報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」

2024-11-07 20:28:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日10時00分 天候:晴 静岡県御殿場市深沢 東名高速道路・足柄サービスエリア上り線→富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号・車内]

 トイレを済ませた後、私は自販機で缶コーヒーを購入して飲んでいたのだが、リサはキッチンカーの所に行き……。

 リサ「肉串買っちゃったw」

 と、牛ステーキ肉をぶつ切りにし、串に刺して焼いた物を食べていた。

 リサ「わたしはレアがいいって言ったんだけど、『ミディアムからだ』って断られた」
 愛原「ま、そりゃそうだろうな」

 衛生上の問題か。
 ステーキハウスなどと違い、キッチンカーでは、焼き方にも制限があるだろう。
 私達はバスに戻った。
 因みに、サービスエリアで買った物は缶コーヒーや肉串だけではない。
 一応、パールや自分用のお土産として酒類、温泉の素の他に、リサは友達と食べる用と称してバームクーヘンなんかを購入した。

 リサ「『魔王軍』の皆が遊びに来てくれることになってるからね」
 愛原「そうなのか」

 買った物は網棚の上に置くか、それが入ったビニール袋を座席のフックに引っ掛けておく。
 運転手がカウンターを持って、乗客が揃っているかを確認する。
 それから運転席に戻って、ドアを閉めた。

〔「お待たせ致しました。それでは皆様お揃いになりましたので、出発致します。バスの定時発車への御協力ありがとうございました。引き続き、シートベルトの着用をお願い致します」〕

 バスはゆっくりと発車した。

 運転手「こちら○○○便です。現在、お客様35名、定時です」

 インカムを付けた運転手が、運行管理と中間報告しているのが聞こえて来る。

 愛原「ん、そういえば……」
 リサ「なに?」
 愛原「バスが休憩中、ヘリコプターはどうしてたんだ?」
 リサ「ずっと飛んでたと思うよ?」
 愛原「えっ?」
 リサ「さっきからずっと、このサービスエリアの上をヘリが飛んでたから」
 愛原「何だか大変だな……」
 リサ「わたしのせいだから、申し訳ないね。後でレイチェルに謝っておこう」
 愛原「そうだな。このバームクーヘンでも食いながら……」
 リサ「先生はお酒でしょ?」
 愛原「パールが落ち込んでるからな。酒でも飲ませて、気を紛らわさせてやるさ」

 さすがに拘置所は禁酒だ。
 タバコは……どうなんだっけ?
 警察の留置場はもちろん、警察署そのものが禁煙になってしまった為、運動の時間でも吸えなかったのだとか。
 それが高橋にはキツかっただろう。

 リサ「そうかぁ……」
 愛原「このバスは昼前には東京駅に着くが、色々と買い物したりしていると昼になるから、昼を食べてから帰ろう。夕食はパールが用意してくれる。今日はステーキ焼いてくれるそうだ」
 リサ「おー!」
 愛原「だから、昼は肉以外な?」
 リサ「えー……」
 愛原「肉もあるような店に行けばいいんだ。八重洲地下街でも歩けば、そういう店があるだろう」
 リサ「そ、そうかな……」
 愛原「せっかくWi-Fiが繋がるんだ。探しておこう。……と、その前に俺も中間報告だ」

 私は善場係長に、足柄サービスエリアを出発した旨をメールした。

[同日11時50分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・日本橋口]

 バスは東名高速を西進する。
 片側3車線の道を進むが、古い高速道路ということもあり、途中でカーブやアップダウンのキツい所とかもあったりする。
 そういう所では往々にして平均速度が下がりやすく、車の全体数が多い為に事故や渋滞も発生しやすい。
 右車線を走り屋らしい車がかっ飛ばして行ったり、バイクの集団が車と車の間をすり抜けて行ったりと、かなりスリリング。
 東北自動車道でも見られる光景ではあるが、そこまで車が多くないこともあり、あまりスリリングな場面は見られにくいかも。
 ノロノロ運転になったのは、海老名付近。
 ここは最悪だ。
 国土交通省も認める高速道路の渋滞ランキングで、常に上位に食い込む場所だ。
 大石寺登山帰りの作者のイライラポイントであり、作者は、「もう嫌だ!次回は新幹線使っちゃる!!」とキレていたという。
 挙げ句の果てには、「南条時光さんが、東京に領地を持っていたらなぁ……」と、ボヤいていたとか。

 それから、東名江田や東名向ヶ丘のバス停に停車する。
 ここでは、それぞれ数人ずつ降りて行った。
 JRの急行バスだと乗車もあるが、富士急バスでは降車しか扱わない。
 それから首都高に入って、用賀料金所のすぐ近くにある用賀パーキングエリアにも停車する。
 これは休憩ではなく、降車扱いの為。
 実際にバス停も設置されている。
 しかしながら時刻表には表記されておらず、臨時停車扱いになっているのだろう。
 実際、用賀パーキングエリアに入る為には、料金所の1番左側のブースから出入りするしか無く、そのブースが閉鎖されている場合は、パーキングエリアに立ち寄れない為、通過となる。
 用賀パーキングエリアからだと、東急田園都市線の用賀駅に程近く、渋谷などに用がある利用客は重宝しているらしい。
 そこを出ると、再び首都高速3号線へ。
 首都高速もまた車は多かったものの、制限速度を下回るほどの渋滞は発生しておらず、そこでは遅れは発生しなかったもよう。
 そして、バスは霞ケ関出入口で高速を降りた。
 週末の官庁街は、車も人も平日よりは少ない。
 ここでも降車ボタンが押され、10人以上の乗客が降りた。
 尚、バスの停車場所には都営バスの停留所もあり、高速バスだと『霞ケ関』だが、都営バスだと『経済産業省前』という名前のバス停になる。
 バス停のすぐ近くに地下鉄の霞ケ関駅がある為、地下鉄に乗り換えたい場合はここで降りた方が良い。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。長い間の御乗車、大変お疲れ様でした。まもなく東京駅、東京駅、日本橋口に到着致します。……〕

 皇居の前を通って大手町界隈に入り、そこから国道1号線(永代通り)に入ってJRのカードを潜れば、もうすぐ東京駅である。
 東京駅日本橋口のロータリーは、はっきり言って手狭だ。
 増大するバスの本数に対してキャパがギリギリなのにも関わらず、タクシーや一般車の降車場が整備されていないこともあり、そういうのがロータリー内に止まっていたりしているとすぐに詰まってしまう。
 『東京駅周辺で、最もクラクションの響く所』とも言えるだろう。
 私達の乗ったバスも、そんな乗用車達は既に乗降扱いしている別のバスをかき分けて、ようやくサピアタワー前の乗降場に到着した。
 やはり定時運行は無理のようで、20分ほど遅れての到着となった。

 愛原「やっと着いたな」
 リサ「帰って来たって感じが……するようなしないような……」
 愛原「えっ、何で?」
 リサ「東京駅って、旅行の時くらいしか来ないからかもね」
 愛原「そ、そうかぁ……。忘れ物無いようにな」
 リサ「うん」

 私達は席を立って、ドアの方に向かった。

 愛原「お世話様でしたー」

 私はスマホの画面を運転手に見せてバスを降りた。

 リサ「先生!荷物!」
 愛原「おっと!」

 リサに言われて、踵を返す。
 そうだった!
 荷物室の中に、キャリーバッグを預けていたんだった。
 ターミナルの係員達がバスの荷物室を開けて、乗客の荷物を降ろしている。

 愛原「これだ、これ。危ねぇ~!」
 リサ「良かったね?わたしがいて」
 愛原「そ、そうだな。助かったよ」

 こりゃ、御礼に肉が出て来る料理店に連れて行かないとダメだな。
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“私立探偵 愛原学” 「やきそばエクスプレス4号」

2024-11-07 15:26:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日08時30分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号・車内]

 私とリサを乗せたバスは、定刻通りに発車した。
 まだ車内は、数えるほどしか乗客が乗っていない。
 乗客名簿をチラッと見た感じ、殆どの座席が予約でいっぱいのようである。
 町の中心部である富士宮駅前や、東名高速の入口である東名富士バス停から多くの乗客を乗せるものと思われる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は、富士急行の高速バスにご乗車頂き、真にありがとうございます。このバスは東名高速、首都高速を経由しまして、東京駅日本橋口まで参ります。……〕

 バスは営業所を出ると、国道には出ず、道を右折した。
 営業所と車庫の間の道路は2車線あるが、大型車同士ではすれ違いが難しいくらい狭い道な上に、普通車の交通量はそこそこあるので、右折するのには苦労する。
 よくこんな所バスが通るものだと思うが、地元民の生活道路なのか、地元ナンバーの車は、慣れた様子で軽やかにバスを避けて行くのである。
 リサはスマホを取り出し、車内のWi-Fiに繋いでネット。
 ……かと思いきや、ある程度LINEを送ったら、あとはもうポケットにしまってしまう。
 私がもういいのかと聞くと……。

 リサ「今日は午前中、学校がある日だから。今頃皆、朝のホームルームだよ」

 とのこと。
 確かに、この時間はそうだ。
 ホテルからバスの営業所に移動している間、国道の歩道を通学生が歩いていたり、自転車を走らせているのを見たことがある。

 愛原「なるほど、そうか」

 学校から聞いた話、リサの停学は1ヶ月。
 解除されるのは今月中旬で、来週いっぱいまでとのこと。

 リサ「あ、レイチェルだけは今日は休みだけど」
 愛原「何で?……あ、今日土曜日か!」

 バスが満席近くなのも、今日は土曜日で、東京方面に遊びに行ったりする人達が多いからだろう。
 レイチェルは毎週土曜日は、BSAAの本部で戦闘訓練を受けている。
 そこが、ただの留学生ではないことの表れだ。

 リサ「今日の戦闘訓練は、実際にヘリコプターに乗って、乗り物に乗っているBOWの追跡を行うというものなんだって」
 愛原「訓練内容、話しちゃってもいいの?」
 リサ「いいんじゃない?どうせバレてるから」
 愛原「ん?ん?どういうことだ?」
 リサ「このバス、東京駅に着くまで、BSAAが監視するんでしょ?」
 愛原「ああ。BSAAの地区本部隊が、近くの自衛隊基地からヘリコプターを飛ばして……って、ええっ!?」 
 リサ「そのヘリコプターに、レイチェルが乗るんだってさ」
 愛原「まだ17歳なのに、操縦すんの?」
 リサ「どうだろうね?BSAAだし」

 ま、まあ、パイロットは別にいるか。
 もちろんレイチェルとて、BSAAの正規隊員を目指す養成員。
 いずれはヘリの操縦免許を取ることになるのだろうが。

 リサ「なもんでわたし、暴走できない。蜂の巣になるから」
 愛原「う、うん。そうだね。暴走しないでね」
 リサ「美味しい蜂蜜が取れるかもしれないよ?」

 リサはスカートの上から、自分の股間を指さした。

 愛原「何でそこを指さす?」

 冗談が言えているうちは大丈夫か……。

[同日09時45分 天候:晴 静岡県御殿場市深沢 東名高速道路・足柄サービスエリア上り]

 バスは富士宮駅前、鷹岡車庫、東名富士と停車した。
 そこから何人もの乗客を乗せて、確かにほぼ満席状態となる。
 善場係長が狙ったのは、これだ。
 基本的に、こういう長距離高速バスは事前予約制である。
 他の乗客達も、事前にそうしたのだろう。
 ところが、闇バイトの連中は計画が行き当たりばったりな為に、私達がこのバスに乗ることを突き止めても、今から席を取ることはできない。
 新幹線などは自由席があるので、飛び込みで乗車はできるが、高速バスは席が空いていなければどうしようもない。
 だから、週末に混雑する東名高速のバスは、逆に狙い目なのであろう。
 また、富士急バスグループの中には、派手なラッピングをする会社もあるが、私達が乗っているバスは、それほど飾っていない。
 元々が白いバスなので、あまり目立たない。
 にもかかわらず、多くの高速バスや観光バスが行き交う東名高速を走行し、しかも途中休憩場所が、東名高速随一のみならず、全国ランキングでも上位に食い込む大規模な足柄サービスエリアに止まるとなれば、たかだか闇バイター達は見失いやすいだろうとのこと。
 BSAAが車ではなく、上空からヘリで追跡するのはこの為。
 バス会社によっては、バスの屋根に会社名や管理番号を塗装していることがあり、このバスもそうなのであれば、むしろ上空からの方が追跡しやすいということだ。

〔「足柄サービスエリアです。こちらで15分ほど休憩とさせて頂きます。発車は10時ちょうどです。お時間までには必ずバスに戻られますよう、固く固くお願い申し上げます」〕

 週末ということもあり、また、テレビでも紹介されることのある有名なサービスエリアということもあり、駐車場は多くの車で賑わっている。
 だがその分、バス用の駐車場に行けば、多くの高速バス、観光バスが駐車されていた。
 中には、同じ富士急系の観光バスもいたりする。
 そこに潜り込めば、行き当たりばったりの犯行である闇バイター達を混乱させることはできるだろう。
 もちろん、指示役がしっかりしていれば、それほどバカでもないだろうが。
 駐車場には警備服に蛍光チョッキ、ヘルメットを被った誘導員が出動していて、やってきた私達のバスを、バス専用駐車場に誘導した。

 愛原「なるほど。ここか……」

 バスが止まった場所は、本屋(ほんおく)からやや上り方向にズレた場所。
 ただ、トイレはすぐ近くにある。

 愛原「トイレに行って、少し中を覗けるかな」
 リサ「降りるの?」
 愛原「一応な」
 リサ「じゃあ、わたしも……」

 バスの扉が開くと、私達は他の乗客に続いてバスを降りた。
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