報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「稲生家の家族旅行 ~Welcome to the family,daughter.~」

2022-05-19 20:20:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月3日08:00.天候:晴 埼玉県川口市 稲生家]

 勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」

 少し遅めの朝勤行を終えた勇太。
 数珠と経本をしまう。
 どうでも良い事だが、御本尊下付の条件が、『毎朝晩必ず御給仕のできる事』とあるが、独り暮らしで24時間勤務のある作者はそれだけで下付対象外となるが?

 勇太:「さーてと、朝御飯食べるかぁ……」

 勇太は自分の部屋を出た。
 試しにマリアが寝泊まりしている部屋を覗いてみたが、開け放たれたドアの向こうにマリアはいなかった。

〔下に参ります〕
〔ドアが閉まります〕

 勇太はそれを確認すると、1階で止まっているエレベーターを呼び寄せ、それに乗って1階に向かった。

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪

〔1階です〕

 エレベーターを降りて、ダイニングに向かった。

 佳子:「どうぞ、おかまいなく。私も料理は好きですから」

 ダイニングに行くと、人間形態に変化したミク人形とハク人形が食事の用意をしようとしていた。

 マリア:「申し訳ありません。出過ぎたマネでした」

 マリアはメイド人形達に、人形形態に戻るよう命じた。
 見る見るうちに、元のフランス人形に戻って行く人形達。

 佳子:「マリアちゃんはお客さんなんだから、ゆっくりしてて」
 マリア:「ありがとうございます」
 宗一郎:「しかし、凄い魔法だねぇ。これなら、空も飛べそうだけどね」
 マリア:「ホウキには乗れませんが、瞬間移動魔法(テレポーテーション。魔法名:ル・ゥラ)なら少し使えます」
 宗一郎:「それは凄い。どこでもドア要らずだね」
 勇太:「確かに……」
 佳子:「それより旅行、今日出発だけど、ちゃんと準備できた?10時半くらいの電車に乗るから、忘れないでね」
 勇太:「ああ、分かった」

[同日10:32.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅→京浜東北線820B電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の電車は、10時32分発、各駅停車、大宮行きです〕
〔まもなく2番線に、各駅停車、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 自宅を出て蕨駅に移動する。
 ゴールデンウィーク期間中ということもあってか、客層は勇太達のような家族連れが多かった。

 宗一郎:「通勤電車に乗るのは久しぶりだ」
 勇太:「最近は会社の車ばっかりだもんね」
 宗一郎:「まあな」

 電車がやってくる。
 混み具合は、南浦和止まりよりは多いといった感じだ。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます〕

 軽快でアップテンポな発車メロディが流れる。
 4人は空いている座席に、適当に座った。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 車両のドアとホームドアが閉まる。
 蕨駅のホームドアはドアというよりは、横開きの柵といった感じ。
 酔っ払いや視覚障碍者が誤って転落するのは防止できるだろうが、自殺志願者が飛び込む際は簡単によじ登れそうだ。
 電車は駆け込み乗車が無かったのか、再開閉することなく、スムーズに発車した。
 駆け込み乗車はどちらかというと、東京方面で多い。

〔次は、南浦和です〕
〔The next station is Minami-Urawa.JK42.〕

 ここから南浦和駅まではさいたま車両センター(旧称、浦和電車区)がある関係で、駅間距離が長い。
 京浜東北線も、最高速度の時速90キロで駆け抜ける区間だ。
 隣を走る宇都宮線や高崎線が時速100キロで走行する所だと思うと、けして速い速度ではない。
 尚、京浜東北線のラインカラーはスカイブルーということもあり、シンボルカラーが緑のベルフェゴールと紫のアスモデウスは見かけなかった。

 勇太:「! 先生からメールだ」

 勇太のスマホに、イリーナからメール着信があった。
 それは写真付きで、『今はモスクワ市内を散策中だから心配しないように。勇太君とマリアも、日本からは出ないように』という文言であった。
 因みに写真は、モスクワ市内を走る通勤電車の車内で撮られたものだった。
 エレクトリーチカと呼ばれる、日本ではJRのE電や関西地区のゲタ電に相当する電車である。
 車体の塗装は色々あるようだが、奇しくも写真の電車は、勇太達の乗っている京浜東北線と同じ、青を基調としたものだった。

 勇太:「どうやら、本当に今、モスクワ市内にいらっしゃるらしい」
 マリア:「一体、何をしてるんだ、この師匠は?」

 あくまでも散策と書かれているだけで、具体的に何をしているか、何をするのかまでは書かれていなかった。
 ただ、確信的な内容とすれば、勇太達が日本国外に出ない事のようである。

 勇太:「“魔の者”が?」
 マリア:「かもしれないな……」

[同日10:48.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく終点、大宮、大宮。お出口は、左側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注下さい。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔The next station is Omiya,terminal.JK47.The doors on the left side will open.Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Utsunomiya line,the Saikyo line,the Kawagoe line,the Tobu Urban park line and the New Shuttle.Please watch your step...〕

 電車はダイヤ通りに大宮駅に接近した。
 ポイント通過の為、電車が大きく揺れる。

 ミク人形:「!」

 荷棚の上に載っていたミク人形がその揺れで、バランスを崩し、荷棚から転落した。
 ハク人形が咄嗟に手を掴もうとしたが、スルリと抜けてしまう。

 勇太:「おっと!」

 だが、それを真下に座っていた勇太が受け止めた。

 マリア:「おー、ナイスキャッチ!」

 マリアは大喜びで手を叩いた。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。1番線に到着致します。お出口は、左側です。お降りの際、お忘れ物、落とし物にご注意ください。また、足元にご注意ください。今日も京浜東北線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車がホームに入線する。
 既に2番線には、先発の電車が停車していた。
 その隣のホームに滑り込む。
 大宮駅にはまだホームドアが無い為、電車がホームに停車すると、すぐにドアが開いた。

 勇太:「あそこに見える新幹線ホームまで行くのが、少し遠いんだよ」
 マリア:「なるほど。魔界でも、塔は見えるのに、そこまで行くのが大変だというステージと同じだな」
 勇太:「あー、そういうのあるねぇ……」

 まずは多くの乗客でごった返す階段を昇ってコンコースに上がり、そこから中距離電車のホームの上を突っ切って、新幹線ホームまで行かないといけない。
 それでもただでさえ旅客が多いのに、そこに中距離電車が到着したりすると、もうカオスである。
 必然的に地下ホームにありながら、新幹線ホームの真下にある埼京線・川越線からの乗り換えが1番便利という皮肉だ。

 宗一郎:「人が多いから、新幹線のキップは改札口の前で渡すよ」

 キップ購入の条件のせいなのか、紙の乗車券は大宮~仙台のみ。
 蕨~大宮間にあっては、自分のSuicaなどで乗っている。

 マリア:「行き先は?」
 勇太:「仙台だよ」
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「川口での一夜」

2022-05-19 16:11:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月2日18:00.天候:曇 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川1F・バケット]

 18時になり、待ち合わせしていたレストランに稲生宗一郎がやってきた。

 宗一郎:「いやあ、皆揃ってたね」
 勇太:「父さん、マリアさんも一緒だよ」
 マリア:「こんばんは。今日からよろしくお願いします」
 宗一郎:「ようこそ、はるばる長野から……。さ、それより早いとこ中に入ろう」

 店内に入ると、テーブル席に案内された。

 宗一郎:「何でも好きな物頼むといいよ」
 勇太:「ありがとう」
 佳子:「お昼は何を食べたの?」
 勇太:「トンカツ定食」
 宗一郎:「昼から重たいの食べたねぇ。まあいい」
 勇太:「やっぱりこういう所に来たら、パン食べ放題だな」
 マリア:「Hum Hum...」

 勇太はそれでもビーフステーキを注文したが、マリアはチキンステーキを注文した。
 恐らく先日はビーフ100%のハンバーグを食べ、今日の昼はポークを食べたので、次はチキンといったところか。

 勇太:「ここでは、ドリンクやパンは全部セルフサービスです」
 マリア:「ファミリーレストランみたいだな」

 実際、バケットはサンマルクレストランの人的サービスを省力化することで人件費を抑制し、また、メニューの内容も簡素化することで廉価版を維持しているのだろう。

 勇太:「アルコールは別ですけどね」
 マリア:「子供が勝手にアルコールを入れたんじや、さすがにヤバいか」

 因みにドリンクは、勇太はビールだが、それ以外の面々はワインを注文した。
 見た目からして、マリアは店員から未成年を疑われたが、パスポートを見せることでクリアした。

 宗一郎:「勇太の為とはいえ、そんな女子高生みたいな恰好、ムリしなくていいんだよ?」
 マリア:「それもあるんですけど、これの方が着替えとか持って来なくていいので」
 佳子:「それはまあ、確かに……」
 宗一郎:「イリーナ先生は、ロシアに帰ってしまったのかい?心配だねぇ……」
 マリア:「ええ。ようやく安否が取れまして、今はモスクワにいるようです」
 宗一郎:「モスクワ!そんな所にいて大丈夫なのかね?」
 勇太:「父さん、日本人が日本にいていいのと同様、ロシア人がロシアにいて何が悪いの?」
 宗一郎:「そうか。それもそうだな」

 宗一郎はクイッとワインを飲んだ。

 宗一郎:「そうそう。昼間は会えなくて悪かったな」
 勇太:「忙しかったの?」
 宗一郎:「私の後釜に就いた新しい関東エリア統括本部長なんだが、初めての上級幹部職ということもあってか、まだちょっとマネジメント能力がおぼつかない所がまま見受けられてね。まだ私が面倒看ないといけないようなんだ」
 勇太:「そうだったの」
 宗一郎:「私は地方支社長から上がったクチで、上級幹部の何たるかはそこで勉強したんだが、後輩は本社の部長職から上がったクチなもので、あまり外の世界を知らない。その辺りかな」
 マリア:「ダンテ一門の魔道士の中には、CEOの秘書を務めている者もいます」
 宗一郎:「そうなのか。経営者はいるのかな?」
 マリア:「少なくとも、私の周りにはいないです。魔道士というのは、影で活躍するのが好きなものですから」
 宗一郎:「なるほど。イリーナ先生を見ていると、そんな気がするね。まさか、プーチン大統領の秘書の仕事をしに行ったのではあるまいね?」

 アナスタシア組のアナスタシア・スロネフは経営者肌ではあるが、具体的に何かの企業を経営しているわけではない。
 ロシアン・マフィアの女ボスというのが実情だ。

 マリア:「それは無いと思います。ただ、側近に何かの入れ知恵をして、そこから多額の報酬を受け取るということは考えられますが」
 宗一郎:「フム……興味深い」

[同日20:00.天候:曇 同モール→タクシー車内]

 食事が終わるとすぐに帰るのではなく、イオンのスーパーでちょっと買い物。
 購入した物がワインとか、酒関係だけのような気がしたのは勇太の気のせいだろうか。

 宗一郎:「勇太、帰りのタクシーを呼んどいてくれ」
 勇太:「はいはい」

 先ほどベルフェゴールに使わせた公衆電話。
 その横に、タクシー会社に無料で繋がるホットラインがあったが、勇太はそれを使用せず、自分のスマホのアプリで予約した。
 贔屓にしているタクシー会社があり、そこのチケットを使うだろうと踏んだからだ。
 ここのモールはタクシー乗り場はあるが、待機スペースが無い為、利用者はその都度、タクシーを呼ぶシステムになっている。

 勇太:「あのタクシーだよ」

 ここに来る時に降りたバス停の並びに、タクシー乗り場はある。
 黄色いワゴンタイプのタクシーが待っていた。

 勇太:「予約していた稲生です」
 運転手:「稲生様ですね。どうぞ」

 助手席後ろのスライドドアが開く。
 と、同時にステップも床下から出て来た。

 宗一郎:「私が前に乗るから、皆は後ろへ」
 勇太:「分かった」

 宗一郎がチケットで払うからだろう。

 宗一郎:「行き先は……」
 勇太:「僕がアプリに入れといた」

 運転席のカーナビには、既にここから稲生家までのルートが表示されている。

 勇太:「この行き先でお願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーは4人を乗せると出発した。
 バス停に停車しているバスを避ける。
 タクシー配車アプリで予約できるタクシー会社の特徴として、助手席後ろにモニターがある。
 そこでは通常、CMなどが流れている。
 で、今はその配車アプリのCMが流れていた。

〔高橋:「先生、何やってるんスか?」
 愛原:「いや、この前、東北に出張に行っただろ?その時、タクシーに何回も乗って、領収証をもらったんだが……。どの領収証が、どこからどこまで乗ったヤツだか思い出せなくてねぇ……」
 高橋:「ええっ?そんなことあるんスか?!」
 愛原:「例えばさ、これはリサが暴走しかかった際にタクシーで特攻した時の領収証だよな?」
 高橋:「そうっスね」
 愛原:「いや、そういうのは覚えてるんだよ。だけど、この領収証……なぁ……」
 高橋:「この時は俺、一緒に乗ってないっスね。リサに聞けば分かるんじゃないスか?」
 愛原:「あいつ学校だで?帰ってくるまで待てってか?」
 高橋:「だって、しょうがないじゃないっスか」
 愛原:「オマエ、代わりに思い出しくれよ?」
 高橋:「うーん……。いや、ムリですって!」 どうする?Goする!〕

 勇太:「ん?この探偵さん、どこかで見たことあるような……?」
 マリア:「そうなのか?」
 勇太:「どこで会ったのかなぁ……?マリア、代わりに思い出してよ」
 マリア:「何でだよ!」

 埼京線を走行する幽霊電車で……。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする