[7月1日15時40分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』]
建物全体は洋館といって良い佇まい。
重厚な正面玄関のドアを開けて出て来たのは、タキシード姿の執事と言って良い老人。
黒いタキシードなのに、目を凝らしてみると血のような赤黒い染みが付いているように見えるその老人に、私は見覚えがあった。
最初に会った時は、もう少し髪も黒かったのに、今では全部白髪だ。
頭頂部は剥げているのに、総髪にしている河童のような頭の執事だ。
執事「いらっしゃいませ。御予約のお客様でございますか?」
長野県の洋館に行った時、私はこのような暗号を言った。
愛原「『パンツ穿かせてください』」
リサ「ファッ!?先生!?」
リサがビックリして私の方を見る。
まさか私がそんなことをいきなり言うとは思わなかったのだろう。
だが、執事の方は目を丸くして、私の顔を覗き込んで来た。
執事「……おお!あなたは……!十余年ぶりですね!どうぞ。中で御主人様がお待ちでございます」
愛原「ありがとう。……2人で予約したので、このコもいいですか?」
執事「もちろんですとも。どうぞ、中へ……」
愛原「お邪魔します」
中に入ると高級ホテルのロビーのような空間が広がっていた。
高級ホテルのロビーをコンパクトにした感じ。
長野県の洋館の時はもう少し暗く、こぢんまりとしたロビーだったのだが、ここは明るく解放感はある。
ペンションとして再スタートしているからだろうか。
しかし、アンティークな家具や調度品が飾ってあるところは長野時代と変わらない。
えーと……ここでは、何て言うんだっけな……。
愛原「『あなたと一緒に食事がしたいな』」
リサ「先生?!」
またもやリサが目を丸くする。
思わず人間形態から鬼形態に戻ってしまうところだった。
執事「はっはっは。さすがは愛原様です。今でも暗号を覚えておいでのようで……」
愛原「それほどまでに、インパクトがあるということなのですよ」
この執事とやり取りをして思ったのは、予約の電話をした時、応対した男の声とは違ったことだ。
予約の電話の応対をしたのは、この執事ではない。
ロビーを抜けた先に、階段とその下に小さなフロントデスクがあった。
しかしそこには誰もおらず、執事がフロントデスクの中に入ると……。
執事「では、こちらの宿泊者カードに御記入を……」
愛原「はい」
私はボールペン走らせた。
愛原「こちらのオーナーとは会えますか?」
執事「御主人様は夜でしたら、お会いになれるとのことです」
愛原「夜か……」
執事「それまでは、どうか館内でお寛ぎください。大浴場もございますよ」
愛原「それはいいな。後で入らせてもらおう」
私は宿泊者カードへの記入を終えた。
宿泊料金は前金となる。
私は現金で宿泊料金を支払った。
執事「それでは、こちらが鍵でございます。お部屋は、2階の205号室になります。御夕食の会場でございますが……。3階の301号室となります」
愛原「ん?ダイニングとかじゃなくて、客室?」
執事「さようございます。18時からとなってございますので、宜しくお願い致します」
何だろう?
個室か何かなのだろうか?
とにかく私は鍵を受け取ると、階段を上がり、205号室に向かった。
リサ「ねぇ、先生」
愛原「何だ?」
リサ「このペンション……他にもお客さん、いるんだよね?」
愛原「そのはずだ。実際、ダブルルームは満室だと言われた」
リサ「その割には、人の気配が無くない?」
愛原「うーん……言われてみれば……」
ペンションにしては大規模な建物だろう。
ホテルと言っても差し支えない規模だ。
建物は3階建てのようで、大浴場は地下1階にあるらしい。
メインダイニングは3階にあり、そこから見える山の景色は最高とのこと。
最上階をメインダイニングにして、山の眺望を楽しませるというのは、ホテル天長園に似通っている。
愛原「ここが205号室だな」
私がもらった鍵を見ると……。
愛原「スペードの鍵?」
リサ「映画で、オリジナルの大先輩が持ってたトランプの鍵の1つだね。確か、主人公達には『ハートの鍵』を渡してたっけ」
愛原「ますます、アンブレラの洋館だな……」
私は鍵を開けて、部屋の中に入った。
中に入ると、アンティークな造りの部屋になっていた。
南向きの部屋のはずだが、何故か薄暗いのは、既に外には分厚い雲が掛かっており、いつ雨になってもおかしくない状況だからだろう。
ツインルームなだけにベッドが2つあり、部屋の中にあるもう1つのドアを開けると、トイレと洗面所があった。
風呂やシャワーは無い。
基本的に宿泊中は、例え夜中でも大浴場は自由に入れるので、そこを使ってくれということだろう。
さすがに源泉かけ流しではないようだが、温泉とのこと。
愛原「うん。窓からは、山とかよく見えるな……」
リサ「わーっ!」
リサはガバッとベッドにダイブした。
スカートが捲れて、スカートの下に穿いている紺色のブルマが丸見えになっている。
愛原「こらこら。制服がシワになっちゃうぞ」
リサ「エヘヘ……。これからどうする!?ね、どうする!?」
リサが鼻息荒くして私に迫って来た。
愛原「落ち着け。せっかくだから、温泉を楽しもうじゃないか。部屋から、バスタオルとフェイスタオルを持って行けばいいんだったな」
リサ「浴衣は着ないの?」
愛原「それは寝る時だよ。まあ、寝る前にも一っ風呂浴びるつもりでいるから、その時に着替えればいいんじゃないかな?」
リサ「なるほど。……あ、その前にちょっとトイレ」
愛原「あいよ」
リサはトイレに行った。
室内には館内での注意事項などが書かれた冊子が置かれていた。
そして、ライティングデスクの上には電話機が置かれている。
ただ……洋風の黒電話的な見た目だが、外線繋がるんだろうか?
冊子を見ると、どうも内線専用らしい。
外線が繋がる電話はどこにあるのだろうか?
私は受話器を取ると、フロントのダイヤルを回した。
執事「はい。フロントでございます」
愛原「ああ、愛原ですが……」
執事「愛原様。何かございましたか?」
愛原「外線電話を使いたいのですが、館内にありますか?」
執事「それでしたら、ロビーに公衆電話がございますが」
愛原「ロビーか……」
共用部にある電話で、秘密の報告ができるだろうか?
まあ……ここに到着したという連絡だけならOKかな。
温泉に入る前に善場係長に電話しておこう。
改めてスマホを見たが、やはり圏外であった。
建物全体は洋館といって良い佇まい。
重厚な正面玄関のドアを開けて出て来たのは、タキシード姿の執事と言って良い老人。
黒いタキシードなのに、目を凝らしてみると血のような赤黒い染みが付いているように見えるその老人に、私は見覚えがあった。
最初に会った時は、もう少し髪も黒かったのに、今では全部白髪だ。
頭頂部は剥げているのに、総髪にしている河童のような頭の執事だ。
執事「いらっしゃいませ。御予約のお客様でございますか?」
長野県の洋館に行った時、私はこのような暗号を言った。
愛原「『パンツ穿かせてください』」
リサ「ファッ!?先生!?」
リサがビックリして私の方を見る。
まさか私がそんなことをいきなり言うとは思わなかったのだろう。
だが、執事の方は目を丸くして、私の顔を覗き込んで来た。
執事「……おお!あなたは……!十余年ぶりですね!どうぞ。中で御主人様がお待ちでございます」
愛原「ありがとう。……2人で予約したので、このコもいいですか?」
執事「もちろんですとも。どうぞ、中へ……」
愛原「お邪魔します」
中に入ると高級ホテルのロビーのような空間が広がっていた。
高級ホテルのロビーをコンパクトにした感じ。
長野県の洋館の時はもう少し暗く、こぢんまりとしたロビーだったのだが、ここは明るく解放感はある。
ペンションとして再スタートしているからだろうか。
しかし、アンティークな家具や調度品が飾ってあるところは長野時代と変わらない。
えーと……ここでは、何て言うんだっけな……。
愛原「『あなたと一緒に食事がしたいな』」
リサ「先生?!」
またもやリサが目を丸くする。
思わず人間形態から鬼形態に戻ってしまうところだった。
執事「はっはっは。さすがは愛原様です。今でも暗号を覚えておいでのようで……」
愛原「それほどまでに、インパクトがあるということなのですよ」
この執事とやり取りをして思ったのは、予約の電話をした時、応対した男の声とは違ったことだ。
予約の電話の応対をしたのは、この執事ではない。
ロビーを抜けた先に、階段とその下に小さなフロントデスクがあった。
しかしそこには誰もおらず、執事がフロントデスクの中に入ると……。
執事「では、こちらの宿泊者カードに御記入を……」
愛原「はい」
私はボールペン走らせた。
愛原「こちらのオーナーとは会えますか?」
執事「御主人様は夜でしたら、お会いになれるとのことです」
愛原「夜か……」
執事「それまでは、どうか館内でお寛ぎください。大浴場もございますよ」
愛原「それはいいな。後で入らせてもらおう」
私は宿泊者カードへの記入を終えた。
宿泊料金は前金となる。
私は現金で宿泊料金を支払った。
執事「それでは、こちらが鍵でございます。お部屋は、2階の205号室になります。御夕食の会場でございますが……。3階の301号室となります」
愛原「ん?ダイニングとかじゃなくて、客室?」
執事「さようございます。18時からとなってございますので、宜しくお願い致します」
何だろう?
個室か何かなのだろうか?
とにかく私は鍵を受け取ると、階段を上がり、205号室に向かった。
リサ「ねぇ、先生」
愛原「何だ?」
リサ「このペンション……他にもお客さん、いるんだよね?」
愛原「そのはずだ。実際、ダブルルームは満室だと言われた」
リサ「その割には、人の気配が無くない?」
愛原「うーん……言われてみれば……」
ペンションにしては大規模な建物だろう。
ホテルと言っても差し支えない規模だ。
建物は3階建てのようで、大浴場は地下1階にあるらしい。
メインダイニングは3階にあり、そこから見える山の景色は最高とのこと。
最上階をメインダイニングにして、山の眺望を楽しませるというのは、ホテル天長園に似通っている。
愛原「ここが205号室だな」
私がもらった鍵を見ると……。
愛原「スペードの鍵?」
リサ「映画で、オリジナルの大先輩が持ってたトランプの鍵の1つだね。確か、主人公達には『ハートの鍵』を渡してたっけ」
愛原「ますます、アンブレラの洋館だな……」
私は鍵を開けて、部屋の中に入った。
中に入ると、アンティークな造りの部屋になっていた。
南向きの部屋のはずだが、何故か薄暗いのは、既に外には分厚い雲が掛かっており、いつ雨になってもおかしくない状況だからだろう。
ツインルームなだけにベッドが2つあり、部屋の中にあるもう1つのドアを開けると、トイレと洗面所があった。
風呂やシャワーは無い。
基本的に宿泊中は、例え夜中でも大浴場は自由に入れるので、そこを使ってくれということだろう。
さすがに源泉かけ流しではないようだが、温泉とのこと。
愛原「うん。窓からは、山とかよく見えるな……」
リサ「わーっ!」
リサはガバッとベッドにダイブした。
スカートが捲れて、スカートの下に穿いている紺色のブルマが丸見えになっている。
愛原「こらこら。制服がシワになっちゃうぞ」
リサ「エヘヘ……。これからどうする!?ね、どうする!?」
リサが鼻息荒くして私に迫って来た。
愛原「落ち着け。せっかくだから、温泉を楽しもうじゃないか。部屋から、バスタオルとフェイスタオルを持って行けばいいんだったな」
リサ「浴衣は着ないの?」
愛原「それは寝る時だよ。まあ、寝る前にも一っ風呂浴びるつもりでいるから、その時に着替えればいいんじゃないかな?」
リサ「なるほど。……あ、その前にちょっとトイレ」
愛原「あいよ」
リサはトイレに行った。
室内には館内での注意事項などが書かれた冊子が置かれていた。
そして、ライティングデスクの上には電話機が置かれている。
ただ……洋風の黒電話的な見た目だが、外線繋がるんだろうか?
冊子を見ると、どうも内線専用らしい。
外線が繋がる電話はどこにあるのだろうか?
私は受話器を取ると、フロントのダイヤルを回した。
執事「はい。フロントでございます」
愛原「ああ、愛原ですが……」
執事「愛原様。何かございましたか?」
愛原「外線電話を使いたいのですが、館内にありますか?」
執事「それでしたら、ロビーに公衆電話がございますが」
愛原「ロビーか……」
共用部にある電話で、秘密の報告ができるだろうか?
まあ……ここに到着したという連絡だけならOKかな。
温泉に入る前に善場係長に電話しておこう。
改めてスマホを見たが、やはり圏外であった。
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