報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「アメイジング・グレイス」

2018-02-23 19:04:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

 アリス:「あんまり無理しちゃダメよ?あなたは、じー様の形見なんだから」
 シンディ:「はい」

 シンディのバッテリー交換をするアリス。
 エミリー大損傷という情報にショックを受けたシンディは、バッテリー1つを焼いてしまった。

 アリス:「エミリーは……ちょっと分からないね。後期型ボディは、あの平賀教授が造ったわけだから、あんまり期待はできないかも……」
 シンディ:「そんな……!」
 アリス:「前期型のエミリーは南里博士が造ったからいいけどね」
 シンディ:「南里博士の……設計図通りに作ったと聞いていますが……」
 アリス:「どうだかねぇ……」

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 平賀:「何だろう?どこかで自分の悪口言われてるような……?」

 ザックザックと雪山を掘る敷島。
 その後ろを付いて行く平賀。

 平賀:「敷島さん、もうやめましょうよ!不毛ですって!」
 敷島:「エミリー!いたら返事してくれー!!」
 平賀:「いや、だから!シャットダウンされてるから無理ですって!」

 ズズズ……。

 平賀:「!?」

 何か変な音がした。
 雪の音だろう。

 平賀:(何だろう?)

 尚、雪崩でホテルの入口が塞がれてしまったが、そこはまた敷島が掘って出口は確保していた。
 敷島はそこから分岐して、エミリーがいたと思われる箇所まで掘り進めているのである。

 平賀:「敷島さん、陸上自衛隊員も真っ青の行軍ぶりですよ?」
 敷島:「こう見えても私は、『不死身の敷島』ですから」
 平賀:「これが週刊少年ジャンプの漫画だったら、今頃あなたの戦闘力数値はインフレを起こしているところでしょうね」
 敷島:「それは平賀先生、あなたも同じですよ」
 平賀:「そんなことは……」

 ドドドド……!

 平賀:「!?」

 また何か音がした。

 平賀:「敷島さん、やっぱりその……引き返しましょう。何かおかしいですよ」
 敷島:「あとちょっと……あとちょっとなんです。あとちょっとで、エミリーがいた所……」
 平賀:「あれ、ここ電波入る。……ってか、ナツから着信か。……どうした?……ああ、エミリーな。ちょっと事故があって、そっちで受信できないだろう?……いや、だから、雪が融けるまで待って……。ん?雪が融けるまで!?」

 その時、平賀は思い出した。
 今日は昨夜の大雪が嘘みたいにカラッと晴れている。
 太陽光に雪が反射して、それはもう美しいほどだ。

 平賀:「!……敷島さん、やっぱ危険だ!雪が融け始めてる!このままだと埋まりますよ!!」
 敷島:「待ってください!もうちょっと!」

 ズドドドン!ドドーン!!と大きな鈍い音を立てて、水気を含んだ雪の壁が崩れ始める。
 

 平賀:「やっぱり!早く逃げましょう!!」
 敷島:「ま、待ちなさい!今、黒いロボットの残骸が……!」
 平賀:「街中で遭難する気ですか!」

 平賀は敷島を羽交い絞めにして、ホテルの入口まで逃げ出した。
 と、同時にそれまで掘り進めていたトンネルが『落盤』した。

 従業員:「お客様方、大丈夫ですか!?」
 平賀:「はぁ、はぁ……!し、死ぬかと思った!」
 敷島:「くそーっ!あとちょっとだったのに!!」

 敷島はガンッとスコップを地面に叩き付けた。
 と、その時だった。

 ズシャァァァァァッ!と現れたロボット達。

 B4-4:「オ困リノヨウデスネ?」
 B4-457:「マルチタイプ8号機のアルエット御嬢様ヨリ、御下命賜リマシタ!」
 B4-108:「直チニ、エミリー様ノ捜索ヲ始メマス!」
 平賀:「お前らは記念館警備のバージョン達!?……え、なに?アルエットが命令しただ!?」
 B4-48:「ハハッ!最上位機マルチタイプの御命令ハ絶対!」
 敷島:「アルエットのヤツ、何ちゅう奴だ……!」

 手持ちの火炎放射器で雪を融かし、或いはスコップでザックザックと掘り進めるバージョン4.0の集団。

 平賀:「アルエットは、やる時はやりますよ。7号機のレイチェルにとどめを刺したのも、アルエットです」
 敷島:「確かに……」

 敷島は端末を起動した。
 それを使って、アルエットと通信する。
 敷島の知らせに、アルエットは驚いていた様子だった。

 アルエット:「ええっ!?あれ、本当に通じてたんですか?!」

 といった感じだ。

 敷島:「お前の通信機器、エミリー達より精度がいいのを使ってることをすっかり忘れてたよ」

 何もかもが最新基軸のアルエットとされているが、そもそもマルチタイプ自体がオーバーテクノロジーである。

 敷島:「科学館も大変なことになってるだろうけど、頑張ってくれよ?」
 アルエット:「わっかりましたー!私にお任せ!」
 敷島:「何やってるんだ?」
 アルエット:「雪かきです!バージョン400に乗って!」
 敷島:「ブッ!……あ、イベント用にレストアしたヤツか……」

 バージョン400はバージョン4.0を巨大化したものである。
 もちろん外見がそうだというだけで、他にも色々違う所はある。
 大きな違いは、まるで特撮の合体ロボのように頭部に搭乗して手動操縦できるという所である。
 もちろん、他のバージョン同様に自動も可。
 アルエットは通常の4.0では担ぎ上げられて、400においては自分が乗り込んで操縦するのが好きだった。
 巨大ロボがガイノイドに操縦されて駆動する様は、何ともシュールである。

 それから1時間後……。

 B4-4:「平賀博士!エミリー様ヲ発見シマシタ!」
 平賀:「何だと!?」

 平賀はたまたま1階のフロントで、延泊についての話をフロントスタッフとしていた。
 本来なら、もうチェックアウトの時間をとっくに過ぎている頃である。
 もちろん状況が状況だけに、フロントスタッフは延泊を認めた。
 それまでの宿泊客はチェックアウトしたくても今日はまず無理だし、今日の新規客も来られず、ほぼ確実にキャンセルだろう。
 そんな時、バージョン4.0の初期型4号機が飛び込んで来た。

 平賀:「どこだ!?」
 B4-4:「今、コチラニ運ンデオリマス」
 平賀:(敷島さんは……今、仮眠室か)

 連泊の場合でも清掃の為、昼間はカプセルホテルの客室フロアは出ないといけない。
 その為、敷島はサウナの仮眠室に移動していた。
 さすがに疲れたのである。
 少しして、他のバージョン達がエミリーを運んできた。

 平賀:「うわ……手とか足とかはさすがにバラバラか……。でもまあ、頭部は無事か。それなら……」
 B4-4:「如何致シマショウ?」
 平賀:「取りあえず、中に運んでくれ。車が動けばいいんだがな……」

 平賀はバージョン達に命令すると、そのまま中には入らず、煙草に火を点けたのだった。
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“戦う社長の物語” 「エミリーの安否」

2018-02-23 16:02:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日09:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

 関東も関東で、平野部にも関わらずメートル単位の雪が降り積もっていた。
 シンディは周辺に稼働するバージョン4.0(以下、B4と略す。Versionではなく、Barsionという製品名の為)をかき集め、除雪や孤立者の救助活動に当たっていた。

 シンディ:「モタモタするんじゃないよ!これも贖罪活動の一環なんだからねっ!」

 シンディは電気鞭片手にバージョン達に指示を出していた。

 B4-17:「シンディ様、雪デ孤立シタオ年寄リ2名ヲ救助シマシタ」
 シンディ:「すぐに救助隊に引き渡しなさい!」
 B4-17:「ハハッ!」
 シンディ:「こっちでは停電が無いから良かったものの、姉さん達は大丈夫なのかしら……」

 東京では井辺が会社に泊まり込み、ボーカロイド達を駆使して除雪作業に当たらせているらしい。
 因みにテレビで今、それが話題になっている。

 シンディ:「ん!?……姉さんの反応が消えた?」

[同日同時刻 天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 KAITO:「プロデューサーは中にいてください。このままでは雪焼けしてしまいます」
 井辺:「昨日とは打って変わって、カラッと晴れています。何かおかしいですね。まあ、いいでしょう。一応、日焼け止め塗ってきますので、その間、雪かきの方お願いします」
 MEIKO:「分かったから、早くプロデューサーは戻って。事務所に誰もいないとマズいでしょう?」
 井辺:「一海さんがいますが、取りあえず一旦戻ります」

 井辺はビルの中に入ると、エレベーターで事務所の階に上がった。
 ここも停電はしていなかった。

 井辺:「一海さん、今日の予定は全てキャンセルです。この雪では、そもそも交通機関が……」

 一海はメイドロイドから改造された事務員ロイドである。

 一海:「プロデューサーさん、大変です。社長室から警報が……!」
 井辺:「ええっ!?」

 井辺が社長室に向かうと、確かに中からアラームが聞こえた。

 井辺:「これは端末の警報音!」

 社長室に入り、その裏にあるロイド監視のサーバールームに入る。

 井辺:「エミリーさんが!?」

『重大な損傷が発生しました。強制シャットダウンします』

 井辺:「エミリーさんに何かあった!?」

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 平賀:「いけません、敷島さん!危険ですよ!?」
 敷島:「エミリーを助けに行かないと!何かの爆発に巻き込まれたんです、きっと!」
 平賀:「エミリーならグレネードの直撃を受けても壊れない設計になっています!たかだかロボットの自爆装置くらいで壊れるわけが無いですから!」
 敷島:「私の端末には、『重大な損傷が発生しました。強制シャットダウンします』とありますよ!?」

 社長室にあるサーバーが親機だとすると、敷島の持っているのは子機である。
 要は携帯端末ということだ。
 ここではノートPC型だったりする(タブレット型も別にあって、状況に応じて使い分けている)。

 平賀:「ですが……!」

 尚、エミリーに起きた『重大な損傷』によって『強制シャットダウン』した場合、端末からでは再起動ができない。
 直接本人を助けて、ボディから再起動の操作をしなければならない。

 平賀:「最悪、雪が融ければ……」
 敷島:「いつですか!?こんな3メートルも4メートルも一気に積もっちゃって……!」

 と、そこへシンディから通信が出て来た。

 シンディ:「社長、シンディです!」
 敷島:「ああ、シンディか。そうか。お前の電波なら、直接通信できるか」

 この雪害は停電こそ免れたものの、電話はパンクしており、非常に繋がりにくい状態になっていた。
 マルチタイプならネット回線でも何でも使える。
 敷島は手持ちのノートPCのカメラとマイクに向かって喋った。
 但し、こちらからはシンディの顔は見えない。
 代わりに彼女の目(カメラ)とリンクさせて、シンディが今見ている光景を見ることはできる。
 やはり、さいたま市も相当な状況であるようだ。

 シンディ:「姉さんのGPSが消えたんだけど、何かあったの!?」
 敷島:「そ、それなんだが……」
 平賀:「シンディ!こちらにも黒いロボットが現れた!一機はエミリーに確保してもらって調査中だが、自爆装置を持っている。どうやら、それに巻き込まれた恐れがある!」
 シンディ:「黒いロボットが!?」
 平賀:「そうだ!そちらにもお前達を狙って、黒いロボットが向かっていた可能性は十分ある。除雪や救助活動は大いに結構だが、黒いロボットに気をつけろ!中途半端に攻撃すると、自爆する恐れがある!」
 シンディ:「で、姉さんは?」
 敷島:「奴らの爆発の影響で雪が崩れて、その下敷きに……!人間なら……100%死亡の……」
 シンディ:「私、そっちに行きます!」
 敷島:「どうやってだ!?この雪で新幹線も高速道路も全面ストップだぞ!?お前のジェットエンジンでは、仙台まで届かない!」
 平賀:「“鉄腕アトム”のヤツだったら、海外までも行けるというのに……」

[同日同時刻 天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 警備室では偉い騒ぎであった。

 警備員A:「……分かりました。科学館は今日は臨時休館ということで……はい。……はい」
 警備員B:「……そうなんです。職員さんどころか、うちの警備員の交替要因も出勤できない有り様で……。はい……はい……」
 警備員C:「外部センサーが発報しまくりだ!」
 警備員D:「もういい!防犯センサーは電源切れ!」

 アルエットと萌は警備室の外から、その騒ぎを見ていた。

 萌:「臨時休館だって」
 アルエット:「う、うん……」
 萌:「あーあ……。今日は井辺さんがMEGAbyteの御三方を連れて、ここに遊びに来てくれる約束だったのに……」
 アルエット:「井辺プロデューサーさんは遊びにじゃなくて、お仕事で来てるんだよ?」

 アルエットは新型マルチタイプ。
 旧型のエミリーやシンディとは、フルモデルチェンジのデザインとなっている。
 が、表向きは同型機となっているので、もちろん通信に関しては相互にできる。

 アルエット:「ああっ!?」
 萌:「どうしたの!?」
 アルエット:「お姉ちゃんが……!エミリーお姉ちゃんが……!!」

 アルエットの電子頭脳に、エミリーの最後の記憶が飛び込んで来た。
 そこが新型ならではの機能でもあるのだが、当の本人にとっては……。

 アルエット:「バージョン!仙台にいるバージョンは、エミリーお姉ちゃんを助けて!!」

 フルモデルチェンジとはいえ、アルエットも最上位機種である。
 それからの咄嗟の命令が、意外な展開を呼ぶ。
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小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。20180222

2018-02-22 23:38:56 | 日記
 今日の22時をもって、デスマーチは一旦終了した。
 そう、一旦終了である。
 再開されるのは、月末からの【お察しください】。

 平日は朝7時から22時までが1セットである。
 それを3セットやったのが今回。
 上司が何とか1回減らしてくれたから良かったものの、最悪4セットやらされるハメになりそうだった。
 お役所系の現場はブラッキーだから、絶対に引き受けない方が良い。
 それだけは言える。
 何しろ、自分達のやりたがらない仕事を民間に押し付けるというのが実状だからね。
 そういえば法道院の講頭さんも国家公務員だったかな……?
 いや、別に何でもない。

 明日は久しぶりの休日であるが、デスマーチのせいで溜まったプライベート的な事をこなさなければならない。
 小説の更新再開は明日に行いたいとは思うが、場合によってはそれも不可能になるかもしれない。

 まあ、コメントも寄せられなくなったことだし、私の方も厳虎さん並みにオワコンになってきたって所だろうか。
 日蓮正宗の信仰を辞めてでもやりたかった事が、そろそろ動き出しているからね。
 厳虎さん側が先に動くか、私の方が先に動くか。

 こればかりは仏のみぞ知る。

 因みに……デスマーチという単語は、どちらかというとシステムエンジニアさん達の業界用語らしいのだが、別に警備業界で使わせてもらっても良いだろう。
 納期という概念は無いものの、社内人事や契約先の都合で過酷なスケジュールを休み無しでこなすという点においては共通しているのだから。
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“戦う社長の物語” 「雪に閉ざされて」 3

2018-02-19 19:09:26 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日08:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 敷島と平賀がホテルで朝食を取っていると、エミリーから通信が飛んできた。
 この雪でついに凍死者を発見したのかと思ったのだが、どうやらそうではないようだ。
 いや、結論から言えば広い意味での凍死者なのかもしれないが、死んでいたのは人間ではなく……。

 敷島:「うわっ!?黒いロボット!?」

 ホテル前の狭い通りを掘り進めたエミリー。
 あまりにも雪が深過ぎて地上の太陽光は届かず、真っ暗であった。
 幸いに停電まではしていない為、ホテルの照明とエミリーの目から放たれるサーチライトで照度は確保できている。
 通りには凍結して停止する黒いロボットがいた。

 エミリー:「まだ奥にもいる模様です!」
 敷島:「マジかよ!?」
 平賀:「自分達を狙って来たのかな?」
 敷島:「油断も隙も無いですなぁ……」

 黒いロボット達は雪に埋もれてしまった為、モーターが凍結してしまったらしい。

 エミリー:「いかが致しますか、社長?」
 敷島:「頭部のメモリーとデータを抜き取ってしまえ。それと、再稼働できないようにモーターを破壊しとけ」
 エミリー:「かしこまりました」

 エミリーは黒いロボットの頭部をこじ開けた。

 エミリー:「! 社長、頭部にはメモリーがありません!」
 敷島:「なにっ!?」
 平賀:「頭部にメモリーを仕掛けることはしなかったらしいですね。このロボットの設計者は……」
 敷島:「先生」
 平賀:「とはいえ、この体のどこかに行動を記録する媒体は搭載されているはずです。自分が調査してみたいと思います」
 敷島:「分かりました。取りあえずエミリー、モーターだけ破壊しとけ」
 エミリー:「かしこまりました」
 平賀:「ああ、慎重にやってくれよ?もしかしたら、自爆装置と直結してるかもしれないからな」
 エミリー:「はい」

 どうやらこれも、バッテリー駆動らしい。
 背中をこじ開けると、中のバッテリーを抜き取った。

 エミリー:「私が使用している物と、タイプが違います」
 敷島:「! これはアメリカ製だぞ!」
 平賀:「もしこれが日本で製造された物なら、バッテリーも日本国内で購入した国内メーカーの物を使うでしょうからね。それがわざわざアメリカのメーカーの物を使うということは……」
 敷島:「デイライト・コーポレーション・アメリカ?」
 平賀:「正確にはデイライト・コーポレーション・インターナショナルです。まだ予断は禁物ですよ。今は、こいつの調査あるのみ」
 敷島:「それもそうですね。すいませーん!台車貸してくださーい!」

 敷島はホテルに戻って、黒いロボットを運ぶ為の台車を借りた。

 敷島:「他にもいるのか?」
 エミリー:「はい。この奥にも、こいつと同じ反応をした物が2つほど確認できます」
 敷島:「分かった。そいつらも多分雪に埋もれて故障しているだろうが、油断はするなよ?見つけ次第、こいつと同じようにバッテリー抜いとけ」
 エミリー:「かしこまりました」
 平賀:「ホテルに頼んで、こいつを調べるスペースを借りましょう」
 敷島:「そうですね」

 エミリーは再び、ホテルから借りたスコップでロボットの反応のする方へ掘り進んだ。

 エミリー:「!?」

 もう少しで反応のする方だという時、ズボッと雪の中から黒い手が伸びて来た。

 ムニュムニュ!

 エミリー:「!!!」

 その手は迷わずエミリーの巨乳(93センチ)を揉みしだいて来た。

 エミリー:「こ、このっ……!」

 ズボッとまた別の所から手が伸びて来て、それはエミリーの尻を撫で回して来た。

 エミリー:「変態どもめ!!」

 エミリーは持っていたスコップで、まずは自分の胸を揉んで来た金属製の手を切り落とし、今度は尻に触って来た金属製の手を切り落とした。
 ブシューッと火花とオイルが飛び散る。

 エミリー:「出て来い!卑怯者ども!!」

 エミリーが切り落としていない腕を引っ張った。
 すると……!

[同日08:30.天候:晴 同ホテル内]

 平賀:「敷島さん、やっぱこいつはアメリカ製ですよ!ほら、ここ!ロゴマークを削り取って分からないようにしていますけど、この部品はデイライト・コーポレーションが取った特許製品です。他のメーカーが勝手に造れない部品てずから、間違いありません!」

 平賀はデイライト社の日本法人の非常勤役員という顔も持っている。
 だから知っているのだろう。

 敷島:「なるほど。犯人はデイライト・アメリカですか。あのクソ所長と愉快な仲間たちのしわざってことですね」
 平賀:「可能性は大ですね。ただ、何の目的で何の命令で動いていたのかまで掴まないと……」
 敷島:「掴めそうですか?」
 平賀:「それが、行動記録の媒体らしきものが見つからないんです。恐らく、遠隔で操作しているヤツのサーバーか何かに記録するようにしているのでしょうが……」
 敷島:「外部メモリー方式ですか……」
 平賀:「あと、それとこれ。やっぱり、搭載していやがりましたよ。自爆装置」
 敷島:「何ですか、これ?ガスボンベみたいだな……」
 平賀:「ガスボンベに見せかけて、中身はグレネードですよ。聞いたことあるんですけどね。自分が破壊されかねないほどのダメージを受けた時、この安全ピンが抜けるようになっていて、それで自爆するようになっているんですって」
 敷島:「昔のマルチタイプの自爆装置みたいなものですね。あれは舌が起動スイッチになっていて、舌を噛み切ると自爆するようになっていた……」

 今のマルチタイプは自爆ではなく、自壊装置になっている。

 平賀:「先に無傷でバッテリーを抜いておいたのは正解でしたね。こいつらがどういう基準で、どれだけのダメージを受けたら自爆装置を起動させるかが分かりませんから」
 敷島:「確かに。一応、エミリーにも伝えておきましょう。ヘタに戦闘は避けるようにと……」
 平賀:「その方がいいですね」

 敷島はエレベーターに乗り込んで、1階へ向かった。

 敷島:「ある程度のダメージを受けたら自爆する。……メガンテ。爆弾岩みたいなロボットなのかよ、あいつらは……」

 もっとも、ロボットをテロ行為に使おうとする場合は必ず選択肢に入るやり方だ。
 エレベーターを降りると……。

 敷島:「!? 何かあったんですか?」
 従業員:「お客様、外は危険です。先ほど、奥で爆発がありまして……」
 敷島:「爆発!?」
 従業員:「その衝撃で雪が崩れて、この有り様です」

 まるで雪崩があったかのように、雪がエントランスになだれ込んでいた。

 敷島:「え、エミリーは!?あいつ、どうしたんだ!?」
 従業員:「し、知りませんよ!」
 敷島:「おおーい!エミリー!?」

 エミリーの運命や如何に!?
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“戦う社長の物語” 「雪に閉ざされて」 2

2018-02-19 10:38:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日07:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 早朝は雲っていた空も、日が昇るにつれて晴れて来た。
 市内は郊外も市街地も、完全に銀世界と化していた。
 上空からでは、低い建物だとどこに何があるのか分からないほどである。
 エミリーの場合、そこは何とかGPSを駆使して捜すことはできる。
 それに、敷島達が宿泊しているカプセルホテル&サウナは5階建てだ。
 建物の2階部分の半分ほどまで降り積もった雪は、5階建てのビルまでも埋めてしまうほどには積もっていない。
 それでも市中は大混乱であった。
 上空には報道や自衛隊のヘリが飛び回っている為、エミリーはそれより低く飛ばなくてはならなかった。

 エミリー:「あれだ!」

 エミリーは件のホテルを発見した。
 周辺には人の姿は見られない。
 ではやはり、敷島達はホテルの中に閉じ込められているのか。

 エミリー:「こうしてはいられない!」

 エミリーは右手を火炎放射器に変形した。
 これで少しずつ雪を融かして行こうと思った。
 まずは自分が雪に埋もれないよう、近くの3階建て以上の建物の上に着陸する。
 そして……。

 エミリー:「!?」

 エミリーがホテルの前辺りに右手の火炎放射器を向けた時だった。
 ズボッとそこから、何かが突き出て来た。
 よく見ると、それはスコップ。
 更に……。

 敷島:「よし!やっと外に出られたぞ!」
 平賀:「さすがは敷島さん!」

 何と、スコップ片手に敷島と平賀が自力で出て来た!

 敷島:「この辺にホテル入口を作っておこう」
 平賀:「自分はもう少し、ホテル前の通りを掘り進めてみます!」
 敷島:「分かりました」
 エミリー:「あの……社長?」
 敷島:「おおっ、エミリーか!お前も無事だったか!いやー、良かった良かった!」

 敷島が笑いながらエミリーの肩をポンポン叩く。

 エミリー:「助けに参りました……と言いたいところですが、大丈夫だったようですね」
 敷島:「さすがにこんなに降り積もるなんて、明らかに異常だよな。こりゃ今年の運勢、あの御神籤の通りかもしれんぞ」
 エミリー:「それを防ぐ為にも、私をお使いください」
 敷島:「そうだな」

 敷島が引いた御神籤は凶で、エミリーは大凶。
 そしてエミリーの大凶御籤には、『凶の者を助けよ。さすれば救われん』と書かれていた。

 敷島:「……ホテル入口はこんな感じでいいか。うーん……かまくら……というよりは、地下鉄の入口風になってしまったな」

 平賀は平賀でホテル前に路駐していた車を見つけた。

 平賀:「ん?車だ。昨夜から路駐してたのかな?」
 若者:「違う違う。暖房の熱で融かしながら進んでるんだ。時速30センチ!」
 平賀:「横着するな!だいたい、こんな中エンジン掛けてたらCO中毒で……って、ありゃ?ミライか、これ?」
 若者:「そう!だから一酸化炭素は出しませーん!」
 平賀:「いや、そういう問題じゃない!」

 そこへホテルのスタッフが出て来た。

 従業員:「お客様方、除雪ありがとうございます。朝食の準備ができましたので、いかがでしょうか?」
 平賀:「おっ、そうか。じゃ、ちょっと敷島さんを呼んで来る。敷島さーん!」

 平賀はトラメガで雪山の上に向かって叫んだ。

 敷島:「何ですかー!?」
 平賀:「朝食ができたんですって!取りあえず食べましょうよ!」
 敷島:「了解!今行きます!」
 エミリー:「私はもう少しこの辺りを除雪します」
 敷島:「ああ、頼むよ」

 敷島は即席で作った雪の階段を滑るように下りて行った。
 尚、登りやすいようにロープを出して、それを近くの電柱に巻き付けている。

 平賀:「それにしてもヒドいことになりましたなぁ……」
 敷島:「先生の御宅は大丈夫だったんですか?」

 2人は隣接する居酒屋で和定食を食べていた。
 ホテルの中から行けるようになっており、宿泊者専用の朝食会場にもなっていた。

 平賀:「いや、うちも埋まりました。幸い七海が必死で除雪作業をしてくれてるおかげで、何とか孤立は防げそうです」
 敷島:「それは良かった。メイドロイド1機抱えているだけで、相当安心ですね」
 平賀:「それは個体にもよるかもしれませんね。本当にメイドメイドしているタイプだと、ああはいかないかもです」
 敷島:「あー……そういや、二海には無理かもなぁ……」

 メイドにも色々なタイプ、役割がある。
 一般に『メイド長』と呼ばれるタイプは、正式にはハウスキーパー(家令)と呼ばれる使用人長のようなもので、実はメイドではない(メイドの仕事ができないわけではない)。
 “アルプスの少女ハイジ”において、クララの家に雇われているロッテンマイヤー女史がこの立ち位置に当たると言えば分かるだろうか。

 平賀:「二海は、あくまで敷島さんのお子さんの『ナースメイド(子守り)』として設定しましたからね」
 敷島:「ま、それとは別にシンディがいるから大丈夫でしょう」
 平賀:「でしょうね。エミリーは何でも1人でやってしまうタイプですが、シンディはそこら中のロボットをかき集めて命令する側でしょうね」

 すると敷島はご飯の入った茶碗を置いて、手持ちのスマホを出した。

 敷島:「はい、せいかーい!」

 スマホの画面には、バージョン4.0の集団に除雪作業や雪に閉じ込められた人々の救助作業を電気鞭片手に指示しているシンディの姿が映し出されていた。

 平賀:「こういう所は前期型から変わらん!」
 敷島:「集団を統率する力においては、エミリーより優れてはいると言えるでしょう」

 南里志郎記念館の時もそうだ。
 シンディなら電気鞭片手に、さっさと除雪作業を命じていたところだろう。
 これは2人の生い立ちの違いによる。
 エミリーは常に1人で南里の実験の立ち会い(或いは自分自身が実験台になったり)や身の回りの世話をしなければならなかったし、シンディは前期型の時からテロ活動にバージョンシリーズを統率していた為である。

 敷島:「都合良くこの辺に、バージョンシリーズでもいたら、エミリーに指示させて手伝ってもらうところなんですけどね」
 平賀:「テロ目的以外に、そう簡単にいるとは思えませんな」
 敷島:「いや、全く」

 尚、この非常事態において、暢気に朝食を取っていたのは敷島達だけである。
 それだけこの2人は場数を踏んでいるということであろう。

 敷島:「ん!?」

 その時、敷島のスマホが鳴った。
 エミリーからである。

 敷島:「どうした、エミリー?凍死者でも見つけたか?」

 だが、エミリーの言葉は意外なものであった。
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