報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「人と鬼の鉄旅」

2025-01-19 20:26:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日13時31分 天候:晴 群馬県高崎市八島町 JR高崎線3003M列車・5号車内→JR高崎駅]

 上野駅からモノクラス編成の特急列車に揺られること、1時間20分ほど。
 乗換駅である高崎駅に接近した。

〔♪♪♪♪。まもなく、高崎です。上越新幹線、北陸新幹線、信越本線、八高線、両毛線と、上信電鉄上信線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。高崎の次は、新前橋に止まります〕

 まるで新幹線のような言い回しの自動放送が流れるが、声優もJR東日本の新幹線で流れる放送と同じだ。
 そういえば、男性声優の自動放送って珍しい気がする。

〔「まもなく高崎、高崎です。2番線に到着致します。お出口は、右側です。高崎でお降りのお客様、お支度をしてお待ちください。高崎からの、お乗り換えを御案内致します。【中略】上越線下り、吾妻線直通普通列車の万座・鹿沢口行きは、13時55分、6番線です。……」〕

 愛原「それじゃ、ここで乗り換えだ」
 リサ「はーい」

 リサは席を立つと、網棚に置いたバッグを下ろした。
 草津温泉や四万温泉に向かう利用者をターゲットにした特急列車であるが、私達と同様、高崎駅で降りる乗客もそこそこいるらしい。
 そして列車がホームに停車し、ドアが開いた。

〔「ご乗車ありがとうございました。高崎、高崎です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。2番線の電車は、13時33分発、特急“草津・四万”3号、長野原草津口行きです。次は、新前橋に止まります。……」〕

 案外、高崎からも乗車がそれなりにあるようだ。
 もしかすると、新幹線からの乗換客かもしれない。
 高崎駅は上越新幹線と北陸新幹線の分岐駅でもあるので、そっち方面からの乗換客とか。

 

 愛原「それじゃ、乗り換えるか」

 群馬県も暑い。
 冷房の効いた車内から降りると、6番線に向かう為、エスカレーターに乗った。
 晴れているとはいえ、都内にいた時と比べて、雲は多くなったような気がする。
 もしかすると、天気は下り坂なのかもしれない。

[同日13時55分 天候:晴 同駅→JR上越線533M列車・最後尾車内]

 吾妻線に直通する普通列車に乗り換える。
 車両は211系3000番台の4両編成。

 

 何の変哲も無いロングシート仕様車である。

〔「ご案内致します。この電車は13時55分発、上越線、吾妻線普通列車、万座・鹿沢口行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 ロングシートに2人並んで腰かける。

 リサ「先生、これ、藤野に行く時に乗るヤツと同じ電車だよね?」
 愛原「そうだよ」

 外観の塗装は違うものの、内装は全く同じ。

 リサ「ということは、トイレは和式かぁ……」
 愛原「そうだな」

 2階建てグリーン車は洋式だったが、今はもうとっくに廃車になっている。

〔「お待たせ致しました。普通列車の万座・鹿沢口行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 4両編成でもワンマン運転を始めるようになったJR東日本だが、211系ではワンマン化できないのか、車掌が乗務している。
 ホームから発車メロディが流れる。
 八高線ではワンマン運転が行われている為、その場合は発車メロディは流れない。

〔6番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
〔「6番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 プシューッと大きなエアーの音を立てて、車両のドアが閉まる。
 同じ211系でも、JR東海の車両はドアチャイムが後付けされたが、東日本の方では無い。
 もはや、大きなドアエンジンのエアーの音がドアチャイムみたいなものだ。
 そして、高崎駅にはホームドアが無いので、車両のドアが閉まると、すぐに発車する。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は上越線、吾妻線、普通列車の万座・鹿沢口行きです。これから先、高崎問屋町、井野、新前橋、群馬総社、八木原、渋川の順に、終点の万座・鹿沢口行きまで各駅に停車致します。【中略】次は高崎問屋町、高崎問屋町です」〕

 自動放送も無く、車掌の肉声放送のみが流れる。
 平成時代初期に製造された車両だと思うが、昭和時代に戻ったかのようだ。
 それだけアナログ感がある。
 リサはバッグの中からポッキーを取り出して、ポリポリと齧り始めた。

 リサ「食べる?」
 愛原「いや、いいよ」

 さり気なくポッキーゲームを始めようとしたので、私は断った。
 ここから下車駅の群馬原町駅までは、1時間強ほどである。

[同日15時2分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町 JR吾妻線533M列車・最後尾車内→JR群馬原町駅]

 1時間ちょっとの鈍行旅ということは、途中でトイレに行きたくなることもあるということである。
 リサがそうで、使用後は何だか不機嫌そうな顔で戻って来た。
 やはり、和式トイレだったらしい。
 私も後で使ってみたが、JR化後に新造された車両とはいえ、トイレは昭和時代の国鉄車両のような構造だった。
 今時和式も珍しいし、水を流す際にペダルを踏んで流すとか、とても懐かしい。
 あと、内側に少し開く窓とか。
 リサにとっては、研究所時代の忌まわしい思い出に繋がる便器なので、それで不機嫌になってしまったか。

〔「まもなく群馬原町、群馬原町です。お出口は、左側です」〕

 四万温泉の最寄り駅である中之条駅で多くの乗客を降ろし、車内も空席が目立って来た頃、下車駅に到着する。

 

 ドアが開いて電車を降りると、車掌も降りてきて、キップの回収を始めた。
 どうやらこの駅は無人駅であるらしい。
 地方駅ならではの駅舎はあるので、昔は有人駅だったが、今は無人化されたか。
 ワンマン運転の電車だったら、先頭車の1番前のドアから降ろされるところだ。

 車掌「ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 そういえば到着する前も、車掌はよく車内を巡回していたから、乗り越し精算とかの対応もするのだろう。
 本当に昔に戻ったかのような路線だ。

 愛原「どれ、ここからタクシーに乗り換えるか」

 駅員のいない改札口を通り、冷房の効いた駅舎の中に入る。
 かつては駅員がキップの販売をしていたであろう窓口は、今は地元の観光案内所の窓口となっている。
 駅舎の外に出ると、タクシーが1台だけ客待ちをしていたので、それに乗ることにした。

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