[3月29日20:40.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原のマンション]
〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕
私達を乗せた都営新宿線電車が、菊川駅に到着する。
愛原:「はい、ここでゴール!」
私達は電車を降りた。
愛原:「……と、言いたいところだが、家に着くまではゴールじゃないか。キミ達の場合は、ホテルだな」
凛:「そうですね」
電車が轟音と強風を巻き起こしながら発車して行く。
愛原:「明日の午後、栃木に帰るんだったね?」
凛:「そうです」
愛原:「明日はちょこっと都内を歩いてみて、昼食を食べて解散といったところか」
凛:「……はい」
改札口を出て、地上に出る。
ねっとりとした湿気を含んだ風が、私達を包んだ。
愛原:「何だか降りそうだなぁ……。明日まで持って欲しいけどね」
高橋:「一応、夜だけ雨らしいっスよ?」
愛原:「マジか」
高橋:「これからサーッと降るらしいです」
愛原:「春雨だな。じゃあ、降られる前に早いとこ帰った方がいい」
凛:「明日はどうしたらいいですか?」
愛原:「明日の9時に、この駅前にまた集合しよう」
凛:「分かりました。明日もよろしくお願いします」
愛原:「こちらこそ」
駅前で別れて、上野姉妹は宿泊先のホテルへ。
私達は、マンションに帰った。
リサ:「おー、降ってきた降って来た」
愛原:「間一髪だったな」
リサ:「あの2人は大丈夫かな?」
愛原:「寄り道しないでホテルに戻っていれば大丈夫だろ」
部屋に入ると、ふとリサが言った。
リサ:「そういえば映画の先輩、どうして一緒にエレベーターに乗らなかったんだろう?断られたわけでも、ケガして動けなくなったわけでもないのに……」
愛原:「あー、言われてみればな。どうしてなんだろう?」
高橋:「化け物の自分が、一緒に行ったらメーワクだと思ったんじゃね?」
愛原:「ちょっとあの映画、分からない所があったな……」
霧生市のバイオハザードを潜り抜けた側からしてみれば、町が崩壊して行く様は分かる。
ゾンビが喋るのを不審に思った観客もいたが、これとて、霧生市のバイオハザードを体験してみれば、けして間違っていないということが分かる。
確かに多くのゾンビは、体が腐って行く苦しさや飢餓感から、呻き声や、獲物に飛びつく叫び声ばかりを上げていたが、喋るゾンビも少なからずいたのは記憶している。
ただ、それは私達の前に現れなかっただけだ。
喋れるほどの知能がまだ残っていたからだろう。
愛原:「同じTウィルスでも、変異しやすい為か、蔓延した時期とタイミングではだいぶ違うらしいな」
基本的にTウィルスは変異すればするほど、ゾンビ化するタイミングが早くなる。
霧生市に蔓延したのは、比較的変異した方だという。
リサ:「私が今撒くと、普通の人間は1時間くらいでゾンビになるだろうね」
愛原:「早い早い!」
本当に初期の物は、感染してから実際にゾンビ化するまで1週間くらい掛かったらしい。
リサ:「しかも、わたしの寄生虫でゾンビも思うがままのラジコン」
高橋:「それ、どっちかっつーと、プラーガって言わね?」
虫に寄生されてゾンビ化するというのもあった。
多分今のリサの能力はそれだ。
愛原:「プラーガともまた違うんだよな」
リサ:「そうだねぇ……」
リサは口をモゴモゴさせた後、口を開いた。
舌の上には、緑色の芋虫のようなものが一匹。
リサ:「これだよね?」
高橋:「さっさと捨てろ、そんなもの!気持ち悪い!」
リサ:「はい」
リサはゴクンと飲み込んだ。
こうやって口から出す以外に、普通に大便と一緒に排泄されることもある。
ただその場合は殆ど弱体化しており、そのまま下水道に流しても、浄水場で消毒されれば完全に死滅するという。
愛原:「でもまあ、正直な所を言おう。俺もオマエが、あのリサ・トレヴァーみたいな感じだったら、正直連れて行こうかどうか迷ったと思う」
リサ:「先生?」
愛原:「この、今の人間みたいな姿をしている時でさえ迷ったくらいなんだ。さすがにいくら味方サイドに付いてくれたとしても、連れて行こうとは思わなかったと思う」
リサ:「やっぱり見た目かぁ……」
愛原:「曲がりなりにも人間の姿をしていて、俺達を何だかんだ殺さずに脱出させてくれたからこそ、連れて行ってもいいんじゃないかと思った。もしもあのリサ・トレヴァーが、オマエみたいな姿をしていたら、クレア達も連れて行ったかもしれない」
リサ:「なるほど……」
高橋:「映画に出てきた、アシュフォード兄妹というのは?」
愛原:「レッドフィールド兄妹がその後活躍することになった、とある島での事件のキーパーソン達だよ。もっとも、レッドフィールド兄妹に敵対したことで、2人とも今頃は地獄界にいることだろう」
リサ:「人間の姿でいるのも、疲れることがある」
リサはそう言って、第一形態の姿になった。
額に一本角の生えた鬼姿である。
もしかしたら、あのリサ・トレヴァーもマスクの下は角が生えていたのかもしれない。
リサ:「このくらいなら、どう?」
愛原:「ケース・バイ・ケースだな。その時になってみないと分からんよ」
リサ:「そうかぁ……」
愛原:「高橋、風呂沸かしてくれ。明日も出掛けるんだから、さっさと風呂入って寝よう」
高橋:「うっス」
〔ピッ♪ お湯張りを、します〕
リサはリビングのソファに横になって、スマホを弄った。
第一形態になると、どうしても指の爪が長く尖るので(さすがに意識しない限り、フレディの爪のようにはならない)、タップがしにくいらしい。
愛原:「絵恋さんとLINEか?」
リサ:「うん。今日のことを報告する」
愛原:「そうか。今はLINEがあるから、そんなに寂しくないだろう?」
リサ:「サイトーは、わたしに会いたいって」
愛原:「沖縄と東京じゃ、なかなかムリだろうな」
リサ:「だよねぇ……」
さて、明日は上野姉妹をどこに連れて行ってあげようかな……。
〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕
私達を乗せた都営新宿線電車が、菊川駅に到着する。
愛原:「はい、ここでゴール!」
私達は電車を降りた。
愛原:「……と、言いたいところだが、家に着くまではゴールじゃないか。キミ達の場合は、ホテルだな」
凛:「そうですね」
電車が轟音と強風を巻き起こしながら発車して行く。
愛原:「明日の午後、栃木に帰るんだったね?」
凛:「そうです」
愛原:「明日はちょこっと都内を歩いてみて、昼食を食べて解散といったところか」
凛:「……はい」
改札口を出て、地上に出る。
ねっとりとした湿気を含んだ風が、私達を包んだ。
愛原:「何だか降りそうだなぁ……。明日まで持って欲しいけどね」
高橋:「一応、夜だけ雨らしいっスよ?」
愛原:「マジか」
高橋:「これからサーッと降るらしいです」
愛原:「春雨だな。じゃあ、降られる前に早いとこ帰った方がいい」
凛:「明日はどうしたらいいですか?」
愛原:「明日の9時に、この駅前にまた集合しよう」
凛:「分かりました。明日もよろしくお願いします」
愛原:「こちらこそ」
駅前で別れて、上野姉妹は宿泊先のホテルへ。
私達は、マンションに帰った。
リサ:「おー、降ってきた降って来た」
愛原:「間一髪だったな」
リサ:「あの2人は大丈夫かな?」
愛原:「寄り道しないでホテルに戻っていれば大丈夫だろ」
部屋に入ると、ふとリサが言った。
リサ:「そういえば映画の先輩、どうして一緒にエレベーターに乗らなかったんだろう?断られたわけでも、ケガして動けなくなったわけでもないのに……」
愛原:「あー、言われてみればな。どうしてなんだろう?」
高橋:「化け物の自分が、一緒に行ったらメーワクだと思ったんじゃね?」
愛原:「ちょっとあの映画、分からない所があったな……」
霧生市のバイオハザードを潜り抜けた側からしてみれば、町が崩壊して行く様は分かる。
ゾンビが喋るのを不審に思った観客もいたが、これとて、霧生市のバイオハザードを体験してみれば、けして間違っていないということが分かる。
確かに多くのゾンビは、体が腐って行く苦しさや飢餓感から、呻き声や、獲物に飛びつく叫び声ばかりを上げていたが、喋るゾンビも少なからずいたのは記憶している。
ただ、それは私達の前に現れなかっただけだ。
喋れるほどの知能がまだ残っていたからだろう。
愛原:「同じTウィルスでも、変異しやすい為か、蔓延した時期とタイミングではだいぶ違うらしいな」
基本的にTウィルスは変異すればするほど、ゾンビ化するタイミングが早くなる。
霧生市に蔓延したのは、比較的変異した方だという。
リサ:「私が今撒くと、普通の人間は1時間くらいでゾンビになるだろうね」
愛原:「早い早い!」
本当に初期の物は、感染してから実際にゾンビ化するまで1週間くらい掛かったらしい。
リサ:「しかも、わたしの寄生虫でゾンビも思うがままのラジコン」
高橋:「それ、どっちかっつーと、プラーガって言わね?」
虫に寄生されてゾンビ化するというのもあった。
多分今のリサの能力はそれだ。
愛原:「プラーガともまた違うんだよな」
リサ:「そうだねぇ……」
リサは口をモゴモゴさせた後、口を開いた。
舌の上には、緑色の芋虫のようなものが一匹。
リサ:「これだよね?」
高橋:「さっさと捨てろ、そんなもの!気持ち悪い!」
リサ:「はい」
リサはゴクンと飲み込んだ。
こうやって口から出す以外に、普通に大便と一緒に排泄されることもある。
ただその場合は殆ど弱体化しており、そのまま下水道に流しても、浄水場で消毒されれば完全に死滅するという。
愛原:「でもまあ、正直な所を言おう。俺もオマエが、あのリサ・トレヴァーみたいな感じだったら、正直連れて行こうかどうか迷ったと思う」
リサ:「先生?」
愛原:「この、今の人間みたいな姿をしている時でさえ迷ったくらいなんだ。さすがにいくら味方サイドに付いてくれたとしても、連れて行こうとは思わなかったと思う」
リサ:「やっぱり見た目かぁ……」
愛原:「曲がりなりにも人間の姿をしていて、俺達を何だかんだ殺さずに脱出させてくれたからこそ、連れて行ってもいいんじゃないかと思った。もしもあのリサ・トレヴァーが、オマエみたいな姿をしていたら、クレア達も連れて行ったかもしれない」
リサ:「なるほど……」
高橋:「映画に出てきた、アシュフォード兄妹というのは?」
愛原:「レッドフィールド兄妹がその後活躍することになった、とある島での事件のキーパーソン達だよ。もっとも、レッドフィールド兄妹に敵対したことで、2人とも今頃は地獄界にいることだろう」
リサ:「人間の姿でいるのも、疲れることがある」
リサはそう言って、第一形態の姿になった。
額に一本角の生えた鬼姿である。
もしかしたら、あのリサ・トレヴァーもマスクの下は角が生えていたのかもしれない。
リサ:「このくらいなら、どう?」
愛原:「ケース・バイ・ケースだな。その時になってみないと分からんよ」
リサ:「そうかぁ……」
愛原:「高橋、風呂沸かしてくれ。明日も出掛けるんだから、さっさと風呂入って寝よう」
高橋:「うっス」
〔ピッ♪ お湯張りを、します〕
リサはリビングのソファに横になって、スマホを弄った。
第一形態になると、どうしても指の爪が長く尖るので(さすがに意識しない限り、フレディの爪のようにはならない)、タップがしにくいらしい。
愛原:「絵恋さんとLINEか?」
リサ:「うん。今日のことを報告する」
愛原:「そうか。今はLINEがあるから、そんなに寂しくないだろう?」
リサ:「サイトーは、わたしに会いたいって」
愛原:「沖縄と東京じゃ、なかなかムリだろうな」
リサ:「だよねぇ……」
さて、明日は上野姉妹をどこに連れて行ってあげようかな……。