らしい」
 愛原:「そうかな。で、このブツは?」
 男:「あなたから、私が受け取りましょう」
 愛原:「…………」
 男:「なぁに、心配要らない。取引さえ成功すれば、我々の銃口が火を噴くことはありません」

 リサは愛原の動向を見据えていた。
 もし男達が銃を発砲しようもなら、リサが庇うことはできる。
 体内のウィルスをばら撒くことも考えたが、恐らく愛原同様、ワクチンを打つなどして、抗体は持っているだろう。

 愛原:「……分かりました」

 私はケースを差し出した。
 ショットガンを持った男がそれを受け取る。

 男:「中身を確認させてもらいます」
 愛原:「どうぞ」

 男達はケースを開け、その中に向けてバイオスキャナーを向ける。

 愛原:「こっちも確認させてらいますよ?」
 男:「どうぞ」

 私もリサからケースを受け取ると、中身を開けた。
 確かに、中にはアメリカの100ドル札が詰め込まれていた。

 男:「どうやら本物のようだ。これで、取引は成立ですな」
 愛原:「あなた達はヴェルトロなのか?」
 男:「正確に言えば、ヴェルトロの下部組織です。ヤング・ホーク団と言いまして、私は団長のジャック・シュラ・カッパーと申します」
 愛原:「ああ、そう」
 ジャック:「あなたの伯父さんにお伝えください。これ以上欲張ると、本当にヴェルトロはあなたをクリーチャーにすることは厭わないと……」
 愛原:「伝えておきましょう」

 男達は再びクルーザーに乗り込むと、ライトも点けずに、しかし全速力で桟橋をあとにした。

 愛原:「あー……びっくりした……」

 直後、同じく無灯火の車が私達の後ろに止まった。

 善場:「お疲れさまです、愛原所長。急いで戻りましょう」
 愛原:「あ、はい」
 リサ:「喉乾いた。ジュース」
 善場:「ここから離れてからね!」

 私達が車に乗り込むと、車はライトを点けて走り出した。
 県道2号線を石巻市街に向かって走ると、上空からヘリコプターの音が聞こえた。

 愛原:「善場主任、あれは?」
 善場:「もちろん、BSAAのヘリです。今、彼らの舟を追っているところでしょう」
 愛原:「証拠の映像とかは撮らなくて良かったんですか?」
 善場:「そんなことをすれば、勘の良い奴らなら、すぐに取引を中止にするでしょう。事実、スキャナーを使っていましたよね?」
 愛原:「あれ、金属探知機でもあったんですか」

 とはいうものの、取引終了直後、証拠隠滅と称して私達を殺さない辺りは紳士的なのだろう。
 そう思っていたのだが……。

 善場:「それにしてもリサを連れて行って良かったですし、連中がリサの強さを理解できていて良かったです。彼らの装備では、リサを倒すことなどできないと察してくれたおかげで、所長方は無事だったのですから」

 そういうことか!
 確かにショットガンやハンドガン程度では、リサを殺すことはできない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする