[1月6日12:00.天候:雪 埼玉県蕨市 JR蕨駅]
勇太はキップを買いに、最寄りの駅までやってきた。
蕨駅には“みどりの窓口”があるのだが、そこは払い戻しをする乗客でごった返していた。
但し、券売機ではそれができないのか、券売機の方はそれほどでもない(但し、変更はできるので、変更をする乗客達が列を成していた)。
雪の影響が首都圏ではまだ大きく出ていないのだが、新幹線や特急列車などで運休が発生し始めている。
それの払い戻しや変更を求める客達だ。
勇太:「マズいタイミングに当たっちゃったねぇ……」
マリア:「勇太は他人事だな」
勇太:「先生の占いじゃ、僕達が帰る時には何の影響も無いって話じゃない?」
マリア:「まあ、そうなんだけどな。もう帰りの列車のキップは確保しているだろう?他に何が必要なの?」
勇太:「明日の列車」
マリア:「Huh?」
ようやく自分の番が回って来て、勇太は慣れた手付きで指定席券売機を操作した。
そして、イリーナから借りたプラチナカードで支払い手続きを完了する。
マリア:「グリーン車じゃない?」
勇太:「そうだね。普通なら先生だけはそこの席なのに、『個室に1人はイヤ』と駄々こねられて……」
マリア:「個室なの?」
勇太:「そうなんだ」
マリア:「Hum...確か、どこかの鉄道で旅行していた時に、個室に乗っていたら、魔女狩りに見つかって大変な目に遭ったって聞いたことがあるような気がする……」
勇太:「そうなの!?貨物列車に便乗してたんじゃ?」
マリア:「多分、旅客列車で移動できるくらいには稼げるようになった時期じゃない?」
勇太:「個室席に乗れるようになって?」
マリア:「いやいや。日本の鉄道と違って、ヨーロッパの長距離列車は個室が基本だったから」
勇太:「そうか!オリエンタル急行!」
マリア:「シベリア鉄道もそうでしょ。エコノミークラスでも、個室ってのは当たり前だった時代の話だよ」
勇太:「なるほどなるほど」
明治時代の黎明期、日本の鉄道客車は個室であった。
それは輸入先のイギリスでは、それが当たり前だったからである。
イギリスに限ったことではなく、当時のヨーロッパの鉄道においてはだ。
アメリカでは、今でこそアムトラックの長距離列車のファーストクラス席は個室だが、それ以前は開放席が一般的だった。
イギリスでは馬車を参考に客車を設計し、アメリカでは蒸気船の客室を参考に客車を設計したからである。
勇太:「日本もコストパフォーマンス最優先になったせいで、新幹線ですら個室席が廃止されたからなぁ……」
山陽新幹線の“ひかりレールスター”にあったような気がするが、その存在を忘れるほどに、勇太にとっては影が薄い。
マリア:「とにかく、師匠にとっては魔女狩りに不意打ちされたトラウマがあるみたいだから、あんまり個室には乗りたくないみたいだよ」
勇太:「この前、“ダンテ先生を囲む会”で、鬼怒川に行った帰りでは、個室席に喜んで乗ってたような……?」
マリア:「あれは大師匠様が御一緒だったからだろう」
勇太:「それもそうか」
“みどりの窓口”をあとにし、2人は駅の外に出る。
雪が降って来たが、2人は傘を持たず、魔道士のローブのフードを被った。
勇太:「昼食はどこにしようか?」
マリア:「勇太の好きなものでいいよ」
勇太:「そうか。じゃあ、今度は寿司にしよう。この近くに、回転寿司がある。もっとも、コロナ禍で、今は殆ど注文形式になってるけどね」
マリア:「じゃあ、そうしよう」
かつては人間時代のトラウマのせいで、生魚が一切食べれなかったマリア。
今ではそれを克服し、普通に食べれるようになっている。
[同日12:30.天候:雪 同市内 すし松 蕨店]
店内に入り、カウンター席に横並びに座る。
勇太:「うん。まあ、流れてるのもあるけど、やっぱり注文形式が主になってしまったか」
マリア:「ベルトコンベアに寿司ねぇ……。うちの屋敷でも導入して、師匠へのお茶はベルトコンベアで……」
勇太:「先生の元に届く頃には冷めてるから、やめた方がいいんじゃないかなぁ……」
マリア:「それは残念。……この、ランチがいい」
勇太:「よし。じゃあ、僕もそうしよう。すいませーん」
勇太とマリアは、ランチを注文した。
味噌汁が付いている。
勇太:「お茶はこうして……」
マリア:「テーブルからお湯が出るようになっている……。師匠の部屋に付けておけば、お茶くみが凄いラクに……」
勇太:「前に、ヨドバシアキバで紅茶サーバー購入しなかったっけ?」
マリア:「そうだったっけな」
勇太:「それより凄い雪だ。これは積もるよ」
マリア:「勇太のダディ、大丈夫かな?帰ったら私が占ってあげよう」
勇太:「ありがとう。でも、大丈夫だよ。今夜は帰らないってさ」
マリア:「Huh?」
勇太:「多分この雪で首都高とか通行止めになるって先生に予知されたものだから、早々に都内にホテルを確保して、今夜はそこに泊まるってさ」
マリア:「それで勇太のダディ、出張みたいな装備で出勤して行ったの?!」
勇太:「そう。出張じゃなくて、雪で泊まる準備ね」
マリア:「それで、明日帰って来ると」
勇太:「そう」
マリア:「高級ホテルに泊まるの?」
勇太:「いや、八重洲のスーパーホテルだって」
マリア:「スーパーホテルって確か、富士宮で泊まったホテルか?」
勇太:「そう。それと同じチェーンだよ」
マリア:「温泉はあるし、朝食も食べ放題と……」
勇太:「都心過ぎて、富士宮と違って天然温泉ではないらしいけどね」
マリア:「そうなのか」
勇太:「それでも、今から予約したら、もうどこのホテルも満室かもしれないよ?」
マリア:「エレーナのホテルも、こういう時はウハウハか」
勇太:「だろうね。……あー、でも地下鉄沿線でしょ?地下鉄なら、雪でも関係無いんじゃないかなぁ?」
都営大江戸線は完全に地下しか走行しないので、それでいいのだが、都営新宿線にあっては、大島駅付近は地上を走り、また、京王線と直通運転を行っているので、運休までは無いものの、ダイヤ乱れくらいはあるだろう。
マリア:「私達も、ここでランチをしたら、早く帰るのが良さそうだ。そして後は、ステイホーム」
勇太:「その方がいいね」
そして、2人はランチメニューの寿司に舌鼓を打ったのである。
尚、イリーナはこの時、稲生家のゲストルームにて、ゴロゴロしていたそうな。
勇太はキップを買いに、最寄りの駅までやってきた。
蕨駅には“みどりの窓口”があるのだが、そこは払い戻しをする乗客でごった返していた。
但し、券売機ではそれができないのか、券売機の方はそれほどでもない(但し、変更はできるので、変更をする乗客達が列を成していた)。
雪の影響が首都圏ではまだ大きく出ていないのだが、新幹線や特急列車などで運休が発生し始めている。
それの払い戻しや変更を求める客達だ。
勇太:「マズいタイミングに当たっちゃったねぇ……」
マリア:「勇太は他人事だな」
勇太:「先生の占いじゃ、僕達が帰る時には何の影響も無いって話じゃない?」
マリア:「まあ、そうなんだけどな。もう帰りの列車のキップは確保しているだろう?他に何が必要なの?」
勇太:「明日の列車」
マリア:「Huh?」
ようやく自分の番が回って来て、勇太は慣れた手付きで指定席券売機を操作した。
そして、イリーナから借りたプラチナカードで支払い手続きを完了する。
マリア:「グリーン車じゃない?」
勇太:「そうだね。普通なら先生だけはそこの席なのに、『個室に1人はイヤ』と駄々こねられて……」
マリア:「個室なの?」
勇太:「そうなんだ」
マリア:「Hum...確か、どこかの鉄道で旅行していた時に、個室に乗っていたら、魔女狩りに見つかって大変な目に遭ったって聞いたことがあるような気がする……」
勇太:「そうなの!?貨物列車に便乗してたんじゃ?」
マリア:「多分、旅客列車で移動できるくらいには稼げるようになった時期じゃない?」
勇太:「個室席に乗れるようになって?」
マリア:「いやいや。日本の鉄道と違って、ヨーロッパの長距離列車は個室が基本だったから」
勇太:「そうか!オリエンタル急行!」
マリア:「シベリア鉄道もそうでしょ。エコノミークラスでも、個室ってのは当たり前だった時代の話だよ」
勇太:「なるほどなるほど」
明治時代の黎明期、日本の鉄道客車は個室であった。
それは輸入先のイギリスでは、それが当たり前だったからである。
イギリスに限ったことではなく、当時のヨーロッパの鉄道においてはだ。
アメリカでは、今でこそアムトラックの長距離列車のファーストクラス席は個室だが、それ以前は開放席が一般的だった。
イギリスでは馬車を参考に客車を設計し、アメリカでは蒸気船の客室を参考に客車を設計したからである。
勇太:「日本もコストパフォーマンス最優先になったせいで、新幹線ですら個室席が廃止されたからなぁ……」
山陽新幹線の“ひかりレールスター”にあったような気がするが、その存在を忘れるほどに、勇太にとっては影が薄い。
マリア:「とにかく、師匠にとっては魔女狩りに不意打ちされたトラウマがあるみたいだから、あんまり個室には乗りたくないみたいだよ」
勇太:「この前、“ダンテ先生を囲む会”で、鬼怒川に行った帰りでは、個室席に喜んで乗ってたような……?」
マリア:「あれは大師匠様が御一緒だったからだろう」
勇太:「それもそうか」
“みどりの窓口”をあとにし、2人は駅の外に出る。
雪が降って来たが、2人は傘を持たず、魔道士のローブのフードを被った。
勇太:「昼食はどこにしようか?」
マリア:「勇太の好きなものでいいよ」
勇太:「そうか。じゃあ、今度は寿司にしよう。この近くに、回転寿司がある。もっとも、コロナ禍で、今は殆ど注文形式になってるけどね」
マリア:「じゃあ、そうしよう」
かつては人間時代のトラウマのせいで、生魚が一切食べれなかったマリア。
今ではそれを克服し、普通に食べれるようになっている。
[同日12:30.天候:雪 同市内 すし松 蕨店]
店内に入り、カウンター席に横並びに座る。
勇太:「うん。まあ、流れてるのもあるけど、やっぱり注文形式が主になってしまったか」
マリア:「ベルトコンベアに寿司ねぇ……。うちの屋敷でも導入して、師匠へのお茶はベルトコンベアで……」
勇太:「先生の元に届く頃には冷めてるから、やめた方がいいんじゃないかなぁ……」
マリア:「それは残念。……この、ランチがいい」
勇太:「よし。じゃあ、僕もそうしよう。すいませーん」
勇太とマリアは、ランチを注文した。
味噌汁が付いている。
勇太:「お茶はこうして……」
マリア:「テーブルからお湯が出るようになっている……。師匠の部屋に付けておけば、お茶くみが凄いラクに……」
勇太:「前に、ヨドバシアキバで紅茶サーバー購入しなかったっけ?」
マリア:「そうだったっけな」
勇太:「それより凄い雪だ。これは積もるよ」
マリア:「勇太のダディ、大丈夫かな?帰ったら私が占ってあげよう」
勇太:「ありがとう。でも、大丈夫だよ。今夜は帰らないってさ」
マリア:「Huh?」
勇太:「多分この雪で首都高とか通行止めになるって先生に予知されたものだから、早々に都内にホテルを確保して、今夜はそこに泊まるってさ」
マリア:「それで勇太のダディ、出張みたいな装備で出勤して行ったの?!」
勇太:「そう。出張じゃなくて、雪で泊まる準備ね」
マリア:「それで、明日帰って来ると」
勇太:「そう」
マリア:「高級ホテルに泊まるの?」
勇太:「いや、八重洲のスーパーホテルだって」
マリア:「スーパーホテルって確か、富士宮で泊まったホテルか?」
勇太:「そう。それと同じチェーンだよ」
マリア:「温泉はあるし、朝食も食べ放題と……」
勇太:「都心過ぎて、富士宮と違って天然温泉ではないらしいけどね」
マリア:「そうなのか」
勇太:「それでも、今から予約したら、もうどこのホテルも満室かもしれないよ?」
マリア:「エレーナのホテルも、こういう時はウハウハか」
勇太:「だろうね。……あー、でも地下鉄沿線でしょ?地下鉄なら、雪でも関係無いんじゃないかなぁ?」
都営大江戸線は完全に地下しか走行しないので、それでいいのだが、都営新宿線にあっては、大島駅付近は地上を走り、また、京王線と直通運転を行っているので、運休までは無いものの、ダイヤ乱れくらいはあるだろう。
マリア:「私達も、ここでランチをしたら、早く帰るのが良さそうだ。そして後は、ステイホーム」
勇太:「その方がいいね」
そして、2人はランチメニューの寿司に舌鼓を打ったのである。
尚、イリーナはこの時、稲生家のゲストルームにて、ゴロゴロしていたそうな。