報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの変化」 2

2022-01-18 20:22:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月5日15:40.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 首都高を新橋出入口で降り、そこから近くのコインパーキングに車を止める。
 平日なので空いているかどうか心配だったが、何とか空いている駐車場があった。
 そこに車を止めて、デイライトの事務所が入っているテナントビルに向かう。
 何とか車中、リサを宥めるのが大変だった。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です。退院、おめでとうございます」

 事務所に到着すると会議室に通され、そこで待っていると、善場主任がやってきた。

 愛原:「あ、善場主任。どうも、この度はお騒がせを……」
 善場:「愛原所長の責任ではありませんので、どうかお気になさらないでください。逆に言えば、おかげさまで白井理事長を拘束することができましたので」
 愛原:「白井理事長って、白井伝三郎の姪の……?」
 善場:「そうです」
 愛原:「拘束したんですか?何で?」
 善場:「BSAAの待機命令に背いた廉です。愛原所長が襲われていた時、BSAAが駆け付けました」
 愛原:「あ、はい。それは以前に聞いております」
 善場:「その際、BSAAはホテル敷地内にいる人達全員に待機命令を出しました。これは法的拘束力のあるものです」
 高橋:「コロナの自粛要請の1つだと勘違いしているオッサン達が文句言ってて、ついでに連行されてましたよ?w」

 高橋は莫迦にするような笑みを浮かべて言った。

 愛原:「ということは、白井理事長はBSAAの命令を無視して、敷地外に出ようとしたと?」
 善場:「はい。それも、ヘリで脱出しようとしていたので、ヘリごと撃墜されてましたが」
 愛原:「凄ェな、BSAA!死んでないですよね?」
 善場:「数メートル離陸した時点で撃墜されたので、そんなに大きなケガはしなかったようですね」
 愛原:「BSAA相手に、随分と度胸あるなぁ!」
 善場:「現在、栃木県警にて取調中ですが、『弁護士が来てから話をします』の1点張りだそうです」

 外国だとBSAAそれぞれの本部や支部、場所によっては地区本部がそのまま捜査権を持つのであるが、日本ではそこまで批准していない為(BSAAの国内活動そのものについては、米国の圧力もあり批准している)、バイオテロ絡みでBSAAに拘束されても、その後はそこを管轄している警察に引き渡されることになっている。
 あそこは栃木県那須塩原市である為、栃木県警になる。

 善場:「『BSAAの待機命令が及ぶ範囲はホテルの敷地内であって、隣接する天長会宗教施設ではない』とか、『私はその宗教施設で宗教儀式をしていただけだ』とかも言っているようです」
 愛原:「ムリがありますな」

 そもそもがホテル天長園自体、宗教法人天長会が運営する施設だ。
 一般客も宿泊できるが、表向きは天長会の合宿所ということになっている。
 なので、そこも宗教施設として税金が優遇されているはずである。
 ということは、BSAAの待機命令は『天長会の施設』ということなり、当然ながらそうなると、『ホテルだけではなく、隣接する宗教施設も』ということになるわけである。
 隣接と表現したが、あくまでも建物が隣接というだけであり、土地は同じである。
 そういうわけで、白井理事長の言い訳は苦しいのである。
 理事長が雇う弁護士は、どういう言い訳をするか見ものだがな。

 善場:「まあ、そういうわけで、白井理事長の逮捕は別件ではありますが、日本アンブレラの悪行について、五十嵐元社長らよりも最も深く知る白井伝三郎の身内が逮捕できたのは、大きな前進です」

 白井伝三郎には、他に医療関係に従事している兄弟がいるものの、日本アンブレラとは全く関係が無いことが分かっている。
 強いて言えば、医師や歯科医師として、日本アンブレラの薬を治療に使用または処方していたということくらいだが、それらは全てちゃんと厚生労働省から認可されている薬ばかりなので、全く問題は無い。

 善場:「この報酬も、後で支払わせて頂きます」
 愛原:「私は何もしていないのに、いいんですかね」
 善場:「所長が以前から内偵調査をして頂いていたのと同じですから」
 愛原:「内偵調査ね……」
 善場:「それではそろそろ、当時の状況をお聞きしたいと思います。1人ずつ、隣の応接室で伺いますので、まずは高橋助手からお願いします」
 高橋:「俺から?」
 善場:「恐らくあなたが短く話が終わりそうですので」
 高橋:「そういうもんか?」
 愛原:「高橋、行ってこい」
 高橋:「分かりました」

 高橋は大浴場で私が先に上がってから、体に痛みを感じた。
 それで慌てて上がろうとしたのだが、突然貧血のような症状が現れて、倒れてしまい、浴槽へダイブ。
 それに気づいた他の宿泊客が救助してくれたようだ。
 長湯などによる『のぼせ』も貧血の症状の1つなので、それで他の宿泊客は高橋がのぼせたと思ったのだろう。
 あとは、救護室に運ばれるまでの記憶が無い。
 一時期意識不明になり、気が付いたら救護室のベッドだったからだ。

 善場:「お次は、愛原所長です」
 愛原:「あ、はい」

 因みに待っている間、私とリサが2人っきりになってしまったが、今度はリサは一転して私に無関心であり、私が呼び出されるまで、ずっとスマホをいじっていた。

 愛原:「高橋と別れて、脱衣場に行ったんですよ。で、先に浴衣を着ようとロッカーを開けたら、メモが入ってまして……」
 善場:「どんなメモですか?」
 愛原:「『湯上り処で待つ 白井』というメモです」
 善場:「1人で行かれたんですか?」
 愛原:「湯上り処なら、脱衣所から出てすぐの所にありますし、他の宿泊客もいるだろうから大丈夫だと思ったんです」
 善場:「そこに白井はいましたか?」
 愛原:「いませんでした。いたのは、あの女将さんです。『白井理事長がお待ちです。ご案内致します』と言われ、そのまま付いていきました」
 善場:「高橋助手やリサと一緒に行こうとはしなかったのですか?」
 愛原:「それが、女将さんが、『白井理事長は愛原様と2人でお話ししたいそうです。高橋様方には、私からお話ししておきます』ということだったもので……」

 そして私は、従業員用のバックヤードにあるエレベーターに乗ったのだが、その直後、甘い香りが漂って来たと思うと、そこで意識が無くなってしまった。
 そして、夢の中で女将さんに犯されていたと思うと、もうあとは【お察しください】。

 善場:「……分かりました。ただ単に、『捕食』されただけではなく、『所有の証』も付けられたのですね?」
 愛原:「『所有の証』!?」
 善場:「日本版リサ・トレヴァー……つまり、『最も危険な12人の巫女達』に共通するのですが、最も気に入った人間には、マーキングする習性があるようです」
 愛原:「そ、そういえば、『1番』に捕まった時、オシッコ掛けられた記憶が……」

 JCの少女にベッドに拘束され、大股で立ちションされたのだ。
 この時は、如何に『1番』の性癖が歪んでいるかということだったが、どうやら『最も危険な巫女』には、そもそもそういう習性が植え付けられているらしい。
 それが女将さんは歯形や引っ掻き傷だったわけである。
 リサもそうしようとしたことから、そこは姉妹だということだろうか。

 愛原:「これは……大丈夫なんでしょうか?」
 善場:「所長にはTウィルスの抗体がありますし、リサからGウィルスの寄生虫を植え付けられたことがありましたでしょう?そのおかげで、今はGウィルスの抗体もありますから、しばらくすればその傷は治るはずです」
 愛原:「それは良かった……」

 私はホッとした。
 因みにその寄生虫は、グリーンハーブを煎じた虫下しを使用して排除している。
 回復薬として名高いグリーンハーブであるが、実は虫下しの効能もあることが分かっている。
 そしてそれは、リサのウィルスに感染した寄生虫であっても効果がある。

 善場:「ありがとうございました。それでは最後にリサですね」

 最後にリサが呼ばれた。
 意外なことに、リサが一番時間が掛かった。
 その為、デイライトの事務所を出る頃には、もう外は暗くなっていたのである。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの変化」

2022-01-18 14:23:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月5日12:30.天候:晴 埼玉県蓮田市 東北自動車道・蓮田サービスエリア]

 私を乗せた車は、東北自動車道上り線最後のサービスエリア、蓮田サービスエリアに入った。

 愛原:「ここで昼飯にしよう」
 高橋:「はい」

 一番東京に近いサービスエリアだからか、その規模はとても大きく、平日であっても利用者で賑わっている。
 特に、大型車スペースはバスよりもトラックの方が多かった。
 こちらは普通車用のスペースに車を止める。

 愛原:「おい、リサ。降りるぞ」

 リサは私に寄り掛かるようにして座っていた。
 それだけならまだしも、抱き付くような形になってくる。

 リサ:「うん……分かった」
 愛原:「眠いのか?」

 気だるそうな反応をした私は、そう思った。

 リサ:「うん……先生が心配で、よく眠れなかったから……」
 愛原:「そうか。乗って寝てるか?」
 リサ:「ううん……降りる」
 愛原:「そうか」

 私は車を降りた。

 愛原:「何か食べたい物はあるか?」
 リサ:「……肉」
 愛原:「だよな。……おっ」

 フードコートに行こうと思った私だったが、レストランの方にいい店を見つけた。
 仙台牛タンの店である。

 愛原:「まさか、埼玉で仙台牛タンが食えるとはな。ここにするか?牛タンも肉だぞ」
 リサ:「うん……そうだね」
 高橋:「でも先生、昼時だからか、ちょい混んでますよ?」
 愛原:「並んでておくから高橋、タバコ吸って来いよ」
 高橋:「いいんスか?あざっす!」
 愛原:「リサはトイレとか大丈夫か?」
 リサ:「私は大丈夫。……先生が行くなら、わたしも行く」
 愛原:「そうか。まあ、男子トイレと女子トイレで別れるからな?」
 リサ:「…………」

 先に釘を打ったら、リサがむくれてしまった。
 その後、喫煙所から高橋が戻って来たので、バトンタッチしてトイレに行くことにした。
 もちろん、リサは女子トイレの方に行かせたが。

[同日13:00.天候:晴 同サービスエリア内 牛タン炭焼利久]

 ようやく私達の番が来て、テーブル席に着いた。

 愛原:「リサ、遠慮しないで好きな物頼んでいいぞ。何しろリサは、今回の功労者なんだからな」
 リサ:「うん、分かった」

 テンション低めのリサだったが、私の言葉に、若干それを回復させたようだ。

 リサ:「牛タン極定食5枚10切」
 愛原:「一番ボリュームのあるヤツをチョイスしたな。分かった」
 高橋:「先生、値段もボリューミーですぜ?」
 愛原:「リサは今回の功労者なんだから、これくらいいいよ」

 因みに私と高橋は、牛タン定食4枚8切を注文した。

 高橋:「さすが先生、太っ腹!」
 愛原:「信賞必罰なだけだよ」
 リサ:「信賞必罰かぁ……」
 愛原:「まあ、これくらいで申し訳ないな」
 リサ:「ううん、いい。あとは頭撫でてくれれば……」
 愛原:「おっ、そうか。助けてくれて、ありがとうな」

 私はリサの頭を撫でた。

 リサ:「むふー……」

 あとは運ばれて来た牛タンに舌鼓を打つ。

 愛原:「仙台では別の店で食べたんだっけか?やっぱり、本場の牛タンは美味いなぁ」
 高橋:「そうっスね」

 もっとも、今ではスーパーでも売っているが、あまり買って食べる機会は無い。

[同日14:30.天候:晴 埼玉県川口市 首都高川口線 川口パーキングエリア]

 昼食を食べた後、すぐに出発した。
 もちろん、高橋の一服の後である。
 運転してくれるのは高橋なのだから、それくらい、いいだろう。
 ところが、どうも車中においてリサの様子がおかしかった。
 再びリサは私に寄り掛かる……どころか、抱き付くような形の姿勢を取って来たのだが、さっきとは違うことがあった。
 上目遣いで私を誘う仕草をしてくるどころか、第1形態に戻って、服の上からではあるが、私に噛み付こうとしたり、長く鋭く伸ばした爪を立てて、私を引っ掻こうとしてくるのだ。
 しかも、その場所はリサの人間時代の妹で、ホテルの女将だったBOWに噛み付かれたり、引っ掻かれた場所と同じ所だった。

 愛原:「おい、リサ」

 私はリサを離そうとしたが、リサは抵抗して離れようとしない。
 鬼の弱点とも言える角を掴んで、離そうとしてもだ。
 リサは赤い瞳で私を睨み付けた。
 そして、ボソッと言った。

 リサ:「上書きしてやる……!」

 私は襲われただけなのだが、どうやら女将に【あれ】や【これ】、おまけに【ぴー】や【ホワホワ】されたことが気に入らないらしい。

 愛原:「高橋。ちょっと、次のパーキングに寄ってくれないか?」
 高橋:「あ、ハイ」

 高橋は川口料金所の一番左側のブースを通ると、首都高の川口パーキングエリアに入った。
 料金所の左側のブースを通る所は、首都高3号線の用賀パーキングと似ている。
 しかし、川口パーキングは用賀よりも広い。
 それまで通って来た東北道のパーキングエリア並みである。
 これは、首都高の中では、まだ用地が確保しやすい郊外部に位置しているからだろう。
 実際ここも大型駐車場は、バスよりもトラックの方が数が多かった。

 愛原:「一体、どうしたんだ、リサ?」

 車が駐車場に止まってから、私はリサに聞いた。

 リサ:「……おトイレ行きたい」
 愛原:「……分かった。行ってこい」
 リサ:「先生も来るの」

 リサはグッと私の腕を掴んだ。

 愛原:「分かったから、その代わり、人間の姿になれよ?その姿のままじゃ、外に出れないぞ」
 リサ:「……分かってるよ」

 リサは第0形態の姿に変化した。

 愛原:「だけど、一緒には入れないからな?」
 リサ:「…………」

 そう言うと、リサはまたブスッとした顔になった。
 どうも、リサの様子がおかしいな。
 私はリサが女子トイレに入ったのを確認してから、善場主任に連絡した。

 愛原:「……あ、もしもし。愛原です。お疲れさまです。今、首都高の川口パーキングにいます。こちらでトイレ休憩したら、事務所に直行しますので。……で、ちょっと気になることがありまして……。ええ、リサのことなんですけどね……」

 私は車中で起きたリサの振る舞いについて話した。

 善場:「なるほど……。嫉妬しているのですね」
 愛原:「嫉妬ですか」
 善場:「ええ。生き別れたとはいえ妹に、心服追従している愛原所長を横取りされた悔しさ、それに抵抗することもなく、成すがままにされた所長への怒り」
 愛原:「いやいや、待ってくださいよ!私は訳も分からぬまま、成す術も無く襲われたんですよ?」
 善場:「それは分かっているでしょう。分かっているからこそ、ギリギリの所で我慢しているんですよ。でも、やっぱり許せないという所があるのでしょうね」
 愛原:「どうしたらいいでしょうか?」
 善場:「とにかく、リサの機嫌を損ねないように気をつけてください。今はまだ理性が働いて、暴走を抑えられているようですが、ふとした拍子にタカが外れる恐れがありますので」
 愛原:「わ、分かりました」
 善場:「もしどうしても無理なようなら、BSAAを派遣しますので、アプリの緊急通報ボタンを押してください」
 愛原:「その必要が無いことを祈りますよ」
 善場:「ええ。そうですね」

 そうだったのか……。
 リサからすれば、私も浮気者なのか……。
 参ったなぁ……。
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