報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の目覚め」

2022-01-16 20:19:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月5日10:00.天候:晴 栃木県大田原市 那須赤十字病院]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 いよいよ、今日は退院日である。
 何だか、夢見心地な感じであったが、病院で目が覚めると、現実に戻って来たという実感が湧いた。

 高橋:「先生、おはようございます。お迎えに上がりました」

 私が退院の準備をしていると、高橋が入って来た。

 愛原:「おっ、高橋」
 高橋:「先生、御無事で何よりです」
 愛原:「まあ……俺も色々と抗体作らされたからな。リサは?」
 高橋:「下で待ってます。コロナ対策のせいで、この病院、原則面会禁止ですから」
 愛原:「まあ、今はどこの病院もそうだろう。退院の迎えは例外でOKなんだな」
 高橋:「そういうことです」

 それでも1人だけってことか。
 何しろ、患者によっては大きな荷物になるからな。

 高橋:「それでは参りましょう」
 愛原:「うん」

 入院費用の支払いは既に済んでいた。
 Tウィルスとか、バイオテロに関わると明らかに分かるものについては公費負担になるのだが、場合によっては立替払いになることもある。

 リサ:「先生……!」

 エレベーターで1階に下りると、リサが待っていた。
 リサは両手を胸に当てて、涙ぐんでいた。
 気が高ぶると元の第1形態に戻ってしまう恐れがあるからか、今は私服の上にフード付きのジャンパーを着ていて、フードを被っている。

 愛原:「よう、心配掛けたな」
 リサ:「ホントだよ……!」
 高橋:「おい、リサ。先生は被害者なんだぞ」
 リサ:「分かってるよ!」
 愛原:「ははは……。ところで、何で来たんだ?」
 高橋:「車です。この病院、駅から離れてるんで。先生も病み上がりで、お疲れでしょうから」
 愛原:「まあ、たった数日の入院というだけでも、体は鈍るものだな」

 そういうことを考えれば、運動も兼ねて鉄道やバスの利用でも良いような気がした。
 だが、もう車で来たというのなら仕方が無い。

 高橋:「ちょっと待っててください。今、車回して来ますんで」
 愛原:「ああ、分かった」

 高橋が先に病院の外に出て、車の方に走っていった。
 待っている間、リサがすり寄って来て、私の左手を掴んで来る。

 リサ:「…………」

 そして、俯いた。
 私は試しに、リサの頭を触ってみたが、角が生えている感触は無かった。
 フードを取ってやると、サラサラの黒髪が現れて、しかしやっぱり角は生えていなかった。
 もちろん、耳も人間同様、丸いものである。

 愛原:「まあ、心配かけたな」
 リサ:「うん……」

 そして、エントランスにレンタカーがやってくる。
 いつもはモノスペースタイプのバンだったが、今度はライトバンだった。
 これはレンタカーショップで借りる時に、値段が安いのと、探偵として使う時に、ライトバンの方が目立たない上、どこにいても違和感が無いからである。

 高橋:「お待たせしました」

 高橋が運転席から降りてきて、ライトバンのハッチを開けた。
 そして、そこに私の荷物を積み込んでくれた。

 高橋:「じゃあ、どうぞ」

 高橋は助手席のドアを開けてくれたが……。

 リサ:「いや。先生、私と一緒に乗って」

 と、リサはリアシートを指さした。
 心なしか、一瞬リサの人差し指の爪が長く鋭く伸びたような気がした。

 高橋:「おい、リサ!……」

 高橋はリサを窘めようとしたが、黙り込んだ。
 何か、考えているようだ。

 高橋:「先生、どうします?先生の御好きに……」
 愛原:「そうか?じゃあ、リサの希望を聞いてやるよ」
 リサ:「っ……!やった!」

 リサの顔がパッと明るくなった。
 思えば、女将さんに襲われた私を真っ先に助けに来てくれたのはリサだということだ。
 それなら、リサの希望を聞いてやるのが筋というものだろう。

 愛原:「悪いな、高橋」
 高橋:「いえ、いいんです。今回ばかりは俺、クソの役にも立ちませんでしたから」
 愛原:「そう卑下するなよ」

 高橋が大浴場でのぼせたのは、やはり女将さんの策略であった。
 のぼせたのではなく、リサと同じ触手攻撃にやられただけのことだ。
 刺された痕があった。
 もちろん高橋にもTウィルスの抗体はある為、高橋がゾンビ化することはなかった。

 リサ:「先生はこっち!運転席の後ろが上座なんだってね!」
 愛原:「そのビジネスマナーは当たっているけど、ライトバンじゃ当てはまらないんじゃない?」

 恐らくはライトバンの中でも、グレードの良いタイプなのだろう。
 ライトバンのリアシートは折り畳み式になっている為、座り心地に関してはあまり考慮されておらず、ヘッドレストも無いことが多い。
 しかし、これがグレードの良いタイプだと、ヘッドレストは付いていることがある。
 この車が正にそうだった。

 高橋:「それじゃ、出発します」
 愛原:「頼む」

 車が出発する。

 愛原:「道は分かるのか?」
 高橋:「ナビに住所を打ち込んでますから。高速使って、東京まで行きますんで」
 愛原:「ああ、分かった」

 私はスマホを取り出した。
 病院を出たら、善場主任に連絡するよう、言われていたのだった。

 愛原:「……あ、もしもし。愛原です。お疲れ様です。今、病院を出ました。……はい。車です。……はい。……あー、そうですか。分かりました。それじゃ、どうしましょうかね。多分、今からですと、午後になるかと思いますが……。あ、それでよろしいですか?……あ、分かりました。それじゃ、近くまで来たら、また御連絡させて頂きます。……はい、よろしくお願いします。……はい、失礼しますぅー」

 私は電話を切った。

 愛原:「善場主任、俺達の話を聞きたいから、今からデイライトの事務所に来てもらいたいそうだ」
 高橋:「今からっスか?午後になりますよ?」
 愛原:「それでいいそうだ。今日は善場主任、ずっと事務所にいるそうだから。だから、途中で昼休憩挟んで行こう」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「今からだと……埼玉県内のどこかのサービスエリアかパーキングエリアで昼飯行けるか?」
 高橋:「そうっスね。羽生か蓮田ってところかと思います」
 愛原:「よし。そこで昼飯にしよう。リサもいいな?」
 リサ:「うん」

 車は一先ず、東北自動車道のインターに向かって西進した。
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“大魔道師の弟子” 「帰省中の稲生勇太」 3

2022-01-16 15:49:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月5日20:00.天候:晴 埼玉県川口市 某料亭→稲生家]

 女将:「本日はありがとうございました」
 稲生勇太:「御馳走さまでした」
 イリーナ:「うちの屋敷でも、たまにああいうのが出るといいわね」
 マリア:「……すいません、私の魔力ではまだ難しく……」

 夕食会が終わって、料亭をあとにする稲生家と魔道士達。

 イリーナ:「御馳走様でした。この御礼は、今後の命運を左右する占いにて支払わせて頂きます」
 稲生宗一郎:「おお!ありがとうございます!」
 勇太:(やっぱりそれが狙いだったか)

 因みに帰りは徒歩である。

 イリーナ:「因みに明日は大雪になりますので、天候に左右される業務についてはご注意ください」
 宗一郎:「天気予報でもやっていましたが、やはりそうですか!」
 イリーナ:「ええ」

 稲生家に到着する。

 宗一郎:「機械警備を解除して……と」

〔警備を解除します。お帰りなさい〕

 勇太:「家の玄関も、カードキーか。進んだなぁ……」
 イリーナ:「うちもカードキーにしようかねぇ……」
 マリア:「エリアごとに、鍵がバラバラなのも面倒ですしね」
 宗一郎:「そうなのかい?」
 勇太:「『ハートの鍵』『スペードの鍵』『ダイヤの鍵』『クラブの鍵』と4つに分かれてる」
 宗一郎:「トランプか!」

 家の中に入る。

 宗一郎:「どうぞ、寛いでください。今、お風呂を沸かしますので」
 イリーナ:「お構いなく」
 マリア:「私は3階のシャワールームを使わせてもらいます」
 イリーナ:「マリアはそこが好きだねぇ……」

 家の奥のホームエレベーターを起動させる勇太。

〔上に参ります〕

 勇太:「取りあえず、先に荷物を置いてこよう」
 マリア:「そうだね」

 3人はエレベーターに乗り込んだ。
 両親は1階に残る。

〔ドアが閉まります〕

 エレベーターが上昇する。

 イリーナ:「それにしても、エレベーターは便利ねぇ。これは私の屋敷に、優先的に増設する案件ね」
 マリア:「こんな立派なエレベーター、増設できるスペースあります?」
 勇太:「スペース自体はあるでしょ。荷物用のエレベーターなら、実際にあるわけだし」

 厨房が地下にある為。

 イリーナ:「私の部屋の近くに、何とか増設できないかねぇ……」
 マリア:「その隣にある、謎の物置を撤去すれば何とかなると思います」
 イリーナ:「却下するわ」
 マリア:「何でですか!」
 勇太:(あまり、屋敷西側のことは口出ししないでおこう……)

〔3階です〕

 エレベーターを降りる。

 勇太:「マリアの荷物は、そっちの部屋に置いておこうか」
 マリア:「ありがとう」

 勇太はマリアの買った物を、ゲストルームに入れておいた。

 勇太:「買った服……後で見せてね」
 マリア:「うん、分かった。……試着の時に見せたと思うけど?」
 勇太:「試着しなかったヤツ」
 マリア:「……? ! ああ!」

 勇太の言っている意味が理解できたマリア。

 マリア:「……また今度ね」

 勇太が出て行ってから、着替えを始めるマリア。

 イリーナ:「何だい?早速着替えて、見せてあげるのかい?」
 マリア:「余所行きに買ったものなんですけどねぇ……」
 イリーナ:「今、余所行きじゃない」
 マリア:「服はともかく、下着は言われてから着るのもなぁ……と」
 イリーナ:「そうかね?勇太君くらい仲良くなったコなら、いいんじゃないかね?」
 マリア:「後にします。後」
 イリーナ:「ふーん……?まあ、いいけど」

 マリアは制服ファッションから、私服に着替えた。
 トレーナーにジーンズに着替えると、普通の白人女性のようである。
 魔女だと、いつも同じ服を着ているイメージがあるが、昔はともかく、現在はこんなものである。
 魔法技工士(魔法石を加工したり、魔法具を製作する者)だと、作業服を着ていたりする。
 ルーシーも似たような服を着ていて、マリアが制服ファッションを着ているのを見て、自分もとなったくらいである。
 互いに17歳~18歳で魔道士になったので、制服ファッションもよく似合った。

[同日22:00.天候:晴 同市内 稲生家3F]

 マリアは予定通り、3Fのシャワールームでシャワーを浴びた。
 屋敷にも当然風呂はある。
 しかし、シャワーブース単体としては設置されていなかった(強いて言うなら、地下のプールにあるくらい)。

 マリア:(屋敷の西側にも、シャワールームがあってもいいかな。師匠は長湯だからなぁ……)

 そうして体を洗い、再びパジャマを着る。
 因みにこの時、下着はイオンの専門的で買ったものではない。
 だが……。

 勇太:「マリア」

 シャワールームを出てゲストルームに戻ろうとすると、途中にある勇太の部屋。
 そこからドアを少しだけ開けて、勇太が顔を出していた。

 勇太:「良かったら、部屋に来ない?」

 と、手招きした。

 マリア:「! Hum...Right.師匠が寝てるかどうか、ちょっと確認してくる。待ってて」
 勇太:「うん、分かった」

 マリアはそっとゲストルームに戻った。
 そして、エアーベッドの上に横になっているイリーナの様子を覗き込む。

 イリーナ:「zzz……」
 マリア:(よし……)

 イリーナが寝ていることを確認したマリアは、自分の荷物を開けると、勇太が興味を示していた下着に着替え始めた。
 それは制服ファッションの下に着るガーリーなものではなく、どちらかというと大人っぽいデザインだった。
 契約悪魔よろしく、緑色を基調にしたカラーリングだったが、それもまたマリアらしいと言えた。
 その上からパジャマを着て、部屋を出て行った。

 イリーナ:(行ってらっしゃい……)

 因みに、イリーナにはしっかりバレていた。

 イリーナ:(うちでも、サバドを開催しようかねぇ……。本当はその為の、あの広さなんだけど……)

 イリーナは大きな欠伸をして、布団を被った。
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