報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「小笠原諸島・父島(西町・東町)」

2024-10-20 20:41:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月1日11時41分 天候:晴 東京都小笠原村父島東町 小笠原村営バス車内→小笠原二見港船客待合所]

 

 小笠原諸島の本島たる父島には、唯一の公共交通機関として村営バスが運行されている。
 いくらここも東京都内とはいえ、東京都交通局が都営バスを走らせているわけではないようだ。
 車種は全国的にもコミュニティバスとしてよく活用されているタイプの小型ノンステップバス。
 確か東京中央学園でも、スクールバスとして使用されているタイプではなかったか。
 寮住まいでないと利用する機会が無いので、私もリサも乗ったことはないが。
 通常運賃は大人200円の前払い定額制で、財布を持っていなかった私は、公一伯父さんにバス代を出してもらった。
 そして1番後ろの席に3人並んで座り、バスが島の中心部に向かうまでの間、車内で伯父さん達が色々話してくれた。
 どうしてブルーアンブレラ号は、小笠原諸島に向かったのか。
 元々は、母島に医療ボランティアに向かうという名目だったらしい。
 あくまでも名目はそこであって、実態はBSAAからもデイライトからも目を誤魔化せるということだったらしい。
 沖縄ではBSAAも駐留している米軍基地があるし、かといって外国へは逃げられない。
 そこで小笠原となったらしい。
 私の財布もスマホも荷物の中に入っている為、まずはそれを取りに行く必要がある。

 運転手「船客待合所です」

 バスはターミナル最寄りのバス停に到着した。
 ここで降りる乗客は多い。
 やはり皆、ターミナルの方に向かって行く。

 愛原学「俺も船に乗るんだよね?チケットとかは?」
 愛原公一「心配するでない。ちゃんと後で渡す」

 ターミナルの中に入り、そこにある観光案内所に向かう。
 島内にコインロッカーは無いものの、観光案内所で荷物の一時預かりはしてくれるという。
 伯父さんが何か引換証みたいなものを持って、それで荷物を受け取った。
 見覚えのあるキャリーケースだった。

 公一「ほれ、これがお前さんのじゃろう?」
 学「確かに……。本当に無事だったんだ……」
 公一「一応、中身を確認するのじゃ」
 学「うん」

 私は待合所の長椅子の所に移動し、そこでケースの中を開けた。
 中身も見覚えのある物ばかりで、特に無くなっていたりするようなものは無さそうだ。
 そして、そこにはスマホと財布が入っていた。
 ここはスマホが使えるのだろうか?

 愛原「うっ!」

 まあ、何週間も放ったからしにすれば当然か。
 バッテリーは0になっていた。
 どこかで充電したいところだが……。

 公一「諦めて、船内で充電するんじゃな。充電コードは持っているのじゃろう?」
 学「う、うん。それはあるけど……。船内でできるんだ」
 公一「そりゃできるじゃろう。客が使えるコンセントくらい、サービスで設置されているものぢゃ」
 学「あー、まあ、八丈島に行く船にもあったかな……。でもあれは個室だったからなぁ……」
 公一「心配するでない。今度お前が乗る船室も個室じゃよ」
 学「え?!」

 つい最下級の雑魚寝かと思っていた私だったが、伯父さんからは意外な発言を聞けた。
 それとも、最下級であっても個室だったりするのか?

 公一「それならコンセントくらい、あって当然じゃろう?」
 学「ちょっと待って!そんな高い席……」
 高野「落ち着いて、先生。別に私達の、先生に対するサービス精神ってだけでそこまでしてるわけじゃないですから」
 学「えっ?それはどういう……?」
 公一「安全の為に、個室にしてやったまでじゃ。お前、藤野でコネクションの連中に襲われたという話は聞いたじゃろう?」
 学「う、うん。……って、それって……」
 公一「お前を狙って襲ってきたと見るのが自然じゃ。当初は、お前の頭に埋め込まれていたチップの奪還が目的じゃったと思われていたのじゃが……」
 高野「それだけじゃないみたいですよ。先生はバイオテロ関係でも『面白い人』ですから、捕まえて色々調べてみたいようです」
 学「いや、ちょっとそれは困るよ……」
 高野「なので、少しでも安全の為に、鍵付きの個室の方がいいと思いまして」
 学「そういうことなら……」
 公一「よし。分かったら、次は腹ごしらえじゃ。小笠原と言えば島寿司ぢゃ。ワシが餞別に奢ってやる」
 学「それはどうも……」
 高野「その前に先生。先生は先生で、持ち前は大丈夫ですか?」
 学「あー……ちょっと不安だな……。コンビニある?」
 公一「そんな便利な物、離島にあるわけなかろう。郵便局のゆうちょ銀行でどうじゃ?」
 学「それなら大丈夫だね」
 高野「この建物の中にATMがありますよ」
 学「うん。船の中でもいくらか金がいるだろうし、少し下ろしておくよ」

 私はATMで、諭吉先生をいくらか引き落とした。

 公一「船は15時出航。そして、向こうに着くのは24時間後の15時じゃ。その間、今日の夕食、明日の朝食、昼食と3食必要じゃが、それは別料金じゃからな。持ち合わせはあった方が良い」
 学「確かに……」

 待合所のすぐ近くにはあまり飲食店が無い為、徒歩で更に村役場の方面に向かった。
 もっとも、次のバス停や更にその次のバス停くらいまでの距離なのだが。

[同日12時00分 天候:晴 同村父島西町 島寿司]

 私達は島の中心部内にある寿司店に入った。
 そこで久しぶりの寿司とビールに舌鼓を打った。

 高野「先生、リサちゃんと一緒だと、なかなか魚を食べる機会が無いから、良かったですね」
 学「あー、確かにな」

 リサは肉が大好きだが、反面あまり魚は好きじゃない。

 公一「向こうに戻ったら、また食えんじゃろうから、一人旅のうちに堪能しておくことじゃな」
 学「その方がいいかもね」

 私は頷いた。

 学「ところで……リサの状態って、大丈夫なの?」
 公一「あー……それは……」
 高野「聞きます?」
 公一「まずはここで、寿司とビールを堪能してからの方が良いかもな」
 学「そ、そんなに……!?」

 まさか、暴走したというのではあるまいな!?

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