[1月7日17:30.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅]
稲生勇太達を乗せた東武特急は、湘南新宿ラインという貨物線を走行していた。
ところが、埼京線に乗り入れる池袋付近で、急に徐行し出した。
どうやら、埼京線でもダイヤ乱れがある為、なかなか線路が空かないらしい。
特急などの優等列車は優先ダイヤで運転されるはずだが、そもそも線路が空かないとどうしようも無い。
ようやく池袋駅に到着した時、勇太はダイヤ通りに走行している山手線に乗り換えた方がいいのではと思ったほどだという。
何とか池袋駅を発車した特急だったが、隣を走る山手線よりもノロノロ走行で南下する。
で、時折止まる。
そんなことを繰り返し、ようやく列車は新宿駅に接近した。
〔「長らくのご乗車、お疲れ様でした。まもなく終点、新宿、新宿です。6番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際、お忘れ物、落とし物の無いよう、お支度ください。本日、昨夜からの積雪並びに強風の影響により、JR各線遅れが出ております。この電車も前の電車が詰まっている関係系で、およそ11分の遅れで新宿駅に到着致します。お急ぎのところ、電車遅れまして、大変ご迷惑をお掛け致しました。……」〕
恐らく、場内信号機は黄色2つの『警戒』だったのかもしれない。
鉄道信号の意味は道路信号とは違う。
『警戒』信号は、次の信号が赤の『停止』であることを意味し、車掌の言ったように、すぐ前に別の列車がいるという状態である。
この場合、列車の速度を時速25キロ以下に落とさなくてはならない。
速度制限には、これとは別に標識もあるのだが、例え標識の方が速い速度を表示していたとしても、遅い方に合わせなくてはならない。
列車は長いホームにゆっくりと入り、その半ばほどに停車した。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日、列車遅れまして申し訳ございませんでした。6番線に到着の列車は折り返し、17時32分発の特急“スペーシアきぬがわ”7号、鬼怒川温泉行きとなります。……」〕
勇太達が降りた時、既に折り返しの発車時刻が迫っていた。
これから車内清掃等が行われるだろうが、明らかに時間が足りない。
東武鉄道に帰る頃までには、定時ダイヤに戻れるだろうか。
マリア:「ちょっと待って」
マリアは列車から降りると、フロント部分に回り込んだ。
マリア:「勇太、これの写真撮って。ルーシーに送ってあげるヤツ」
勇太:「おっ、それはいいね」
エレーナとはケンカし合う仲であるが、ルーシーとは普通に仲良しのマリア。
同じイギリス人だからだろうか。
勇太:「よし。これを後でメールで送ってあげよう」
マリア:「どうして勇太が、ルーシーのメアド知ってるの?」
勇太:「えっ?いや、ははは……。前に教えてもらったことがあって……」
マリア:「ルーシーには私が送るから、今の写真転送して」
勇太:「あ、はい」
イリーナ:「2人とも、寒いから早いとこ行くよ」
勇太:「は、はい!」
マリア:「分かりましたよ」
[同日17:40.天候:晴 東京都渋谷区代々木 ホテルサンルートプラザ新宿]
住所は代々木になっているが、アクセスは新宿駅からの方が便利だ。
まあ、代々木駅からもアクセスできるのだろうが。
確かに新宿駅の南口から、徒歩数分で辿り着くことができた。
マリア:「Oh!凄いホテル!」
佇まいはエアポートリムジンバスも発着する高級ホテルな感じだが、これでも国際的には下から2番目のエコノミークラスに相当する。
勇太:「駅から近いホテルです」
イリーナ:「うん。アクセスは最高だね」
イリーナは目を細めたまま頷いた。
紫色の布マスクをしているが、その下の口元も、一応口角は上がっているように見えた。
勇太:「それじゃ僕、チェック・インしてきますので……」
イリーナ:「はい、これ。アタシのカード」
勇太:「ありがとうございます」
勇太は両手でプラチナカードを受け取ると、その足でフロントへと向かった。
マリア:「師匠が使われるには、少々カジュアルですかね?」
イリーナ:「駅から徒歩圏内というのは大きなポイントだけどね。……む!?」
その時、イリーナが細めていた目をカッと見開いた。
その視線の先には、エステサロンの看板があった。
イリーナ:「アロマボディトリートメント……リフレクソロジー……」
マリア:「師匠!?」
イリーナ:「完全予約制……23時まで営業……」
マリア:「いやいやいや!昼間、温泉施設でマッサージ受けたでしょ!?」
イリーナ:「あれはあくまでも、温泉施設に付帯したマッサージサービスコーナーでしょ?やはり、こういう専門店で受けると違うのよねぇ……」
イリーナはスーッとフロントへ向かった。
マリア:「師匠!落ち着いて!浮かんでますよ!」
まるで宙を飛ぶように……って、本当に数cm浮いて移動するイリーナだった。
マリア:(何であんな移動方法、簡単にできるのに、マッサージ受けたがるかねぇ!?)
マリア、普通に走って追い掛ける。
イリーナの体は耐用年数が迫ってきているからというのが表向きの理由だが、体に負担を掛けさせない魔法の使い方もあるというのに、それをしないのが不思議なのだ。
フロントマン:「……それでは稲生様方、3名様で1泊のご利用でございますね?」
勇太:「はい」
フロントマン:「お部屋を2つ御用意させて頂きました。こちらがそのカードキーになりま……」
イリーナ:「ちょいと失礼。あそこのエステサロンの予約をしたいんだけど、いいかしら?」
勇太:「先生?!どうしました、急に!?」
フロントマン:「スパの御利用でございますか?」
イリーナ:「そう!夜、寝る前に受けさせてもらえるかしら?」
フロントマン:「かしこまりました。コースと御時間は、如何なさいますか?」
イリーナ:「そうねぇ……」
マリア:「始まった……」
勇太:「ああ、マリア。これ、カードキー。先生と御一緒の」
マリア:「分かった」
勇太:「部屋にもマッサージを頼めるらしいけど……」
マリア:「師匠は、ああいうサロンがいいらしい」
勇太:「そうなんだ」
夕食後の時間に予約することができた。
こうしてようやく、部屋に向かうことができた。
イリーナ:「荷物を置いたら、ディナーにしましょう」
勇太:「分かりました」
ランク的にはミドルクラスに匹敵しそうな感じなのに、これでもエコノミー扱いとは……。
マリア:「作者の金銭感覚が貧困層なんだと思う」
勇太:「え、何がですか?」
マリア:「何でもない」
稲生勇太達を乗せた東武特急は、湘南新宿ラインという貨物線を走行していた。
ところが、埼京線に乗り入れる池袋付近で、急に徐行し出した。
どうやら、埼京線でもダイヤ乱れがある為、なかなか線路が空かないらしい。
特急などの優等列車は優先ダイヤで運転されるはずだが、そもそも線路が空かないとどうしようも無い。
ようやく池袋駅に到着した時、勇太はダイヤ通りに走行している山手線に乗り換えた方がいいのではと思ったほどだという。
何とか池袋駅を発車した特急だったが、隣を走る山手線よりもノロノロ走行で南下する。
で、時折止まる。
そんなことを繰り返し、ようやく列車は新宿駅に接近した。
〔「長らくのご乗車、お疲れ様でした。まもなく終点、新宿、新宿です。6番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際、お忘れ物、落とし物の無いよう、お支度ください。本日、昨夜からの積雪並びに強風の影響により、JR各線遅れが出ております。この電車も前の電車が詰まっている関係系で、およそ11分の遅れで新宿駅に到着致します。お急ぎのところ、電車遅れまして、大変ご迷惑をお掛け致しました。……」〕
恐らく、場内信号機は黄色2つの『警戒』だったのかもしれない。
鉄道信号の意味は道路信号とは違う。
『警戒』信号は、次の信号が赤の『停止』であることを意味し、車掌の言ったように、すぐ前に別の列車がいるという状態である。
この場合、列車の速度を時速25キロ以下に落とさなくてはならない。
速度制限には、これとは別に標識もあるのだが、例え標識の方が速い速度を表示していたとしても、遅い方に合わせなくてはならない。
列車は長いホームにゆっくりと入り、その半ばほどに停車した。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日、列車遅れまして申し訳ございませんでした。6番線に到着の列車は折り返し、17時32分発の特急“スペーシアきぬがわ”7号、鬼怒川温泉行きとなります。……」〕
勇太達が降りた時、既に折り返しの発車時刻が迫っていた。
これから車内清掃等が行われるだろうが、明らかに時間が足りない。
東武鉄道に帰る頃までには、定時ダイヤに戻れるだろうか。
マリア:「ちょっと待って」
マリアは列車から降りると、フロント部分に回り込んだ。
マリア:「勇太、これの写真撮って。ルーシーに送ってあげるヤツ」
勇太:「おっ、それはいいね」
エレーナとはケンカし合う仲であるが、ルーシーとは普通に仲良しのマリア。
同じイギリス人だからだろうか。
勇太:「よし。これを後でメールで送ってあげよう」
マリア:「どうして勇太が、ルーシーのメアド知ってるの?」
勇太:「えっ?いや、ははは……。前に教えてもらったことがあって……」
マリア:「ルーシーには私が送るから、今の写真転送して」
勇太:「あ、はい」
イリーナ:「2人とも、寒いから早いとこ行くよ」
勇太:「は、はい!」
マリア:「分かりましたよ」
[同日17:40.天候:晴 東京都渋谷区代々木 ホテルサンルートプラザ新宿]
住所は代々木になっているが、アクセスは新宿駅からの方が便利だ。
まあ、代々木駅からもアクセスできるのだろうが。
確かに新宿駅の南口から、徒歩数分で辿り着くことができた。
マリア:「Oh!凄いホテル!」
佇まいはエアポートリムジンバスも発着する高級ホテルな感じだが、これでも国際的には下から2番目のエコノミークラスに相当する。
勇太:「駅から近いホテルです」
イリーナ:「うん。アクセスは最高だね」
イリーナは目を細めたまま頷いた。
紫色の布マスクをしているが、その下の口元も、一応口角は上がっているように見えた。
勇太:「それじゃ僕、チェック・インしてきますので……」
イリーナ:「はい、これ。アタシのカード」
勇太:「ありがとうございます」
勇太は両手でプラチナカードを受け取ると、その足でフロントへと向かった。
マリア:「師匠が使われるには、少々カジュアルですかね?」
イリーナ:「駅から徒歩圏内というのは大きなポイントだけどね。……む!?」
その時、イリーナが細めていた目をカッと見開いた。
その視線の先には、エステサロンの看板があった。
イリーナ:「アロマボディトリートメント……リフレクソロジー……」
マリア:「師匠!?」
イリーナ:「完全予約制……23時まで営業……」
マリア:「いやいやいや!昼間、温泉施設でマッサージ受けたでしょ!?」
イリーナ:「あれはあくまでも、温泉施設に付帯したマッサージサービスコーナーでしょ?やはり、こういう専門店で受けると違うのよねぇ……」
イリーナはスーッとフロントへ向かった。
マリア:「師匠!落ち着いて!浮かんでますよ!」
まるで宙を飛ぶように……って、本当に数cm浮いて移動するイリーナだった。
マリア:(何であんな移動方法、簡単にできるのに、マッサージ受けたがるかねぇ!?)
マリア、普通に走って追い掛ける。
イリーナの体は耐用年数が迫ってきているからというのが表向きの理由だが、体に負担を掛けさせない魔法の使い方もあるというのに、それをしないのが不思議なのだ。
フロントマン:「……それでは稲生様方、3名様で1泊のご利用でございますね?」
勇太:「はい」
フロントマン:「お部屋を2つ御用意させて頂きました。こちらがそのカードキーになりま……」
イリーナ:「ちょいと失礼。あそこのエステサロンの予約をしたいんだけど、いいかしら?」
勇太:「先生?!どうしました、急に!?」
フロントマン:「スパの御利用でございますか?」
イリーナ:「そう!夜、寝る前に受けさせてもらえるかしら?」
フロントマン:「かしこまりました。コースと御時間は、如何なさいますか?」
イリーナ:「そうねぇ……」
マリア:「始まった……」
勇太:「ああ、マリア。これ、カードキー。先生と御一緒の」
マリア:「分かった」
勇太:「部屋にもマッサージを頼めるらしいけど……」
マリア:「師匠は、ああいうサロンがいいらしい」
勇太:「そうなんだ」
夕食後の時間に予約することができた。
こうしてようやく、部屋に向かうことができた。
イリーナ:「荷物を置いたら、ディナーにしましょう」
勇太:「分かりました」
ランク的にはミドルクラスに匹敵しそうな感じなのに、これでもエコノミー扱いとは……。
マリア:「作者の金銭感覚が貧困層なんだと思う」
勇太:「え、何がですか?」
マリア:「何でもない」