[6月1日13時00分 天候:晴 東京都小笠原村父島東町 ハートロックカフェ→二見港船客待合所]
島寿司などを堪能した後、店を移動してカフェに入った。
そこで食後のコーヒーやデザートを楽しむ。
だが、リサの状況などを聞くに、とても味わいを楽しむどころではなかった。
その前に高橋の方はというと、検察庁に身柄を送られ、起訴されたとのこと。
高野芽衣子「日本には明確な司法取引の制度が無いですからね。まあ、『コネクション』の情報を流せば、実質的に情状酌量の余地ありと見てくれることもありますが……」
愛原公一「彼のそれまでの素行が不良じゃったから、裁判所も良い目では見てくれぬかもな……」
愛原学「俺が自費で弁護士を立てるよ!俺自身は被害届を出すつもりはないし……」
当初は医師法違反に問われた高橋だったが、私の手術の目的が『治療』ではなかったことから、それの立件は見送られた。
今では傷害罪での立件となっている。
私の頭を傷つけて、そこに異物を埋め込んだという事実に対しての罪だな。
学「高橋は『コネクション』のことについては、喋ったの?」
公一「分からん。ただ、弁護士はもう国選弁護人が付いとるよ」
学「起訴されたんだからねぇ……。あれ?親告罪じゃなかったっけ?」
公一「それは過失傷害罪じゃ。高橋君の場合は、普通の傷害罪。つまり、故意にお前に脳手術をしたから、普通の傷害罪じゃよ」
学「顕正号のバイオハザードが、マサの組織によって引き起こされたものなら、死刑もありえますかねぇ……」
公一「顕正号の乗客、2000名が化け物と化した上、海の藻屑と化した大事件じゃからなぁ……」
高野「確かに私はあの時点で“青いアンブレラ”に所属してましたけど、もちろん私達はそんなことしてませんからね。私は私で、別の組織がバイオハザードを起こすかもという情報は得てましたが……」
学「すると何だい?俺は知らず知らずに、工作員達と行動してたんかい」
高野「ま、そういうことになりますね」
学「高橋が怪しかったんなら、どうしてずっとマークしてなかったんだ?」
高野「その時は、まだマサが怪しいとは思っていなかったんです。私は私で、別の工作員が乗り込んできて、そこでバイオハザードを起こすかもという情報だったので。要は、クイーン・ゼノビアみたいな感じですね」
学「本当か?」
高野「はい。ところが気が付いたら、いつの間にか船内はゾンビだらけでしょう?あの時でもTウィルスは旧式のゾンビウィルスなのに、どうしてまた使ったんだろうと思ってましたけど……。そしたら、マサや先生とはぐれてしまって……」
公一「顕正号と姉妹船の正信号には、豪華客船ならではの設備があった。それは簡単な手術もできる、医務室じゃな。高橋君はお前をそこに連れ込み、例のチップを埋め込んだらしい。そして、あとは何食わぬ顔して、彼女と合流したというわけじゃ」
学「その間、俺は放ったからし?ゾンビ船内に?」
高野「私達が駆け付けた時、医務室周辺にはゾンビはいませんでした。マサはそれを知ってて、先生を放置したのかもしれません。あの時は、まだダクトから侵入してくる化け物とかはいませんでしたからね。しかも、医務室には鍵が掛かってましたから」
沈み行く顕正号から何も知らない高野君と、何食わぬ顔した高橋が医務室から連れ出してくれ、そして船首甲板にあるヘリポートまで行って、救助ヘリに乗せて脱出したとこのと。
公一「それで学、顕正号の記憶はどうじゃ?」
学「確かに今はそれを思い出そうとしても、頭痛とかフラッシュバックとかは無くなったけど、記憶が戻ったというわけでもないや。『あれは夢の出来事』的な感じ?」
公一「やはりチップを確認しなければダメか……」
学「チップはBSAAが持ってるんでしょ?それともデイライトかな?」
公一「いや、ここにあるぞ」
高野「はい」
高野君はさっきから持っている、A4サイズくらいのジュラルミンケースを指さした。
学「いや、何で持ってんの!?」
高野「仲間が先生を藤野から救出した時、そこにあったらしいので、ついでに持って来たと」
公一「一応、学の荷物とかあったら、それも持って来てやるよう頼んではいたのじゃが、まさかそれも持って来るとは……」
学「もしかしてBSAAとかデイライトさんとか、必死に探してる?」
公一「うむ」
高野「普通、探しますよね?」
学「俺、もしかして逮捕される?」
公一「いや、それは大丈夫じゃろう。お前は完璧な被害者なのじゃから」
高野「何でしたら、私達を悪者にしていいですよ。今の時点においても、私達に監禁されていたことにして頂いても構いません。そしたら先生は、尚更被害者ですから、先生が逮捕されることはありません」
公一「例えば、立てこもり犯が人質に見張り役とかさせることがあるじゃろう?普通なら犯人の協力者は逮捕モノじゃが、この場合、人質が逮捕されることはない。それと同じじゃ」
学「な、なるほど……」
高野「もっとも、このチップを今ここでお渡しするわけにはいきませんけどね」
公一「向こうに帰ったら、間違いなくデイライトの人間と接触するじゃろう?チップは後で必ずそちらに引き渡すとだけ伝えてくれ」
恐らく“青いアンブレラ”は“青いアンブレラ”で、独自に解析するつもりなのだろう。
そして、解析が終わったら引き渡すということなのかもしれない。
或いはコピーできるものなら、そうしてコピーの方を渡すとか?
学「リサの方は?」
公一「いやあ……高橋君よりもヒドいぞ」
学「え?」
高野「先生が襲撃されたのは昼間なんですよ。ええ、もう、白昼堂々。BSAAも、まさか白昼堂々襲って来るとは思っていなかったようですね。夜間警備の準備はしていたみたいですけど……。多分、先生の手術が終わったタイミングを見計らって襲撃する計画だったのでしょうね。で、リサちゃんは学校でした。学校にもテレビがありますから、ショックで第3形態まで変化しちゃって、こちらもBSAA案件です」
学「……マジ?」
高野「はい」
学「……被害は?」
高野「最初はショックでトイレで吐いていたらしいので、そこからの変化ですから、トイレの損壊と、屋上で暴れたので屋上の損壊ですね」
学「……退学か……」
高野「いえ、停学です」
学「停学で済んだの!?」
高野「幸い人的被害は出てないのと、修理代はBSAAとデイライトで出したそうです」
学「マジか……。だ、第3形態まで変化って、射殺?」
高野「私達も何とか協力しまして、何とか眠らせることに成功しました。今は第1形態くらいに戻ってると思いますよ」
学「そ、そうか……」
私は心底ホッとした。
高野「ただ、中間テストが受けられないので、もしかしたら留年かもしれませんね」
学「留年かぁ……」
高野「あ、でも期末テストじゃないから、大丈夫かな……」
学「そ、そうなの?」
高野「先生の交渉次第で、追試受けるとかすれば何とかなるかもしれませんね」
学「こうしゃ居られない!早く帰ろう!」
公一「はっはっは!慌てんでも、出航が早まるわけではないぞ。15時出航じゃ」
学「リサは今どこに?」
高野「さすがに家にいるわけにはいかないので、どこかの施設に収容されてるんじゃないでしょうか?藤野は……多分ムリでしょうねぇ……。多分、他に施設を持っているでしょうから……」
学「と、善場係長に電話を!」
公一「お前、スマホのバッテリー切れとるんじゃないのかい?」
学「公衆電話は!?」
公一「この近くにあるじゃろうが、電話番号知っとるのか?」
学「う……!全部、スマホの中だ……」
公一「幸い船の中にも公衆電話はある。船内である程度充電して、それから電話すればいいんじゃないのかね?」
学「そのままスマホで電話するよ」
高野「それはムリですよ」
学「何で?」
高野「島を出て外洋に出てしまうと、電波が届かないんです。なのでケータイは軒並み圏外、船内はWiFiの設備もありません」
学「つまり、船内では公衆電話しか連絡手段が無いのじゃよ」
もしかして、彼らが私を小笠原諸島に連れて来たのは、それが目的か?
連絡の取りようが無いのなら、BSAAもデイライトも私を探し出せないはずだ。
GPSで追おうにも、それは私のスマホのGPSだから使えない。
島寿司などを堪能した後、店を移動してカフェに入った。
そこで食後のコーヒーやデザートを楽しむ。
だが、リサの状況などを聞くに、とても味わいを楽しむどころではなかった。
その前に高橋の方はというと、検察庁に身柄を送られ、起訴されたとのこと。
高野芽衣子「日本には明確な司法取引の制度が無いですからね。まあ、『コネクション』の情報を流せば、実質的に情状酌量の余地ありと見てくれることもありますが……」
愛原公一「彼のそれまでの素行が不良じゃったから、裁判所も良い目では見てくれぬかもな……」
愛原学「俺が自費で弁護士を立てるよ!俺自身は被害届を出すつもりはないし……」
当初は医師法違反に問われた高橋だったが、私の手術の目的が『治療』ではなかったことから、それの立件は見送られた。
今では傷害罪での立件となっている。
私の頭を傷つけて、そこに異物を埋め込んだという事実に対しての罪だな。
学「高橋は『コネクション』のことについては、喋ったの?」
公一「分からん。ただ、弁護士はもう国選弁護人が付いとるよ」
学「起訴されたんだからねぇ……。あれ?親告罪じゃなかったっけ?」
公一「それは過失傷害罪じゃ。高橋君の場合は、普通の傷害罪。つまり、故意にお前に脳手術をしたから、普通の傷害罪じゃよ」
学「顕正号のバイオハザードが、マサの組織によって引き起こされたものなら、死刑もありえますかねぇ……」
公一「顕正号の乗客、2000名が化け物と化した上、海の藻屑と化した大事件じゃからなぁ……」
高野「確かに私はあの時点で“青いアンブレラ”に所属してましたけど、もちろん私達はそんなことしてませんからね。私は私で、別の組織がバイオハザードを起こすかもという情報は得てましたが……」
学「すると何だい?俺は知らず知らずに、工作員達と行動してたんかい」
高野「ま、そういうことになりますね」
学「高橋が怪しかったんなら、どうしてずっとマークしてなかったんだ?」
高野「その時は、まだマサが怪しいとは思っていなかったんです。私は私で、別の工作員が乗り込んできて、そこでバイオハザードを起こすかもという情報だったので。要は、クイーン・ゼノビアみたいな感じですね」
学「本当か?」
高野「はい。ところが気が付いたら、いつの間にか船内はゾンビだらけでしょう?あの時でもTウィルスは旧式のゾンビウィルスなのに、どうしてまた使ったんだろうと思ってましたけど……。そしたら、マサや先生とはぐれてしまって……」
公一「顕正号と姉妹船の正信号には、豪華客船ならではの設備があった。それは簡単な手術もできる、医務室じゃな。高橋君はお前をそこに連れ込み、例のチップを埋め込んだらしい。そして、あとは何食わぬ顔して、彼女と合流したというわけじゃ」
学「その間、俺は放ったからし?ゾンビ船内に?」
高野「私達が駆け付けた時、医務室周辺にはゾンビはいませんでした。マサはそれを知ってて、先生を放置したのかもしれません。あの時は、まだダクトから侵入してくる化け物とかはいませんでしたからね。しかも、医務室には鍵が掛かってましたから」
沈み行く顕正号から何も知らない高野君と、何食わぬ顔した高橋が医務室から連れ出してくれ、そして船首甲板にあるヘリポートまで行って、救助ヘリに乗せて脱出したとこのと。
公一「それで学、顕正号の記憶はどうじゃ?」
学「確かに今はそれを思い出そうとしても、頭痛とかフラッシュバックとかは無くなったけど、記憶が戻ったというわけでもないや。『あれは夢の出来事』的な感じ?」
公一「やはりチップを確認しなければダメか……」
学「チップはBSAAが持ってるんでしょ?それともデイライトかな?」
公一「いや、ここにあるぞ」
高野「はい」
高野君はさっきから持っている、A4サイズくらいのジュラルミンケースを指さした。
学「いや、何で持ってんの!?」
高野「仲間が先生を藤野から救出した時、そこにあったらしいので、ついでに持って来たと」
公一「一応、学の荷物とかあったら、それも持って来てやるよう頼んではいたのじゃが、まさかそれも持って来るとは……」
学「もしかしてBSAAとかデイライトさんとか、必死に探してる?」
公一「うむ」
高野「普通、探しますよね?」
学「俺、もしかして逮捕される?」
公一「いや、それは大丈夫じゃろう。お前は完璧な被害者なのじゃから」
高野「何でしたら、私達を悪者にしていいですよ。今の時点においても、私達に監禁されていたことにして頂いても構いません。そしたら先生は、尚更被害者ですから、先生が逮捕されることはありません」
公一「例えば、立てこもり犯が人質に見張り役とかさせることがあるじゃろう?普通なら犯人の協力者は逮捕モノじゃが、この場合、人質が逮捕されることはない。それと同じじゃ」
学「な、なるほど……」
高野「もっとも、このチップを今ここでお渡しするわけにはいきませんけどね」
公一「向こうに帰ったら、間違いなくデイライトの人間と接触するじゃろう?チップは後で必ずそちらに引き渡すとだけ伝えてくれ」
恐らく“青いアンブレラ”は“青いアンブレラ”で、独自に解析するつもりなのだろう。
そして、解析が終わったら引き渡すということなのかもしれない。
或いはコピーできるものなら、そうしてコピーの方を渡すとか?
学「リサの方は?」
公一「いやあ……高橋君よりもヒドいぞ」
学「え?」
高野「先生が襲撃されたのは昼間なんですよ。ええ、もう、白昼堂々。BSAAも、まさか白昼堂々襲って来るとは思っていなかったようですね。夜間警備の準備はしていたみたいですけど……。多分、先生の手術が終わったタイミングを見計らって襲撃する計画だったのでしょうね。で、リサちゃんは学校でした。学校にもテレビがありますから、ショックで第3形態まで変化しちゃって、こちらもBSAA案件です」
学「……マジ?」
高野「はい」
学「……被害は?」
高野「最初はショックでトイレで吐いていたらしいので、そこからの変化ですから、トイレの損壊と、屋上で暴れたので屋上の損壊ですね」
学「……退学か……」
高野「いえ、停学です」
学「停学で済んだの!?」
高野「幸い人的被害は出てないのと、修理代はBSAAとデイライトで出したそうです」
学「マジか……。だ、第3形態まで変化って、射殺?」
高野「私達も何とか協力しまして、何とか眠らせることに成功しました。今は第1形態くらいに戻ってると思いますよ」
学「そ、そうか……」
私は心底ホッとした。
高野「ただ、中間テストが受けられないので、もしかしたら留年かもしれませんね」
学「留年かぁ……」
高野「あ、でも期末テストじゃないから、大丈夫かな……」
学「そ、そうなの?」
高野「先生の交渉次第で、追試受けるとかすれば何とかなるかもしれませんね」
学「こうしゃ居られない!早く帰ろう!」
公一「はっはっは!慌てんでも、出航が早まるわけではないぞ。15時出航じゃ」
学「リサは今どこに?」
高野「さすがに家にいるわけにはいかないので、どこかの施設に収容されてるんじゃないでしょうか?藤野は……多分ムリでしょうねぇ……。多分、他に施設を持っているでしょうから……」
学「と、善場係長に電話を!」
公一「お前、スマホのバッテリー切れとるんじゃないのかい?」
学「公衆電話は!?」
公一「この近くにあるじゃろうが、電話番号知っとるのか?」
学「う……!全部、スマホの中だ……」
公一「幸い船の中にも公衆電話はある。船内である程度充電して、それから電話すればいいんじゃないのかね?」
学「そのままスマホで電話するよ」
高野「それはムリですよ」
学「何で?」
高野「島を出て外洋に出てしまうと、電波が届かないんです。なのでケータイは軒並み圏外、船内はWiFiの設備もありません」
学「つまり、船内では公衆電話しか連絡手段が無いのじゃよ」
もしかして、彼らが私を小笠原諸島に連れて来たのは、それが目的か?
連絡の取りようが無いのなら、BSAAもデイライトも私を探し出せないはずだ。
GPSで追おうにも、それは私のスマホのGPSだから使えない。
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