[1月7日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]
アリス:「あんまり無理しちゃダメよ?あなたは、じー様の形見なんだから」
シンディ:「はい」
シンディのバッテリー交換をするアリス。
エミリー大損傷という情報にショックを受けたシンディは、バッテリー1つを焼いてしまった。
アリス:「エミリーは……ちょっと分からないね。後期型ボディは、あの平賀教授が造ったわけだから、あんまり期待はできないかも……」
シンディ:「そんな……!」
アリス:「前期型のエミリーは南里博士が造ったからいいけどね」
シンディ:「南里博士の……設計図通りに作ったと聞いていますが……」
アリス:「どうだかねぇ……」
[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]
平賀:「何だろう?どこかで自分の悪口言われてるような……?」
ザックザックと雪山を掘る敷島。
その後ろを付いて行く平賀。
平賀:「敷島さん、もうやめましょうよ!不毛ですって!」
敷島:「エミリー!いたら返事してくれー!!」
平賀:「いや、だから!シャットダウンされてるから無理ですって!」
ズズズ……。
平賀:「!?」
何か変な音がした。
雪の音だろう。
平賀:(何だろう?)
尚、雪崩でホテルの入口が塞がれてしまったが、そこはまた敷島が掘って出口は確保していた。
敷島はそこから分岐して、エミリーがいたと思われる箇所まで掘り進めているのである。
平賀:「敷島さん、陸上自衛隊員も真っ青の行軍ぶりですよ?」
敷島:「こう見えても私は、『不死身の敷島』ですから」
平賀:「これが週刊少年ジャンプの漫画だったら、今頃あなたの戦闘力数値はインフレを起こしているところでしょうね」
敷島:「それは平賀先生、あなたも同じですよ」
平賀:「そんなことは……」
ドドドド……!
平賀:「!?」
また何か音がした。
平賀:「敷島さん、やっぱりその……引き返しましょう。何かおかしいですよ」
敷島:「あとちょっと……あとちょっとなんです。あとちょっとで、エミリーがいた所……」
平賀:「あれ、ここ電波入る。……ってか、ナツから着信か。……どうした?……ああ、エミリーな。ちょっと事故があって、そっちで受信できないだろう?……いや、だから、雪が融けるまで待って……。ん?雪が融けるまで!?」
その時、平賀は思い出した。
今日は昨夜の大雪が嘘みたいにカラッと晴れている。
太陽光に雪が反射して、それはもう美しいほどだ。
平賀:「!……敷島さん、やっぱ危険だ!雪が融け始めてる!このままだと埋まりますよ!!」
敷島:「待ってください!もうちょっと!」
ズドドドン!ドドーン!!と大きな鈍い音を立てて、水気を含んだ雪の壁が崩れ始める。
平賀:「やっぱり!早く逃げましょう!!」
敷島:「ま、待ちなさい!今、黒いロボットの残骸が……!」
平賀:「街中で遭難する気ですか!」
平賀は敷島を羽交い絞めにして、ホテルの入口まで逃げ出した。
と、同時にそれまで掘り進めていたトンネルが『落盤』した。
従業員:「お客様方、大丈夫ですか!?」
平賀:「はぁ、はぁ……!し、死ぬかと思った!」
敷島:「くそーっ!あとちょっとだったのに!!」
敷島はガンッとスコップを地面に叩き付けた。
と、その時だった。
ズシャァァァァァッ!と現れたロボット達。
B4-4:「オ困リノヨウデスネ?」
B4-457:「マルチタイプ8号機のアルエット御嬢様ヨリ、御下命賜リマシタ!」
B4-108:「直チニ、エミリー様ノ捜索ヲ始メマス!」
平賀:「お前らは記念館警備のバージョン達!?……え、なに?アルエットが命令しただ!?」
B4-48:「ハハッ!最上位機マルチタイプの御命令ハ絶対!」
敷島:「アルエットのヤツ、何ちゅう奴だ……!」
手持ちの火炎放射器で雪を融かし、或いはスコップでザックザックと掘り進めるバージョン4.0の集団。
平賀:「アルエットは、やる時はやりますよ。7号機のレイチェルにとどめを刺したのも、アルエットです」
敷島:「確かに……」
敷島は端末を起動した。
それを使って、アルエットと通信する。
敷島の知らせに、アルエットは驚いていた様子だった。
アルエット:「ええっ!?あれ、本当に通じてたんですか?!」
といった感じだ。
敷島:「お前の通信機器、エミリー達より精度がいいのを使ってることをすっかり忘れてたよ」
何もかもが最新基軸のアルエットとされているが、そもそもマルチタイプ自体がオーバーテクノロジーである。
敷島:「科学館も大変なことになってるだろうけど、頑張ってくれよ?」
アルエット:「わっかりましたー!私にお任せ!」
敷島:「何やってるんだ?」
アルエット:「雪かきです!バージョン400に乗って!」
敷島:「ブッ!……あ、イベント用にレストアしたヤツか……」
バージョン400はバージョン4.0を巨大化したものである。
もちろん外見がそうだというだけで、他にも色々違う所はある。
大きな違いは、まるで特撮の合体ロボのように頭部に搭乗して手動操縦できるという所である。
もちろん、他のバージョン同様に自動も可。
アルエットは通常の4.0では担ぎ上げられて、400においては自分が乗り込んで操縦するのが好きだった。
巨大ロボがガイノイドに操縦されて駆動する様は、何ともシュールである。
それから1時間後……。
B4-4:「平賀博士!エミリー様ヲ発見シマシタ!」
平賀:「何だと!?」
平賀はたまたま1階のフロントで、延泊についての話をフロントスタッフとしていた。
本来なら、もうチェックアウトの時間をとっくに過ぎている頃である。
もちろん状況が状況だけに、フロントスタッフは延泊を認めた。
それまでの宿泊客はチェックアウトしたくても今日はまず無理だし、今日の新規客も来られず、ほぼ確実にキャンセルだろう。
そんな時、バージョン4.0の初期型4号機が飛び込んで来た。
平賀:「どこだ!?」
B4-4:「今、コチラニ運ンデオリマス」
平賀:(敷島さんは……今、仮眠室か)
連泊の場合でも清掃の為、昼間はカプセルホテルの客室フロアは出ないといけない。
その為、敷島はサウナの仮眠室に移動していた。
さすがに疲れたのである。
少しして、他のバージョン達がエミリーを運んできた。
平賀:「うわ……手とか足とかはさすがにバラバラか……。でもまあ、頭部は無事か。それなら……」
B4-4:「如何致シマショウ?」
平賀:「取りあえず、中に運んでくれ。車が動けばいいんだがな……」
平賀はバージョン達に命令すると、そのまま中には入らず、煙草に火を点けたのだった。
アリス:「あんまり無理しちゃダメよ?あなたは、じー様の形見なんだから」
シンディ:「はい」
シンディのバッテリー交換をするアリス。
エミリー大損傷という情報にショックを受けたシンディは、バッテリー1つを焼いてしまった。
アリス:「エミリーは……ちょっと分からないね。後期型ボディは、あの平賀教授が造ったわけだから、あんまり期待はできないかも……」
シンディ:「そんな……!」
アリス:「前期型のエミリーは南里博士が造ったからいいけどね」
シンディ:「南里博士の……設計図通りに作ったと聞いていますが……」
アリス:「どうだかねぇ……」
[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]
平賀:「何だろう?どこかで自分の悪口言われてるような……?」
ザックザックと雪山を掘る敷島。
その後ろを付いて行く平賀。
平賀:「敷島さん、もうやめましょうよ!不毛ですって!」
敷島:「エミリー!いたら返事してくれー!!」
平賀:「いや、だから!シャットダウンされてるから無理ですって!」
ズズズ……。
平賀:「!?」
何か変な音がした。
雪の音だろう。
平賀:(何だろう?)
尚、雪崩でホテルの入口が塞がれてしまったが、そこはまた敷島が掘って出口は確保していた。
敷島はそこから分岐して、エミリーがいたと思われる箇所まで掘り進めているのである。
平賀:「敷島さん、陸上自衛隊員も真っ青の行軍ぶりですよ?」
敷島:「こう見えても私は、『不死身の敷島』ですから」
平賀:「これが週刊少年ジャンプの漫画だったら、今頃あなたの戦闘力数値はインフレを起こしているところでしょうね」
敷島:「それは平賀先生、あなたも同じですよ」
平賀:「そんなことは……」
ドドドド……!
平賀:「!?」
また何か音がした。
平賀:「敷島さん、やっぱりその……引き返しましょう。何かおかしいですよ」
敷島:「あとちょっと……あとちょっとなんです。あとちょっとで、エミリーがいた所……」
平賀:「あれ、ここ電波入る。……ってか、ナツから着信か。……どうした?……ああ、エミリーな。ちょっと事故があって、そっちで受信できないだろう?……いや、だから、雪が融けるまで待って……。ん?雪が融けるまで!?」
その時、平賀は思い出した。
今日は昨夜の大雪が嘘みたいにカラッと晴れている。
太陽光に雪が反射して、それはもう美しいほどだ。
平賀:「!……敷島さん、やっぱ危険だ!雪が融け始めてる!このままだと埋まりますよ!!」
敷島:「待ってください!もうちょっと!」
ズドドドン!ドドーン!!と大きな鈍い音を立てて、水気を含んだ雪の壁が崩れ始める。
平賀:「やっぱり!早く逃げましょう!!」
敷島:「ま、待ちなさい!今、黒いロボットの残骸が……!」
平賀:「街中で遭難する気ですか!」
平賀は敷島を羽交い絞めにして、ホテルの入口まで逃げ出した。
と、同時にそれまで掘り進めていたトンネルが『落盤』した。
従業員:「お客様方、大丈夫ですか!?」
平賀:「はぁ、はぁ……!し、死ぬかと思った!」
敷島:「くそーっ!あとちょっとだったのに!!」
敷島はガンッとスコップを地面に叩き付けた。
と、その時だった。
ズシャァァァァァッ!と現れたロボット達。
B4-4:「オ困リノヨウデスネ?」
B4-457:「マルチタイプ8号機のアルエット御嬢様ヨリ、御下命賜リマシタ!」
B4-108:「直チニ、エミリー様ノ捜索ヲ始メマス!」
平賀:「お前らは記念館警備のバージョン達!?……え、なに?アルエットが命令しただ!?」
B4-48:「ハハッ!最上位機マルチタイプの御命令ハ絶対!」
敷島:「アルエットのヤツ、何ちゅう奴だ……!」
手持ちの火炎放射器で雪を融かし、或いはスコップでザックザックと掘り進めるバージョン4.0の集団。
平賀:「アルエットは、やる時はやりますよ。7号機のレイチェルにとどめを刺したのも、アルエットです」
敷島:「確かに……」
敷島は端末を起動した。
それを使って、アルエットと通信する。
敷島の知らせに、アルエットは驚いていた様子だった。
アルエット:「ええっ!?あれ、本当に通じてたんですか?!」
といった感じだ。
敷島:「お前の通信機器、エミリー達より精度がいいのを使ってることをすっかり忘れてたよ」
何もかもが最新基軸のアルエットとされているが、そもそもマルチタイプ自体がオーバーテクノロジーである。
敷島:「科学館も大変なことになってるだろうけど、頑張ってくれよ?」
アルエット:「わっかりましたー!私にお任せ!」
敷島:「何やってるんだ?」
アルエット:「雪かきです!バージョン400に乗って!」
敷島:「ブッ!……あ、イベント用にレストアしたヤツか……」
バージョン400はバージョン4.0を巨大化したものである。
もちろん外見がそうだというだけで、他にも色々違う所はある。
大きな違いは、まるで特撮の合体ロボのように頭部に搭乗して手動操縦できるという所である。
もちろん、他のバージョン同様に自動も可。
アルエットは通常の4.0では担ぎ上げられて、400においては自分が乗り込んで操縦するのが好きだった。
巨大ロボがガイノイドに操縦されて駆動する様は、何ともシュールである。
それから1時間後……。
B4-4:「平賀博士!エミリー様ヲ発見シマシタ!」
平賀:「何だと!?」
平賀はたまたま1階のフロントで、延泊についての話をフロントスタッフとしていた。
本来なら、もうチェックアウトの時間をとっくに過ぎている頃である。
もちろん状況が状況だけに、フロントスタッフは延泊を認めた。
それまでの宿泊客はチェックアウトしたくても今日はまず無理だし、今日の新規客も来られず、ほぼ確実にキャンセルだろう。
そんな時、バージョン4.0の初期型4号機が飛び込んで来た。
平賀:「どこだ!?」
B4-4:「今、コチラニ運ンデオリマス」
平賀:(敷島さんは……今、仮眠室か)
連泊の場合でも清掃の為、昼間はカプセルホテルの客室フロアは出ないといけない。
その為、敷島はサウナの仮眠室に移動していた。
さすがに疲れたのである。
少しして、他のバージョン達がエミリーを運んできた。
平賀:「うわ……手とか足とかはさすがにバラバラか……。でもまあ、頭部は無事か。それなら……」
B4-4:「如何致シマショウ?」
平賀:「取りあえず、中に運んでくれ。車が動けばいいんだがな……」
平賀はバージョン達に命令すると、そのまま中には入らず、煙草に火を点けたのだった。