[9月12日15:00.天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷]
稲生:「……だ、だからね、緊急事態宣言も延長が決まったことだし、それが解除されるまでは控えた方がいいって。……いや、僕は大丈夫だから。それじゃ僕、仕事に戻らないと。それじゃ」
稲生は屋敷東側2階にある自分の部屋にいた。
そこで自分のスマホで電話していたのである。
と、今度は机の上の古めかしい西洋アンティーク風の固定電話が鳴った。
日本の黒電話を西洋アンティークにしたものと言えば分かるかな。
なので、けたたましいジリジリベルが鳴る。
稲生:「おっと!」
いきなりジリジリ鳴られるとビックリする。
だから電話機の中には、チリンと1回鳴ってからジリジリ鳴る機種もあったらしい。
この電話機は内線専用である。
なので掛かって来る相手は、イリーナかマリアと相場が決まっている。
稲生:「はい、もしもし?」
イリーナ:「勇太君、実家からの電話は終わったかい?」
稲生:「あ、はい。先ほど……」
イリーナ:「マリア達がそろそろプールから上がって来るから、お茶の準備でもしてあげな」
稲生:「わ、分かりました。先生の分はどうされますか?」
イリーナ:「アタシゃ、まだまだお昼寝の時間中。そいじゃ」
それで電話が切れた。
稲生:「相変わらずな先生だ」
稲生はそう呟いて受話器を置いた。
置く時にまたベルがチリンと鳴る。
稲生は部屋を出た。
外の天気が悪いせいか、窓から差し込む光も薄暗い。
まだ15時だというのに、もう夕暮れかと思うほどの暗さだ。
照明は点いているが、これとてそんなに明るくなるものでもない。
ホラーゲームや映画に出て来る洋館のような雰囲気であるが、いい加減稲生は慣れてしまった。
即死トラップも仕掛けられてはいるが、すっかり関係者の稲生には作動しないし、警備を司る人形達も稲生には何もしてこない。
吹き抜けのエントランスホールに出る。
“バイオハザードシリーズ”では、こういったホールは敵が出て来ない安全地帯として設定されることが多かったが、最近のシリーズではそれは最初だけで、ストーリーが進むとそうでもないことが多くなっている。
赤絨毯の敷かれている階段を下りて、1階西側の大食堂に入る。
既にメイド人形達がお茶の用意をして待っていた。
エレーナ:「日本の夏は9月になっても暑いからな、マリアンナのところでプールに入るのは気持ちいいぜ」
リリアンヌ:「フヒヒヒ……。マリアンナ先輩、ありがとうございます……」
アンナ:「サバトの代わりにもなるしねぇ」
エレーナ:「おっ、稲生氏。今度はオマエも一緒に入ろうな!」
稲生:「えぇっ!?」
リリアンヌ:「フヒッ!?せ、センパイ、サバトですよ!?」
エレーナ:「それがどうした?」
アンナ:「た、確かにサバトは本来、男女別に別れる必要は無いんだけど……」
マリア:「お前ら!勝手に勇太を誘うな!」
最後にマリアが戻って来た。
稲生:「サバトの代わりって言うから、また裸で泳いだの?」
マリア:「エレーナがうるさいんだ」
エレーナ:「おっ、オマエもノリノリだっただろうが。稲生氏、マリアンナはブラとショーツ、どっちから脱いだと思う?」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「くぉらっ!」
稲生:「まあまあ。お茶にしよう。僕はまだインターン(見習い)だから、サバトへの参加資格はどうせ無いし……」
エレーナ:「そんなの解釈の仕方によるぜ」
稲生:「どういうこと?」
エレーナ:「『参加』の資格が無いだけだろ?でも、『見学』ならOKなんじゃね?」
アンナ:「確かに、私も見習いの時は『見学』させられたね」
マリア:「それはアナスタシア組の方針だろ?イリーナ組では、『見学』もNG」
エレーナ:「固ェこと言うなよ。あの先生のことだから、面と向かって頼めば、きっとOKしてくれるぜ」
マリア:「勇太に私以外の女の裸、見せられるか。特にアンナ!」
アンナ:「な、なに?」
マリア:「日本人は基本的に体にタトゥーは入れない。オマエの背中のタトゥはアウトだ!」
エレーナ:「魔力の関係で入れてる奴もいるんだからよ、固ェこと言うなよ」
リリアンヌ:「せ、先輩はお尻に入れてますね?」
エレーナ:「おう。ちょうどショーツの中に隠れるぜ。私はTバック穿けねーぜ」
アンナ:「別にいいんじゃないの?」
エレーナ:「いや。稲生氏の好みのパンティーはフルバックが尻に食い込むパターンだぜ?最初から食い込むTバックはNGだぜ。なぁ、稲生氏?」
稲生:「何で知ってるんだ!?」
マリア:「あー、もういいから!お茶飲んだらさっさと帰れ!」
それから小一時間後……。
イリーナ:「本当に賑やかなコ達だねぇ。おかげで目が覚めちまったよ」
大食堂にやってきて、お茶を啜るイリーナ。
この時点で3人の魔女達は引き上げていた。
稲生:「も、申し訳ありません」
マリア:「勇太が謝ることないよ。デリカシーの無い奴らばっかりなんだ」
イリーナ:「まあ、魔女にデリカシーもヘッタクレも無いんだけどね」
稲生:「サバトとか、スカイクラッドとか一体何なんですか?」
イリーナ:「そうねぇ……。よし、それは明日レクチャーしてあげる。ラテン語の授業も、いい加減眠くなるでしょ?」
マリア:「教えられる方はそうですが、教える方も寝ないでください」
イリーナ:「ゴメンゴメン。それより、さっきの電話は何だったの?」
稲生:「あー、実家からです。両親がマリアさんの屋敷に興味を持って、是非訪れたいって言うんですよ」
マリア:「ええっ!?」
イリーナ:「まあ……」
稲生:「ここに来るだけでも大変なのに、来たら来たで映画並みのホラーですからね。正直、あまりここに来て欲しくないんですが……」
イリーナ:「まあ、確かに部外者は歓迎できないけど……」
稲生:「ですよね!?ですよね!?やっぱり断っておきます」
マリア:「そもそも勇太の御両親は普通の人間です。普通の人間が、新型ウィルスが蔓延している中、長距離移動するのは危険かと」
稲生:「幸い緊急事態宣言も延長されましたし、それを口実に断っておきますよ」
イリーナ:「まあ、待ちなさい待ちなさい」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「確かに緊急事態宣言中は論外だと思う。だから、その期間中は断っておきなさい。だけど、それが明けたら『前向きに善処する』と言っておきなさい」
稲生:「い、いいんですか?」
マリア:「いいんじゃない?日本の国会議員にとって、そのセリフは何もやらないことへの言い訳なんでしょ?」
イリーナ:「マリア。私は国会議員じゃないのよ?」
マリア:「しかし……」
稲生:「先生の御真意は?」
イリーナ:「勇太君という逸材を提供してくれた恩はある。だから、むげに断るのもどうかとは思う。少し考えさせてくれない?シンキングタイムは、緊急事態宣言中で」
稲生:「わ、分かりました。失礼します」
勇太は大食堂を出て行った。
マリア:「師匠。勇太の両親は、この屋敷を訪問したいそうです。他の理由なら、長野や松本のホテルで合流して終わりにすることはできますが……」
イリーナ:「分かってる。さて、どうしましょうかね……」
イリーナはスッと立ち上がった。
マリアもつられて立ち上がる。
イリーナ:「寝ながら考えることにするわw」
次の瞬間、マリアは大きくズッコケた。
稲生:「……だ、だからね、緊急事態宣言も延長が決まったことだし、それが解除されるまでは控えた方がいいって。……いや、僕は大丈夫だから。それじゃ僕、仕事に戻らないと。それじゃ」
稲生は屋敷東側2階にある自分の部屋にいた。
そこで自分のスマホで電話していたのである。
と、今度は机の上の古めかしい西洋アンティーク風の固定電話が鳴った。
日本の黒電話を西洋アンティークにしたものと言えば分かるかな。
なので、けたたましいジリジリベルが鳴る。
稲生:「おっと!」
いきなりジリジリ鳴られるとビックリする。
だから電話機の中には、チリンと1回鳴ってからジリジリ鳴る機種もあったらしい。
この電話機は内線専用である。
なので掛かって来る相手は、イリーナかマリアと相場が決まっている。
稲生:「はい、もしもし?」
イリーナ:「勇太君、実家からの電話は終わったかい?」
稲生:「あ、はい。先ほど……」
イリーナ:「マリア達がそろそろプールから上がって来るから、お茶の準備でもしてあげな」
稲生:「わ、分かりました。先生の分はどうされますか?」
イリーナ:「アタシゃ、まだまだお昼寝の時間中。そいじゃ」
それで電話が切れた。
稲生:「相変わらずな先生だ」
稲生はそう呟いて受話器を置いた。
置く時にまたベルがチリンと鳴る。
稲生は部屋を出た。
外の天気が悪いせいか、窓から差し込む光も薄暗い。
まだ15時だというのに、もう夕暮れかと思うほどの暗さだ。
照明は点いているが、これとてそんなに明るくなるものでもない。
ホラーゲームや映画に出て来る洋館のような雰囲気であるが、いい加減稲生は慣れてしまった。
即死トラップも仕掛けられてはいるが、すっかり関係者の稲生には作動しないし、警備を司る人形達も稲生には何もしてこない。
吹き抜けのエントランスホールに出る。
“バイオハザードシリーズ”では、こういったホールは敵が出て来ない安全地帯として設定されることが多かったが、最近のシリーズではそれは最初だけで、ストーリーが進むとそうでもないことが多くなっている。
赤絨毯の敷かれている階段を下りて、1階西側の大食堂に入る。
既にメイド人形達がお茶の用意をして待っていた。
エレーナ:「日本の夏は9月になっても暑いからな、マリアンナのところでプールに入るのは気持ちいいぜ」
リリアンヌ:「フヒヒヒ……。マリアンナ先輩、ありがとうございます……」
アンナ:「サバトの代わりにもなるしねぇ」
エレーナ:「おっ、稲生氏。今度はオマエも一緒に入ろうな!」
稲生:「えぇっ!?」
リリアンヌ:「フヒッ!?せ、センパイ、サバトですよ!?」
エレーナ:「それがどうした?」
アンナ:「た、確かにサバトは本来、男女別に別れる必要は無いんだけど……」
マリア:「お前ら!勝手に勇太を誘うな!」
最後にマリアが戻って来た。
稲生:「サバトの代わりって言うから、また裸で泳いだの?」
マリア:「エレーナがうるさいんだ」
エレーナ:「おっ、オマエもノリノリだっただろうが。稲生氏、マリアンナはブラとショーツ、どっちから脱いだと思う?」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「くぉらっ!」
稲生:「まあまあ。お茶にしよう。僕はまだインターン(見習い)だから、サバトへの参加資格はどうせ無いし……」
エレーナ:「そんなの解釈の仕方によるぜ」
稲生:「どういうこと?」
エレーナ:「『参加』の資格が無いだけだろ?でも、『見学』ならOKなんじゃね?」
アンナ:「確かに、私も見習いの時は『見学』させられたね」
マリア:「それはアナスタシア組の方針だろ?イリーナ組では、『見学』もNG」
エレーナ:「固ェこと言うなよ。あの先生のことだから、面と向かって頼めば、きっとOKしてくれるぜ」
マリア:「勇太に私以外の女の裸、見せられるか。特にアンナ!」
アンナ:「な、なに?」
マリア:「日本人は基本的に体にタトゥーは入れない。オマエの背中のタトゥはアウトだ!」
エレーナ:「魔力の関係で入れてる奴もいるんだからよ、固ェこと言うなよ」
リリアンヌ:「せ、先輩はお尻に入れてますね?」
エレーナ:「おう。ちょうどショーツの中に隠れるぜ。私はTバック穿けねーぜ」
アンナ:「別にいいんじゃないの?」
エレーナ:「いや。稲生氏の好みのパンティーはフルバックが尻に食い込むパターンだぜ?最初から食い込むTバックはNGだぜ。なぁ、稲生氏?」
稲生:「何で知ってるんだ!?」
マリア:「あー、もういいから!お茶飲んだらさっさと帰れ!」
それから小一時間後……。
イリーナ:「本当に賑やかなコ達だねぇ。おかげで目が覚めちまったよ」
大食堂にやってきて、お茶を啜るイリーナ。
この時点で3人の魔女達は引き上げていた。
稲生:「も、申し訳ありません」
マリア:「勇太が謝ることないよ。デリカシーの無い奴らばっかりなんだ」
イリーナ:「まあ、魔女にデリカシーもヘッタクレも無いんだけどね」
稲生:「サバトとか、スカイクラッドとか一体何なんですか?」
イリーナ:「そうねぇ……。よし、それは明日レクチャーしてあげる。ラテン語の授業も、いい加減眠くなるでしょ?」
マリア:「教えられる方はそうですが、教える方も寝ないでください」
イリーナ:「ゴメンゴメン。それより、さっきの電話は何だったの?」
稲生:「あー、実家からです。両親がマリアさんの屋敷に興味を持って、是非訪れたいって言うんですよ」
マリア:「ええっ!?」
イリーナ:「まあ……」
稲生:「ここに来るだけでも大変なのに、来たら来たで映画並みのホラーですからね。正直、あまりここに来て欲しくないんですが……」
イリーナ:「まあ、確かに部外者は歓迎できないけど……」
稲生:「ですよね!?ですよね!?やっぱり断っておきます」
マリア:「そもそも勇太の御両親は普通の人間です。普通の人間が、新型ウィルスが蔓延している中、長距離移動するのは危険かと」
稲生:「幸い緊急事態宣言も延長されましたし、それを口実に断っておきますよ」
イリーナ:「まあ、待ちなさい待ちなさい」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「確かに緊急事態宣言中は論外だと思う。だから、その期間中は断っておきなさい。だけど、それが明けたら『前向きに善処する』と言っておきなさい」
稲生:「い、いいんですか?」
マリア:「いいんじゃない?日本の国会議員にとって、そのセリフは何もやらないことへの言い訳なんでしょ?」
イリーナ:「マリア。私は国会議員じゃないのよ?」
マリア:「しかし……」
稲生:「先生の御真意は?」
イリーナ:「勇太君という逸材を提供してくれた恩はある。だから、むげに断るのもどうかとは思う。少し考えさせてくれない?シンキングタイムは、緊急事態宣言中で」
稲生:「わ、分かりました。失礼します」
勇太は大食堂を出て行った。
マリア:「師匠。勇太の両親は、この屋敷を訪問したいそうです。他の理由なら、長野や松本のホテルで合流して終わりにすることはできますが……」
イリーナ:「分かってる。さて、どうしましょうかね……」
イリーナはスッと立ち上がった。
マリアもつられて立ち上がる。
イリーナ:「寝ながら考えることにするわw」
次の瞬間、マリアは大きくズッコケた。
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