報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOWの年始旅行」 2

2022-01-06 16:36:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日12:23.天候:曇 栃木県那須塩原市 JR那須塩原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。宇都宮線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕

 到着放送が車内に流れる。

 愛原:「新幹線だとあっという間だな」
 高橋:「そうですね」

 宇都宮駅での通過待ちなどがあったが、それでも1時間ちょっとで着けるのは早い。

 愛原:「よし、降りる準備をしよう」
 リサ:「はーい」

 リサは席を立つと、脱いでいたコートを着た。
 コートはフードの付いているもので、いざとなったらこれを被って、角だの長く尖った耳を隠す。
 もちろん今は人間の姿の第0形態なので、その必要は無い。

 愛原:「リサ、スカート短くしたか?」
 リサ:「し、してないよ。わたしの背が伸びただけ」
 愛原:「いや、見た目には伸びていない」
 リサ:「ヒドい……」

 何せ、今だに中等部の制服が着れるくらいなのだから。
 善場主任も小柄な体型なので、日本版リサ・トレヴァーは皆こうなのだろうか。
 中には『6番』のように、大人な体型の者もいたが、代わりに唯一太陽に弱いという大きな弱点を得てしまった。

 愛原:「そういった意味では、凛さんも同じかな?」
 リサ:「そう!凛もわたしと同じくらいだよね!ナカーマ!」

 やはり、日本版リサ・トレヴァーは……あ、いや、しかし母親の女将さんは普通の体型、普通の身長だぞ。

〔「2番線到着、お出口は左側です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください。まもなく、那須塩原です」〕

 列車は下り副線ホームに入線した。
 本線は通過線であり、ホームが無い為。

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いよう、お降りください。2番線は“なすの257号、郡山です。次は、新白河に止まります」〕

 私達は列車を降りた。
 ここで降りる乗客は多い。
 もちろん帰省客の他に、旅行客も多かった。
 温泉客の他にスキー客の姿も見られる。
 コロナ禍における緊急事態宣言も解除されて、少しはそういった人の流れが復活したようだ。

 高橋:「案外、人多いッスね」
 愛原:「そうだな」
 高橋:「帰りも新幹線っスか?」
 愛原:「そのつもりだが?」
 高橋:「那須塩原始発狙いですか?」
 愛原:「ああ、そういうことか。俺もそうしたかったんだけどな、あいにくと最近の“なすの”は郡山発着が多くて、那須塩原始発ってのが少なくなったんだよ」

 その分、本数も減ったと思われる。
 恐らく那須塩原始終着だと客が少ない為、郡山始終着に変更したのだろう。
 もちろん、全く無くなったわけではない。
 また、“なすの”を郡山発着にしたことにより、“やまびこ”の本数も減ったような気がする。

 愛原:「そこで帰りは指定席だ」
 高橋:「それならいいっスね。でも、指定席は1番前とかじゃないでしょう?」
 愛原:「分かってる。善場主任には、報告済みだ。まかり間違えてBSAAが出動してくれることはないよ」
 高橋:「それならいいっスけどね」

 ホームからコンコースに下りる。

 愛原:「ちょっとトイレ休憩」
 高橋:「あ、俺も行ってきます」
 リサ:「じゃあ、わたしも」
 愛原&高橋:「どうぞどうぞ!」
 リサ:「これ、何のネタ!?」

[同日12:40.天候:曇 同市内 JR那須塩原駅西口→送迎車内]

 高橋:「ここから迎えの車に乗るんでしたよね?」
 愛原:「そう。待ち合わせはこの時間なんだが……。あ、あれかな?」

 西口に行くと、白いハイエースが止まっていた。
 車体には、『ホテル天長園』と書かれている。
 確かにあれだけ見れば、それこそホテルの送迎車にしか見えないだろう。

 愛原:「すいません、予約していた愛原ですが……」
 運転手:「愛原様ですね。どうぞ」

 紺色の法被を着た50代くらいの男性運転手が、助手席後ろのスライドドアを開ける。
 取っ手に手を掛ければ、後は自動で開くタイプ。
 法被には『ホテル天長園』ではなく、『天長会』と書かれていた。
 これが一気に新興宗教感を出す。

 愛原:「宿泊客は私達だけですか?」

 私は後ろのシートに3人並んで座りながら、運転手に聞いた。

 運転手:「そうです。……あ、いや、この車には、他にも乗って来ます」
 愛原:「あ、そうなの」

 そこへ、私より明らかに年上のオバちゃん2人がバタバタと乗って来た。

 オバちゃんA:「きゃーっ!間に合った間に合った!」
 オバちゃんB:「小野木さん、ありがとね!」
 運転手:「2人とも、今日はお客さんが乗ってるんだから、静かにしてくださいね」

 どうやら宿泊客じゃ無さそうだ。
 というか、運転手と顔見知りな所を見ると......関係者だろうか?
 2人のオバちゃんは、運転席すぐ後ろの2人席に並んで座った。

 運転手:「それじゃ、いいですか?出発しますよ」

 運転手はスライドドアを閉めると、すぐに運転席に乗り込んだ。
 そして、すぐに車を出す。

 オバちゃんA:「お兄さん達、どこから来たの?」
 愛原:「と、東京からです」
 オバちゃんA:「観光?」
 愛原:「というか、ホテル天長園の女将さんと娘さんに会いに……。で、せっかく行くんだから、一泊しようかなと……」
 オバちゃんB:「あらぁ、上野さんにね!上野さんの娘さん、また今年も『最も危険な巫女』に選ばれたのよ!」
 オバちゃんA:「他にいないものねぇ!」
 リサ:「はーい!わたしわたし!」

 リサのヤツ、『最も危険な巫女』に立候補しやがった!
 さすが、元『最も危険な12人の巫女』の1人。

 オバちゃんA:「興味があるの?でも、『最も危険な巫女』になるには、まずは入信しないといけないのよ?」
 オバちゃんB:「せっかく天長園に行くんだから、入信していくといいわよ!」
 オバちゃんA:「そうよそうよ!」
 運転手:「ちょっと何言ってんの、2人とも!年始は教祖様が下野されてるんだから、この期間中は無理だよ」
 オバちゃんA:「それもそうね」
 オバちゃんB:「残念だわ~。でも、理事長さんはいらっしゃるでしょう?」
 運転手:「理事長ねぇ……」
 オバちゃんA:「そうよ!理事長さんなら、入信の儀式を執り行える権限があるわ!」
 愛原:「いや、あの、私達は入信しに来たわけじゃないので……。それに、そもそも理事長さんって誰ですか?」
 オバちゃんA:「白井さんよ。白井理事長さん」
 愛原:「は!?」
 高橋:「あ!?」
 リサ:「え!?」
 愛原:「白井理事長さん……?因みに、下のお名前は?」
 オバちゃんA:「下の名前……何て言ったかしらねぇ……。伝……伝衛門!?」
 オバちゃんB:「違うわよ!伝兵衛さんじゃなかったっけ?」
 オバちゃんA:「伝左衛門さんかもしれないわよ?」
 オバちゃんB:「違うって!」

 ダメだ、こりゃ。
 オバちゃんの記憶と情報ほど、怪し過ぎる物は無い。
 だが、天長会の幹部に白井という者はいて、もしかしたら、それが白井伝三郎かもしれない。
 だとしたら、ものの見事に捕まえられるかも!?
コメント (4)
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