報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの帰宅」 2

2024-11-09 21:16:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日18時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階→愛原家3階]

 結局私は夕食時まで、事務所にいた。
 その間、体操服とブルマに着替えたリサが私の近くでゴロゴロしていた。
 もし今日、顧客や善場係長など、来客がある予定だったら、けしてその恰好で事務所内をうろつかせたりはさせないのだが。

 

 リサ「ねぇ、先生。そろそろ、夕飯の時間だよ」
 愛原「ん?おー、もうそんな時間か。結局土曜日も仕事してしまった」
 リサ「明日は休みだよね?」
 愛原「そのつもりだ」

 私は机のパソコンをシャットダウンすると、事務所を閉める準備を始めた。
 まあ、給湯室で火の元の点検や、空調を止めて照明を消すだけだが。
 エレベーターではなく、階段で3階に向かう。

 

 リサはクイッとブルマのお尻の食い込みを直した。
 今日はオーソドックスな紺色のブルマ。
 学校の購買で買った正式なものなのか、それとも通販で買ったものなのかは分からない。
 だが、私がただのコスプレが嫌いだと知ると、コスプレショップなどで売っているチープな造りのブルマは購入しなかったようだ。

 リサ「ただいまぁ」
 愛原「いや、悪い悪い!顧客の1人が、リモートで急に打ち合わせを希望してきてさ……」
 パール「お疲れ様です。夕食の支度はできてますよー」
 リサ「おおー!美味しそう!」

 

 テーブルの上には、リサ用の大きなステーキが置かれていた。
 質より量の観点から、リサには安いアメリカ産などの輸入物の肉が出されることが多い。
 どうも、スーパーで牛肉の特売が行われたらしく、パールはそれを目ざとく買って来たとのこと。

 

 パール「こちらは先生用です」
 愛原「おっ、すまんな」
 リサ「はい、先生!ビール!」
 愛原「ありがとう」

 ブルマ少女からビールを注がれるなんて、こんな経験は滅多に無いぞ?

 愛原「それでは食べよう。いただきます」
 リサ「いただきまーす!」
 パール「いただきます」
 愛原「うん、美味い。さすが、元メイド」
 パール「ありがとうございます。でもたまに、メイドカフェの手伝いに行くことがありますよ」
 愛原「そうだったな。そういう意味では、まだ現役のメイドだ」

 パールは料理が上手いので、ホールではなく、キッチンにいることが多いそうな。

 パール「もっとも、マサが収監されてしまいましたので、もう行けなくなってしまいましたが……」
 愛原「何とか高橋を執行猶予に持って行きたい。そしたら、あいつもすぐに戻って来れる!」

 起訴されてしまったのは、それまでの高橋の前科数と、容疑の段階だが、余罪の疑惑があったからだろう。
 不起訴や起訴猶予に持ち込めなかったので、次は保釈だが、保釈もダメ。
 となると、次は執行猶予だ。
 幸いにして、今のところ被害者は私1人。
 その私が処罰感情無しを表明している、実質的に示談が成立していることになるはずなので、裁判所もおいそれと厳罰に処することができないはずだ。
 略式起訴による罰金刑で済めば、これもまた戻って来るのが早いのだが、どうも罰金刑で済みそうな話でもない。
 やはり、懲役刑を食らうが、そこに執行猶予が付くかどうかが裁判の争点となる。
 何せ、あいつの犯行動機が、『世界的なバイオテロ組織“コネクション”に対し、闇バイトを申し込んだから』というフザけたものが、司法関係者の神経を逆撫でしたらしい。
 私もあいつの犯行動機については、信じていない。
 あいつは軽い気持ちで、闇バイトに応募するような奴じゃない。
 闇バイトよりも、その指示役やリクルーターよりも、もっと立場が上の存在ではないかと思っている。
 そして、それは私だけではなく、善場掛係長も、その他の司法関係者も皆そう思っているそうだ。
 しかし、高橋はそこを正直に話さない。
 そこが悪質だと判断され、略式起訴ではなく、ガチの懲役刑を狙った起訴と。

 愛原「あいつ、何で洗いざらい喋らないんだろう?」

 前回、面会に行った時、警察などには正直に話すように言ったのだが、それでもあいつの証言は変わらないらしい。

 パール「そりゃあ、喋るとヤバいからでしょう。正直、消されるのかもしれません」
 愛原「マジか……。やっぱりあいつ、正規メンバーなのか?」
 パール「それは分かりませんけど、もしかしたらマサのヤツ、しばらくは拘置所や刑務所にいた方が安全くらいに思ってるかもしれません」
 愛原「そうか……」

 逆に、あまり面会に行かない方がいいのか?
 いや、でもな……。

 愛原「事務所が忙しくない時は、高橋の面会に行っていいからな」
 パール「えっ?先生は……?」
 愛原「そんな頻繁に事務所は空にできないから、気が向いたら行くよ。手紙のやり取りはできるし、もし何だったら、パールに伝言を頼んだりするから」
 パール「そうですか……」
 愛原「差し入れもケチらず、ガンガン入れてやってくれ。……あ、領収証はもらって来てくれな?」
 パール「分かりました。ありがとうございます」
 リサ「明日、先生はどこにも行かないよね?」
 愛原「そうだな。特に予定は無い」
 パール「明日くらいは、ゆっくりなさってください」
 愛原「そうさせてもらう」

 とはいえ、リサの友達が遊びに来るのだから、事務所の方が却って落ち着くかもしれないな。
コメント
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