報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「富士山の麓に向かう」

2024-11-30 21:05:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日09時00分 天候:晴 静岡県富士市柳島 日産レンタカー新富士駅前店→レンタカー車内]

 新幹線で新富士駅に到着した私達は、駅前のレンタカーショップに行き、そこで予約していた車に乗り込んだ。
 因みに車は、ADバンである。
 本当は事務所でリースしている物と同じNV200バネットが良かったのだが、既に予約が入っているとのこと。
 それでも、ADバンの乗用タイプとも言えるウィングロードより料金は安い。
 商用車にしたのは料金の安さも去ることながら、持って来た荷物を載せやすいのと、商用車ならどこにいても怪しまれないというメリットがあるからである。

 パール「運転は私にお任せください」
 愛原「ああ、頼むぞ」

 私が助手席に乗り込むと……。

 リサ「え、先生?わたしと一緒に乗ってくれないの?」

 と、言い出した。

 愛原「オマエは免許持ってないだろ」
 リサ「えー……」
 愛原「いいから、オマエは後ろだ」

 と、私はヘッドレストの付いていないリアシートにリサを乗せた。

 パール「ナビに住所をお願いします」
 愛原「ああ」

 私はアンバーから教えられた住所をナビに入力した。
 どうやら所要時間は、およそ40分くらいだという。
 富士宮市内ながら、結構山深い所に行くようだ。
 立地条件は、まるでラクーンシティの洋館だな。

 愛原「これでよし」
 パール「ありがとうございます。それでは、出発します」
 愛原「よろしく」

 パールは車を走らせた。
 まずはレンタカーショップを出ると駅前ロータリーの外側を通って、県道を右折する。
 静岡県道174号線、富士見大通りである。
 県道ながら片側2車線の広い道だ。

〔しばらく、道なりです〕

 愛原「だそうだ」
 パール「かしこまりました」

 ナビをスクロールしてみると、このまま国道139号線、西富士道路に入ることになっている。
 これは国道139号線のバイパスで、かつては有料道路だったもの。
 今は無料化されたものの、自動車専用道路となっている。
 また、制限速度が80kmと高速道路並みの高規格である。
 東名高速や新東名高速のインターも、この道路に接している。
 ナビによれば、この西富士道路を通過し、更にしばらく国道139号線を北上するようにとのことだ。

 愛原「現地に到着する前に、そこに最も近いコンビニに入ろうと思う」
 パール「……となると、どこになるでしょうか?」
 愛原「そうだな……」

 私はカーナビではなく、スマホで検索した。
 カーナビでは県道180号線を右折し、国道469号線にぶつかるようにナビされている。
 すると、その辺りにコンビニがあるようで、恐らくこれが、現地から最も近いコンビニであると推察された。
 私がそれを説明すると、パールは大きく頷いた。

 パール「約束の時間にはまだ早いですし、その方がいいかもしれませんね」
 愛原「そうだろう」

 私はスマホを取り出した。

 リサ「ム!まさか、あの女の所に!?」
 愛原「なワケないだろ!善場係長だよ!」

 私はリサの見ている前で、善場係長にメールを入力した。

 パール「アンバーには、私から連絡しておきましょうか?」
 愛原「ああ、頼む。運転しながらじゃ、それは無理だが……」
 パール「そのコンビニに行ったら、連絡しますよ」
 愛原「そうか、すまん」

 返信はすぐに帰って来て、『交通費やレンタカー代などの必要経費は、請求してくれれば支払う』とのことだった。
 善場係長はそう仰ってくれているのだが、やはり贅沢はできない。
 さすがに軽自動車は荷物が積み切れない恐れがあるし、山道を行くようなので、ある程度は馬力のある車が良いと判断した。
 なので、商用バンにした旨も係長に報告したが、『所長が必要と判断されたのなら、それで結構です』とのこと。

[同日09時40分 天候:晴 静岡県富士宮市山宮 ファミリーマート富士宮山宮店]

 車はナビ通りに進んだ。
 週末ということもあり、また、富士山登山のシーズンが始まっているということもあり、そういった車で国道が渋滞していたりしたが、県道は至って普通の道だった。

 愛原「そこの交差点の角だ」
 パール「かしこまりました」

 国道469号線との交差点を右折し、すぐに左折してコンビニの駐車場に入る。
 国道沿いにあるということもあり、駐車場は比較的広く、大型駐車場もある。
 そしてそこに、大型トラックも駐車していた。
 さすがに道の駅ではないので、観光バスが止まっているようなことは無かったが。

 愛原「よし、ここで時間調整だ」

 車が空いている駐車スペースに止まる。

 パール「はい、着きました」
 愛原「ありがとう。じゃ、ここで少し休憩な」
 リサ「おやつ食べたい。トイレ行きたい」
 愛原「行ってら。パールも一服していいからな?そこに吸い殻入れがある」
 パール「ありがとうございます。その前に、アンバーに連絡しますよ。先生は休んでてください」
 愛原「ああ、ありがとう」

 私はコンビニ店内に入った。
 さすがに6月も中旬に差し掛かると、外も暑くなる。
 なので車内はクーラーを入れていた。
 店内もクーラーが入っていて涼しい。
 雨が降れば梅雨寒になるのだろうが、今日は天気が良さそうだ。
 リサは先にトイレに行ったようだ。
 私も借りることにする。
 それから、ここでも水を買っておくことにした。
 ここでもというのは、レンタカーショップの自販機でも水を購入していたのだが、念の為にもう1本買っておこうと思ったのだ。
 あとは缶コーヒー。
 コンビニのオリジナルブランドだと、外の自販機より安いことがある。

 リサ「アイス食べたい。あとは肉」

 トイレから出て来たリサに、食べ物をねだられた。

 愛原「後者はおやつじゃねーなw」

 それでもしょうがないので、一応買ってやる。

 愛原「水も持っておいた方がいいぞ?」
 リサ「うん、そうだね」

 パールも店内に入って来るかと思ったが、なかなか入ってこない。
 どうしたのかと思い、店の外に出ると、パールは喫煙所でタバコを吸っていた。
 だが、スマホを片手に通話しているパールが、険しい表情をしている。
 一体、何があったのだろうか?
 まさか、急きょ案内はできないという断りの電話ではなかろうな?
 だとしたら、ここまで来てそれは困る!
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“私立探偵 愛原学” 「新富士駅に到着」

2024-11-30 11:16:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日08時32分 天候:晴 静岡県富士市川成島 JR東海道新幹線705A列車・1号車内→新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”サビ)♪♪。 まもなく、新富士です。お出口は、左側です。新富士を出ますと、次は、静岡に停まります〕

 愛原「新幹線だと1時間弱で行けるから楽だな」
 パール「はい。東名高速は、早くも行楽客の車で渋滞です」
 愛原「だろうな」

 私達は降りる準備をした。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく新富士、新富士です。お出口は、左側です。ホーム進入の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください。また、網棚のお荷物にもご注意ください。新富士駅で、5分ほど停車致します。発車は、8時37分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 荷物を降ろしてデッキに向かう。
 すると、本線からホームのある副線に移る為、そこで列車が左右に揺れた。
 本線を最高速度285kmで走る列車からすれば、かなり減速するポイントなのだろうが、それでも在来線で似たような構造の駅よりは減速しないで入線できる構造になっているはずだ。
 このまま列車は、時速30kmまでは自動で減速する。
 この時、その速度に落ちるまで、運転士は手動でブレーキボタンを押さなくてならない。
 自動なのに手動で?と思うかもしれないが、あえてそうさせることで、運転士に異常が発生していないことを確認する為である。
 かつて山陽新幹線で、停車駅に到着した列車が、所定の停止位置よりかなり手前に停車してしまい、再加速することもなく、そのまま止まってしまったということがあった。
 駅員や車掌が確認に行ったところ、運転士が意識を無くしており、ブレーキボタンの操作が無かった為、自動で緊急停止したものだとされた。
 時速30km以下になったら、あとは運転士が手動でブレーキハンドルを操作して停車させる。
 ここまでできたのだから、まさかこの期に及んで運転士が意識が無くすとは考えられないが、万が一の為、所定の停止位置を過ぎたら、今度は車掌がブレーキ弁を引いて緊急停車させる。
 この辺りは在来線と同じ。
 で、この列車は、ちゃんと所定の停止位置に止まった。
 ドアチャイムの音色と共に、ドアが開く。
 JR東日本だと、『ドアが開きます』という自動放送だが、こちらはチャイム。
 ドアが開く速度が速いのは、特筆できる。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 

 新富士駅に到着した。

 愛原「それじゃ、レンタカーショップに行って、レンタカー借りてくるか」
 パール「はーい」
 愛原「その前にタバコの吸い溜め、してきていいぞ。最近のレンタカーも禁煙車だからな」
 パール「……ですよね」

 パールはホームの上をキョロキョロしたが……。

 愛原「新富士駅の喫煙所はコンコースにあるよ」
 パール「そうでしたか」

 ホームを歩いているうちに、後続の通過列車が轟音を立てて通過していく。
 この辺りは線形か良いらしく、通過列車も基本的には最高速度の285kmで通過するという。
 階段を下りて、パールはコンコースにある喫煙所に入って行った。

 リサ「あっ、先生。これ……」

 リサが見つけたのは、大石寺の広告。

 

 愛原「どうやら、ここの信徒達も、この駅を使うようだな」

 栗原蓮華を思い出す。
 鬼化してしまい、壮絶な最期を遂げてしまったが、何だろう?
 人間だった頃よりも幸せだったように見えたのは。
 人間だった頃は、鬼のようなBOWのリサ・トレヴァー『1番』に片足を食い千切られてしまったが、自身もBOW化したことで、足が再生したのが大きかったか。
 BOWの特徴として、致命傷を負っても、見る見るうちに回復してしまうというのがある。
 ハンドガンの1発や2発食らっても倒れないのはその為だ。

 愛原「まさかとは思うけど、最終的に、BSAAの重鎮様が来日されて全て解決なんてことは無いよな?」
 リサ「まさか……」
 愛原「なあ。……まあ、いいや。俺達は改札の外で待っていよう」
 リサ「うん」

 自動改札機にキップを入れて、外に出る。
 改札外コンコースに自動販売機があったので、これで缶コーヒーでも買ってパールを待つことにした。

 

 リサ「焼肉……🤤」
 愛原「何だ?今は行かないぞ?」

 新富士駅は“こだま”しか停車しない小さな駅ながら、やはり小さいながらも駅ビルはある。
 主に飲食店が入居しているようだが、何だか高そうな焼肉屋もあった。

 リサ「今は!?後で行くの!?」
 愛原「この店かどうかは分からんが、この仕事が無事に終わったら、打ち上げに焼肉くらい食わせてやるよ」
 リサ「やったーっ!」

 ……後で食べ放題の店を検索しておこう。
 多分ここ、食べ放題じゃない。

 パール「お待たせしましたー」

 しばらくしてパールがやってきた。

 愛原「いや、いいよ」

 私は缶コーヒーを飲み干すと、回収ボックスに入れた。

 愛原「じゃ、レンタカー屋に行くか」

 私達は富士山口から駅の外に出ると、予約しているレンタカーショップに向かった。
 頭上からは、通過列車の轟音が響いていた。
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