報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「動き出す敵陣」

2021-11-08 20:04:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月20日00:59.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅]

 仮面子:「ふふふ……ふはははははっ!」

 手前の両国駅を発車した直後に行動に出た、白い仮面の少女。
 最後尾の車両なので乗務員室はあるのだが、都営大江戸線はワンマン運転が行われている為、そこに車掌はいない。
 愛原を含む数人の乗客達は、座席に座ったままで全員意識を失っており、本当に終電ならではの光景となっていた。
 だから、森下駅に到着した時、ホームの駅員や乗客がこの様子を見ていたが、誰も不審に思わなかったという。

〔森下、森下〕

 電車が森下駅に到着する。
 本来、愛原はここで降りるはずだった。
 森下駅から菊川駅までは1駅だけなので、歩いて帰るつもりだったのだが……。

 愛原:「…………」

 仮面の少女に何かされたことで意識を失い、降りることはできなくなっていた。

 仮面子:「♪」

 仮面の少女は白い仮面を外すと、それを通学鞄の中にしまい、悠然と電車を降りた。
 仮面の下は、ごくごく普通の在り来たりな顔立ちの少女であった。
 本当にどこにでもいるという感じ。
 美少女と言えなくもないが、仮にアイドルユニットのチーム入りをしたところで、有名どころに埋もれてしまい、コアなファンにしか顔と名前を憶えてもらえない。
 そんな感じである。

〔「最終の清澄白河行き、発車致します」〕

 最終電車は何も知らずに発車していった。
 その電車が巻き起こした風で、少女の制服のスカートがひらりと靡くが、特に少女は気にすることもなく、改札階への階段を昇る。
 本当にその振る舞いは、塾か部活帰りの女子中高生といった感じだった。
 何食わぬ顔して駅の外に出る。
 殆ど人通りや車通りの少なくなった大通りから、路地裏に入った。

 仮面子:「……!」

 向こうから殺気立った者が近づいて来た。
 その者は剣道着を着て、袴を穿いている。
 歩く度にカチャカチャという金属音がした。

 栗原蓮華:「見つけたぞ。人食い鬼!」

 本物の鬼もびっくりの鋭い眼光で、蓮華は真剣を抜いた。

 仮面子:「な、何のことですか?私はただの塾帰りですけど……。け、警察呼びますよ?」
 蓮華:「ああ、勝手にしな。呼べるものならね」

 蓮華は大きく踏み込んだ。
 踏み込む時は、義足ではない方の右足を使って踏み込む。

 仮面子:「くっ!」

 仮面の少女は人間とは思えないほどの跳躍力で、近くに路駐していたワンボックスの上に飛び乗った。

 蓮華:「普通の人間なら、そんな跳び方はできない。オマエは鬼だ!」
 仮面子:「ちっ……!」

 仮面の少女の姿が変化していく。

 仮面子:「ならばオマエを食うまでだ!!」
 蓮華:「やってみろ!首を刎ねてやる!」

 仮面の少女は右手を変化させて、触手とした。

 仮面子:「オマエもゾンビにしてやろうか!」
 蓮華:「あいにくと抗体は持ってるよ!」
 仮面子:「なにっ?」

 蓮華は仮面の少女の触手を切り落とした。
 だが、その触手はまたすぐに生えてくる。

 蓮華:「ああ、やはりブランクがある。オマエは弱い」
 仮面子:「なに!?」

 次の瞬間、蓮華は仮面の少女の首を刎ね飛ばした。

 蓮華:「オマエ、番号いくつだ?」
 仮面子:「…………」

 蓮華は仮面の少女が着ていたブラウスを引き裂いた。
 白い下着を更に退かして、左腋の下を見る。

 蓮華:「453!?やはり亜種か。通りで弱いと思った」

 蓮華は手持ちのスマホでどこかに連絡した。

 蓮華:「……うん、私。鬼退治、終わった。だけど、違うね。対象の鬼じゃない。弱過ぎる。でも多分、私と会う前にどこかで悪さした感じだから、探してもらえる?……うん。それじゃ」

 蓮華は電話を切った。

 蓮華:「ここは……愛原先生の家の近くか……」

[同日01:00.天候:晴 同区白河 地下鉄清澄白河駅・都営大江戸線ホーム]

〔「ご乗車ありがとうございました。清澄白河、清澄白河、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。2番線、3番線に到着の電車は回送です。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 真ん中の副線ホームに最終電車が到着する。
 ドアが開くと、乗客達が降りて来るが、中には寝込んでしまって降りて来ない客もいる。

 駅員:「お客さん、終点ですよ」
 乗客A:「ん?ああ……」

 駅員達が電車内に入って、そういった乗客達を起こして回る。
 そして、最後尾の車両まで来た時、他の車両よりも多くの乗客達が寝込んでいるのを確認した。

 駅員:「お客さん、終点ですよ」
 乗客B:「…………」
 駅員:「お客さん、終点ですよ」
 乗客C:「ウゥ……」
 駅員:「しょうがないなぁ、酔っ払っちゃって……!」

 駅員が応援を呼ぼうと、電車から降りようとした時である。

 乗客C:「ゥアアアアッ!!」
 駅員:「わあっ!?ななな、何するんですか!?」
 乗客D:「ウゥウ……!」
 乗客E:「アァア……!」

 駅員はゾンビ化した乗客達に、体中を食い千切られることとなった。

 運転士:「た、大変だ!警察を呼んでくれ!!」

 最終電車を運転していて、一緒に車内を確認していた運転士は間一髪逃げることに成功し、駅員室に飛び込んで助けを求めた。
 そして、前回終盤の愛原の回想に至る。

[同日02:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 室内に置かれた固定電話の着信音がけたたましく鳴る。
 家庭用のファックスと一体になったタイプである。
 場合によっては自宅で依頼書を受け取ったり、自宅からクライアントへファックスする機会もあるということで、愛原のマンションではファックスと一体となった電話機を置いていた。

 高橋:「ったく、何だよ……」

 高橋が渋々起きて、電話の受話器を取る。

 高橋:「もしもし、誰?……あ、病院?……え?……え?……ええーっ!?せ、先生が事件に?!」
 リサ:「!?」

 リサは自分の部屋のドアから、高橋が電話に出る様子を伺っていたが、高橋の驚きぶりから、何か大変なことが起きたことが判明した。

 リサ:「な、なに?何があったの……!?」
 高橋:「くそっ!」

 高橋は電話を切った。

 リサ:「兄ちゃん、先生に何があったの?!」
 高橋:「事件に巻き込まれたらしい!それも、バイオハザード事件だ!」
 リサ:「ええっ!?」
 高橋:「救急車で病院に運ばれたらしいぜ!俺達も行くぞ!支度しろ!」
 リサ:「う、うん!」

 リサは急いで部屋に戻ると、私服に着替え始めた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「森脇警備員との別れ」

2021-11-08 15:43:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月20日00:51.天候:晴 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→大江戸線2432B電車最後尾車内]

 結局、酒豪の森脇さんに2次会、3次会と連れ回され、最後には緊急事態宣言などガン無視の酒提供の店に連れて行かれた。

 森脇:「愛原君と一緒だと楽しいねぇ!もう一杯行こうか!」

 なんて……。

 愛原:「でも森脇さん、すいませんけど、そろそろ終電が……」
 森脇:「なに?もうそんな時間か?残念だなぁ……」

 終電の時間になると解放してくれた。

 森脇:「駅まで送って行くよ」
 愛原:「はあ、すいません……」

 私はヨタつく足元に注意しながら、席を立った。

 森脇:「早く店でガンガン飲めるようになるといいねぇ……」

 いや、もう既にガンガン飲んでるじゃないですかぁ……。

 店長:「ありがとやんした!」
 森脇:「ごちそうさんねー」

 酒代は全部森脇さんが払ってくれたが。
 尚、店の暖簾は既に店内に取り込まれており、入口の所には『貸切営業中』という札が掲げられていた。
 通常の営業は20時までの時短営業だが、それ以降は貸切営業なら良いらしい。
 だけど、他にも森脇さんと似たような常連客がいたことから、本当にただ誤魔化す為の『なんちゃって貸切営業』なのだろう。
 森脇さんのような人が常連だから、居酒屋も潰れずに済んでいるのだろうが……。

 森脇:「さてさて。上野御徒町駅はあっちだ。俺について来い」
 愛原:「はあ……」

 森脇さんは、確かに飲んで顔が赤くなっていたものの、意識レベルは通常値である。
 また、私のように足元がフラつくこともなく、しっかりとした足取りである。

 愛原:「それにしても、斉藤さんは残念でしたなぁ……」
 森脇:「本当だよ。何で死んじゃったんだよォ……」

 酒を飲んだことが、却って脳が活性化されたのか、森脇さんは思い出してくれた。
 “トイレの花子さん”の生前の本名を。
 生前の本名は斉藤早苗という。
 斉藤というと、斉藤社長を思い出してしまうが、まあ、斉藤という名字は何も珍しくはないから、たまたま偶然だろう。
 それでも記憶違いの恐れもある為、一応、卒業アルバムは確認してくれるという。

 森脇:「それじゃあ、気を付けて帰れよ」
 愛原:「はい。色々とありがとうございました」
 森脇:「また、いつでも戻ってきていいからな?」
 愛原:「え……?」
 森脇:「うちの会社、人手不足なんだよ。コロナ禍なのに」
 愛原:「ははは……。まあ、探偵がダメになったらよろしくお願いします」

 私はそう答えると、駅への階段を下りた。

〔「大江戸線ご利用のお客様にお知らせ致します。大江戸線、まもなく清澄白河行きの最終電車が到着致します。ご利用のお客様は、お急ぎください。尚、都庁前、光が丘行きにつきましては、本日の運転を終了致しております」〕

 こんな放送が構内に鳴り響く。
 私は急ぎ足で、改札口にSuicaをタッチした。
 駅員達が改札口で、終電利用希望の客達を集めている。

〔まもなく2番線に、両国方面、清澄白河行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
〔「2番線、ご注意ください。本日最終の清澄白河行きの到着です」〕

 まばゆいヘッドライトの灯りを照らしながら、リニアモーター式の電車がやってきた。
 普通、平日の終電というと混んでいるイメージがあるが、この電車は空いていた。
 恐らく、緊急事態宣言の影響だろう。
 鉄道会社によっては、終電時間を繰り上げたところがあると聞く。
 こんなガラガラでは、それも致し方無いだろう。

〔上野御徒町、上野御徒町。……〕
〔「ご乗車ありがとうございました。上野御徒町、上野御徒町です。2番線の電車は、清澄白河行きの最終電車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 私は最後尾に乗り込み、ファインレッドの座席に腰かけた。
 長時間利用は考慮されていないのが、座面は硬い。

〔「2番線から、清澄白河行きの最終電車が発車致します」〕

 発車メロディが鳴った後で、ホーム立ち番の駅員が改札口の駅員と無線でやり取りしながら、終電の乗客を乗せて行く。
 そんなことをすれば発車が遅れるに決まっているが、もう次の電車が無い為、鉄道会社側も、遅延させた現場職員達を咎めることはまず無い。
 そもそも、『客扱い遅れ』に関しては、乗務員側に責任は無いとされている。
 そして、車両のドアとホームドアが閉まった。

 愛原:(もうこんな時間か。高橋にLINEしといて良かった……)

 さすがにもう寝てると思い、終電に乗ったまでは連絡しなくていいだろうと思った。

〔次は新御徒町、新御徒町です。お出口は、右側です〕
〔The next staion is Shin-Okachimachi.E10.〕

 本来なら、つくばエクスプレスの乗り換え駅であるが、そちらはもう終電が終わっている為、乗換案内放送は流れない。
 私は森脇さんから聞き出した情報をメモに書いており、それを鞄にしまった。
 電車内はガラガラで、私以外には数えるほどしか乗っていない。
 コロナ禍前は、もっと混んでいるはずなのに、随分と寂しくなったものだ。

 愛原:「ん?」

 すると、私のスマホが震えた。
 LINE着信の震え方だ。
 私がスマホを見ると、リサからだった。

 リサ:「まだ帰ってこないの?」

 というもの。
 なので私は、『さっき大江戸線の終電に乗った。もうすぐ帰る』というLINEを送っておいた。
 これで良し。

 愛原:「ん?」

 すると、隣の車両から誰かがやってきた。
 制服姿の女子中高生であった。
 こんな時間に何故と思ったが、塾か何かからの帰りだろうか。
 私の向かいに座った。
 そして、スカートのポケットからスマホを取り出して弄り出す。
 特に、問題無しか……。

[同日01:30.天候:晴 東京都江東区白河 地下鉄清澄白河駅]

 え……?何があった……?
 か、体が……動かない……。
 えーと……確か……あれだ……。
 えー……両国駅を出たら……向かい側に座っていた女子中高生が鞄の中から、白い仮面を取り出して、それを着けて……私が立ち上がろうとしたら、体の力が抜けて、倒れたんだっけ……。

 救急隊員A:「1名は呼吸あり!脈拍あり!意識は無し!」

 私はどうやらストレッチャーに乗せられているようだ。
 まるで、夢の世界にいるかのような感覚だ。
 周りは騒々しいはずなのに、それがまるで夢の中が騒がしいかのような感覚……。

 救急隊員B:「いや、意識混濁だ!大丈夫ですか!?分かりますか!?」

 駅の外に出たのだろう。
 しかし、そこも騒然としていたのは分かった。
 うつろな目に飛び込んで来る、いくつもの赤色灯。
 救急車に乗せられた時、私は目が半開きになっているのを救急隊員に見つかった。

 愛原:「…………」

 だが、何も答えられない。
 一体、何が……あったんだ……?
 私は救急隊員の呼び掛けに応えることはできず、再び意識を失った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「森脇警備員の情報」

2021-11-05 20:03:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月19日18:00.天候:晴 東京都豊島区池袋本町 豊島学園大学通用門]

 森脇:「じゃ、お先ー」
 警備員:「お疲れさまでした」

 森脇さんが立哨中の若い警備員に挨拶して、通用門を出て来た。

 愛原:「森脇さん!」
 森脇:「ん?」

 私はコロナ対策で着けているマスクを少し外して素顔を見せた。

 愛原:「覚えてますか?愛原です!あの、東京駅地下街警備で一緒になった愛原です!社員旅行でも一緒でしたよね!?」
 森脇:「おお!愛原君かー。久しぶりだなー。元気にしてたかー?」

 森脇さんは白髪の目立つ髪が特徴で、眼鏡を掛けていた。
 熊谷さんが白髪染めをしていて、髪をオールバックにし、どちらかというと色白なのに対し、森脇さんは色黒である。

 愛原:「はい、おかげさまで!熊谷さんから、森脇さんがここの大学の現場で働いていると聞いて、近くを通ってみたもので、立ち寄ってみました。偶然お会いできて良かったです!」

 なんてな。
 本当は今日、森脇さんが日勤で18時に上がることを知っていて来た。

 森脇:「そうかそうか。それは良かった」
 愛原:「あの、良かったら、これから一杯どうですか?」
 森脇:「おー、そうだな。明日は公休だし、これから一杯やるか」

 明日が公休で、酒豪の森脇さんは帰り際に必ず一杯引っ掛けることも私は知っていた。

 森脇:「ただな、緊急事態宣言のせいで、もう都内の店じゃ、酒が提供されなくなったからな。寂しいもんだ」
 愛原:「そうですねぇ……」
 森脇:「ま、せっかくこうして愛原君と再会できたことだし、ノンアルで我慢するか。よし、俺について来い。俺の行きつけの店で飲もう」
 愛原:「ありがとうございます!」

 私は森脇さんについて行った。

[同日18:20.天候:晴 同区南池袋 JR池袋駅→山手線1751G電車8号車内]

 私達は帰宅客で賑わう池袋駅構内に入った。
 緊急事態宣言が出されているが、そんなに人が少なくなったわけではないように思える。

 森脇:「キミもこっちの方角なの?」
 愛原:「はい。今、菊川に住んでいます」
 森脇:「菊川か。江東区との境目だな」
 愛原:「そうですね」

〔まもなく7番線に、上野、東京方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 リサがいれば、どうしても電車は先頭車と最後尾に乗らなくてはならないが、今回はいないので中間車に乗る。
 もっとも、森脇さんがそれらを狙って乗るのなら、そうすることになるが。
 しかし、鉄ヲタでもない森脇さんは、わざわざ電車の端っこまで行くことはなかった。
 普通に階段やエスカレーターに程近い車両の所で電車を待った。

〔「7番線、ご注意ください。山手線外回り電車の到着です」〕

 パァァンと電子音の警笛を鳴らして、電車が入線してきた。
 東京でも特に賑わう新宿から来た電車ということもあり、車内はすし詰めの満員であるが……。

〔いけぶくろ~、池袋~。ご乗車、ありがとうございます〕

 この駅で、ぞろぞろと降りてくる。
 池袋駅もターミナル駅の1つであるが、新宿ほど人が多くないのか、多くの人が乗り込むとはいえ、車内の混雑は痴漢が出るほどではなかった。
 座ることはできなかったものの、黄緑色の吊り革に掴まることはできた。

〔「山手線外回り、田端、上野、東京方面行きです。まもなく発車致します」〕

 ホームから発車メロディが流れて来た。

〔7番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 駆け込み乗車があったのか、ドアが何回か再開閉して、それからやっとドアが閉まった。
 この時間、3分おきに電車が走っているのだが、それでも駆け込み乗車が無くなることはない。
 カクンと少し急発進ぎみに電車が走り出した。

〔この電車は山手線外回り、上野、東京方面行きです。次は大塚、大塚。お出口は、右側です。“東京さくらトラム”都電荒川線は、お乗り換えです〕

 森脇:「ところで、愛原君は今、探偵をやっているんだって?」
 愛原:「そうです」
 森脇:「すると、俺に何か聞きたいことがあって来たってことかな?」
 愛原:「すいません。情報料として、私が今夜出させて頂きますんで」
 森脇:「はっはっはー。いいよいいよ。俺なんかの情報で良ければ」

 森脇さんは勘が鋭いようだが、単なる年の功だろうか。

[同日19:00.天候:晴 東京都台東区上野 某居酒屋]

 森脇さんの行きつけは、上野駅に程近い場所にあった。
 こんな所にあるのかと思うような場所だ。
 どちらかというと、御徒町駅の方が近いのでは?と思うほどだ。

 森脇:「まあまあ。再会を記念して、カンパイと行こうじゃないか」

 私と森脇さんはカウンター席に横並びになり、ノンアルコールビールで乾杯した。

 愛原:「ぷはーっ!」
 森脇:「やっぱりアルコールが入ってないと味気無いねぇ。アルコールの入ってないビールなんて、ただのビール味のジュースだよね。なあ、大将?」
 店長:「すいませんね。都がどうしても自粛しろってうるさいもんで……」
 森脇:「ビール味のジュースなんて、子供の飲み物だよなぁ?愛原君」
 愛原:「でも何故か、子供に飲ませちゃダメなんですって」 

 私は御通しをつまみながら言った。
 本来、御通しは有料であるが、アルコールを出せない負い目からか、この店ではそれが提供できない間だけは無料とのことだ。

 森脇:「よく分かんないねぇ。最近の世の中、何でもそうだけど」
 愛原:「そうですねぇ……」
 森脇:「そうだ。先にキミの話を聞いておこうか。俺に何を聞きたいんだい?」
 愛原:「いいんですか?それじゃ御言葉に甘えて……」

 私は咳払いをした。

 愛原:「森脇さんは東京中央学園上野高校の出身だったんですよね?」
 森脇:「ああ、そうだよ。そのよしみで野球の応援とかしていたのに、ここ最近はめっきり弱くなったねぇ……。嘆かわしいことだ」
 愛原:「で、森脇さんが現役生だった頃は、木造の旧校舎だったんですよね?」
 森脇:「そうだ。今は教育資料館として残されているそうだが、やはり取り壊せなかったか……」
 愛原:「取り壊せない理由の中に、“トイレの花子さん”がいるからってのはありますか?」

 すると森脇さんは目を丸くした。

 森脇:「キミぃ、よく知ってるね。そうなんだよ。取り壊せない理由はオーソドックスに、『取り壊そうとすると、祟りがあるから』なんだけど、その『祟り』を起こしているのは“トイレの花子さん”なんだな」
 愛原:「その“トイレの花子さん”の正体が、イジメを苦に自殺した女子生徒の幽霊だということも分かっています」
 森脇:「なに?探偵さんはそんなことまで調べるのかい?」
 愛原:「警察がやらないことを代わりにやるのは、警備員と一緒ですよ」
 森脇:「そうなのか」
 愛原:「私が聞きたいのは2つなんです。森脇さんは、その“トイレの花子さん”の生前を御存知かどうか。それと、白井伝三郎を知っているかどうかです」
 森脇:「なるほど……」

 森脇さんはグラスに注いだノンアルビールをグイッと口に運んだ。

 森脇:「あいにくと、“トイレの花子さん”の名前までは知らない。多分、実家に卒業アルバムがあるだろうから、それで探すことは可能だろう」
 愛原:「後でそれを調べてくれるというのは……」
 森脇:「ああ。明日、休みだから探して調べてみるよ」
 愛原:「ありがとうございます!」
 森脇:「ただ、そのコのことなら何となく覚えてる」
 愛原:「えっ?」
 森脇:「真面目なコなんだが、今一つパッと成績が振るわないコだったな。今で言うところの、“不思議ちゃん”ってヤツか?まあ、“不思議ちゃん”でも成績優秀なパターンもあるようだが、彼女はちょっと違ったみたいだ。ギリギリ及第点は取れていたみたいだが、たまに赤点を取ることもあったからな。イジメられるきっかけとなった補習も、たまたま赤点を取っただけの話だろう」
 愛原:「今から半世紀近くも前のことなのに、よく覚えておいでですね」
 森脇:「同じクラスだったからな。で、顔も少しかわいいんだ。まあ、今生きてたら、しっかり白髪のオバちゃんになってただろうがな。はっはっは」

 やはり森脇さんと“トイレの花子”さんは同級生だった!
 しかし、この60代のオジさんと“花子さん”が歳同じとは……。

 愛原:「白井伝三郎のことは御存知ですか?」
 森脇:「俺達とは違うクラスのヤツだったが、普段から成績優秀のヤツだったんだ。ところが、たまたま試験の日は腹の具合が悪くて、とても試験に集中できなかったらしいんだな。そのせいで赤点を取ってしまったらしい。まあ、もともと理系で、文系はあまり得意ではなかったと言い訳していたらしいが」

 私は森脇さんの話を静かに聞いていた。
 ここではどちらかというと、白井の話よりも“花子さん”の話の方が詳しく聞けた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「業務終了」

2021-11-05 16:18:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「あ、先生帰ってきた」

 リサは事務所の窓から新大橋通りの方を見ながら言った。

 高橋:「よく分かんなぁ?」
 リサ:「ん。タクシーが事務所の前で止まったから」
 高橋:「それくらいで……ああ、ガチだ」

 高橋も窓の下を覗いた時、ちょうど愛原がタクシーから降りて来る所だった。

 リサ:「先生、うぇーい!」

 リサがギャルピースをしてみせる。
 もちろん、これは高橋から教わったものだ。

 高橋:「先生にギャルピースするんじゃねー!」
 絵恋:「でも先生、気づかずにビルに入っちゃったみたいよ?」
 リサ:「ちっ……!」

 しばらくして、エレベーターの到着する音が事務所の外から聞こえて来た。

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「先生、お帰りなさい!」
 リサ:「先生、お帰り」
 高橋:「外は暑かったでしょう!?今、冷たいお茶入れますんで!」
 愛原:「分かった分かった。それより高橋、オマエはそろそろ上がりだろ」
 高橋:「そうでした」
 絵恋:「はぁ?もう仕事終わりなの?」
 高橋:「俺には弟子としての仕事が他にあるんだ!」
 リサ:「料理当番。主に兄ちゃんがやる」
 絵恋:「主にってことは、リサさんもたまにするの?」
 リサ:「うん、たまに」
 高橋:「つったって、俺の手伝いをするだけじゃねーか」
 リサ:「オムライス作ったりとか……」
 絵恋:「オムライス!?」
 リサ:「ハンバーグ作ったりとか……」
 絵恋:「ハンバーグ!?……てっきり、レトルトのハンバーグだと思ってた」
 高橋:「俺はちゃんと挽き肉から作ってるぜ!これも無二の師匠、愛原先生に断固としてお応えして参る決意からだ!」
 愛原:「高橋、言い回しが某新興宗教みたいになってるぞ」
 リサ:「いずれ先生の奥さんになるから、私」
 高橋:「あァ?誰が先生の奥さんだよ!」
 絵恋:「そうよ!リサさんは私のお婿さんよ!」
 リサ:「私、女!」
 高橋:「同性婚なんて、まだ認められてねーぜ!あぁ!?」
 絵恋:「だったらアンタも先生と結婚できないわよ!」
 高橋:「俺は事実婚でもOKだぜっ、あぁっ!?」
 愛原:「あー、もう!オマエら、うるせっ!!」
 リサ:「1番丸く収まるのは、私が人間に戻ってから先生と結婚すること。兄ちゃんには、あのメイドさんがいるでしょ?」
 高橋:「う……」
 絵恋:「あ、そうそう。パールが、そろそろ連絡欲しいって言ってましたよ?」
 高橋:「それじゃ先生、俺は夕飯の支度がありますので……」
 愛原:「ああ、お疲れー。絵恋さんも、そろそろ帰りな。もう雨は止んだんだから」
 絵恋:「で、でも、もう少し……」
 リサ:「サイトー。先生の言う事は絶対」
 絵恋:「そ、その前に、お話があるんです」
 愛原:「話?何だ?」
 絵恋:「父が、先生に仕事の依頼があるそうです」
 愛原:「斉藤社長が!?」
 絵恋:「夏休み最後の思い出を私に作ってほしいそうです」
 愛原:「旅行か?だが、今は緊急事態宣言中で、遠出するのが憚れる時期だからなぁ……」
 絵恋:「近場でいいそうです」
 愛原:「あれか。この前の八丈島みたいに、『そこも東京都だから、都外に出る遠出にはならない』って言い訳か」
 絵恋:「それもあるんですけど、多分、本当の都内か埼玉県になるかもですよ」
 愛原:「どうして埼玉県なんだ?」
 絵恋:「私の現住所、埼玉の実家のままですから」
 愛原:「あ、住所移してないのか!」

 平日だけは都内のマンション、土休日は実家に帰るという生活では、住民票を移す必要は無いというわけだ。
 もっとも、斉藤社長の扶養家族になっていれば当然か。

 絵恋:「なので私にとっては、埼玉県内でもOKなんです」
 愛原:「そうか。まあ、候補は探しておくさ。それより、依頼書をもらいたいものだな」
 絵恋:「父がファックスするそうです」

 そう話しているうちに、ファックスの着信がある。
 リサはファックスを取った。

 リサ:「うん、やっぱり斉藤社長から」
 愛原:「そうか。……斉藤社長は何を考えている……?」
 絵恋:「え?何ですか?」
 愛原:「いや、何でも無い。話は分かった。前向きに検討するから、今日は帰りなさい」
 リサ:「サイトー。先生の命令は絶対」
 絵恋:「わ、分かってるよ……」
 リサ:「先生に『脱げ』と言われたら脱がなければならない。『パンツ見せろ』と言われたら、見せないといけない」

 リサは絵恋のスカートをバッと捲り上げた。

 絵恋:「きゃっ!リサさんのセクハラ最高!!」
 愛原:「誰もそんなことやれって言ってねーよ」

 絵恋のスカートの中が一瞬見えるが、学校指定のスパッツを穿いているのでショーツは見えない。

 高橋:「おう、そうだぜ。なもんで俺、脱ぎますね」
 愛原:「誰もそんなことやれって言ってねーよ!」

 お気づきだろうか。
 この中におけるヒエラルキーは愛原がトップのはずなのに、実質的にはリサが牛耳っていることを。

[同日18:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所→愛原のマンション]

 絵恋:「それじゃ愛原先生、お疲れさまでしたー!リサさん、さようなら!」
 リサ:「ああ。それじゃ」
 愛原:「気を付けて帰れよ」

 結局、事務所の終業時間まで居座った絵恋だった。
 来客があればそれを機に帰されるところだったが、結局今日は無かったので。

 愛原:「本当に絵恋さんはリサのことが好きなんだね」
 リサ:「デザートのつもりだったけど、オードブルに格下げしてやろうかな……」
 愛原:「オードブルってデザートより格下だったっけ?」
 リサ:「せっかく事務所で先生と2人きりになれると思ったのに……」
 愛原:「そうなったら、何をするつもりだったのかな?」
 リサ:「1つの部屋で男女一組がヤることといったら、1つしか無いじゃん?」

 リサは目をギラつかせて言った。

 愛原:「事務所をラブホ代わりに使おうとすんな」
 リサ:「じゃ、本物のラブホ行こ!ね!?ラブホ!」
 愛原:「やめなさい」
 リサ:「何で!?今の私は人間じゃないから、先生がタイーホされることはないよ!?」
 愛原:「まあ、いいからいいから」

 ここまで誘われて、現に一緒に行ったら、男だけが逮捕されるのも男女不平等だと思うのは、作者が男だからか?

 愛原:(もっとも、リサの言う通り、相手がこのリサだったら逮捕されないけどな)

 しかし……。

 愛原:(警察からの取り調べを受けることはないが、善場主任からは、警察よりも厳しい取り調べを受けることになるだろう)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「雨上がり」

2021-11-05 11:17:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日15:00.天候:曇 東京都千代田区大手町 大手町中央ビルB1F防災センター]

 熊谷:「2度とこんなことしないように。分かった?」
 愛原:「はい、すいませんでした」

 熊谷さんに鍵を返した私は、多少の説教を食らうこととなった。
 顔は真顔で怒っているつもりだが、私が持参した菓子折りの菓子をモグモグやりながらの説教なので、殆ど説得力は無い。

 熊谷:「他にも持ち出してる物は無いだろうね?」
 愛原:「と、とんでもない!拝借したのはエレベーターの鍵だけですよ!」
 熊谷:「本当かい?それならいいけど……」
 愛原:「あ、そうだ、熊谷さん。拝借ついでに1つだけお願いが……」
 熊谷:「何だい?またロクでもないことか」
 愛原:「い、いえ、森脇さんがどこにいらっしゃるか教えて頂きたいんですよ」
 熊谷:「森脇さん?」
 愛原:「熊谷さんと同世代の方ですが、まだ辞めてないですよね?」
 熊谷:「あの人は70歳まで働くとか言ってたな。どうしてだ?」
 愛原:「森脇さんは東京中央学園の御出身だそうですね?」
 熊谷:「あの人は生まれも育ちも台東区だからね」
 愛原:「実は私、里親をやっていまして、里子が東京中央学園に通っているんですよ」
 熊谷:「里親ってキミ、まだ結婚していないだろう?」
 愛原:「もちろん、ただの里親制度ではありません。ある事情がありまして、特別里親制度の元、私がそれに抜擢されまして……」
 熊谷:「ふーん……。まあ、違法なことじゃなければいいや。もちろん、里子は男の子なんだろ?」
 愛原:「は、はい、そうです」

 いいえ、バリバリのJKですw

 熊谷:「だよな。まだ結婚もしていないキミが、女の子を里子にしたら、もう犯罪同然だもんな」
 愛原:「お、仰る通りです」

 むしろリサの方から、その性犯罪を持ち掛けて来るほどです。

 愛原:「それでその、里子が東京中央学園に通うもので、確か森脇さんがそこの出身だと聞いたので、ちょっと御挨拶をと……」
 熊谷:「出身と言ったって、あの人が東京中央学園を卒業したのは、今から半世紀くらい前だろ?そんな先輩過ぎる人に挨拶しても、どうかと思うけど……」
 愛原:「と言いつつ、実は凄いコネとか持ってるかもしれませんよ」
 熊谷:「凄いコネね……。そんなのがあったら、うちの警備会社で警備員やってるとは思えないけど……。まあ、いいや。俺がちょいと調べてやるよ」
 愛原:「ありがとうございます」

 熊谷さんはどこかに電話した。
 そして……。

 熊谷:「分かったぞ。森脇さんは今、豊島学園大の警備隊にいるとのことだ」
 愛原:「豊島学園大。池袋にある私大ですね。分かりました」
 熊谷:「ただ、今日は休みらしいぞ」
 愛原:「あらま!」
 熊谷:「明日は24(時間勤務)、明後日は明け、明々後日は日勤だそうだ」
 愛原:「そ、そうですか……。ありがとうございます」

 森脇氏は私が現役の警備員だった頃、懇意にしてくれた人の1人だ。
 酒豪で、一緒の現場になった時とか、社員旅行が行われた時とかは、よく酒を奢ってくれた記憶がある。
 私がふと気づいたのは、あの人が東京中央学園の出身者だったことだ。
 実は東京中央学園の野球部は、昔は強豪で、よく甲子園に顔を出すほどだった。
 私が現役の警備員だった頃の事だ。
 その時、森脇さんがその中継を食い入るように観ていた記憶がある。
 私がどうしてそんなに関心があるのかと聞いた所、森脇さんは、『俺はこの学園の出身なんだ』と答えた。
 昔の話だからすっかり忘れていたが、ふと思い出すことがあるもんだ。
 私が昔、袖を通していた警備会社の制服を見ていたことも理由も1つだ。
 で、それがどうしたのかというと……。

 愛原:「もしもし。善場主任ですか?」

 私は防災センターをあとにすると、1階のエントランスホールにあるベンチに座り、そこで善場主任に電話を掛けた。

 愛原:「私の古巣の警備会社に、白井伝三郎と同窓生と思しき人がいるんですよ。幸いその人、私と懇意にしていたこともありまして、当時の頃を聞いてみようかと思います」
 善場:「そうですか。その人、白井のことを知っていそうですか?」
 愛原:「分かりません。そこは聞いてみませんと……」
 善場:「そうですか」
 愛原:「もしかしたら、“トイレの花子さん”が首つり自殺したことくらいは知っているかもしれません。そこから掘り下げて行ければいいなと思っています」
 善場:「分かりました。期待しております」
 愛原:「善場さんの所では、白井の情報は?」
 善場:「これといってサッパリです。しかし、私は今でも生きていて、リサ・トレヴァー以上の生物兵器を造る研究を続けているものと信じています」
 愛原:「失礼ですが、その自信はどこから?」
 善場:「愛原所長は、今でも子供が行方不明になっている事件が発生しているのを御存知ですか?」
 愛原:「キャンプ場で起きた事件とか、自宅の近所で行方不明になった事件とか、いくつかありますね?」
 善場:「私は白井が関わっているのではないかと思っているのですよ。実はBOWなら、“神隠し”を起こすことは可能なので」
 愛原:「あっ……!」

 私がリサが披露した血鬼術……もとい、催眠術を思い出した。

 善場:「リサ・トレヴァーの亜種なら、まだ何人かいて、それが白井の指示に従っているのだとしたら……」
 愛原:「あ、あの、主任。その事なんですけど……」

 私がリサが話してくれた、栗原蓮華さんのことを話した。

 善場:「そうですか。分かりました。それでは栗原さんの方は、私共が対応します。森脇氏の方は、愛原所長にお任せします」
 愛原:「わ、分かりました」

 確実な方を善場主任は選んだか。
 と言っても、森脇さんは善場さん達の事なんか知らないだろうから、善場さん達がいきなり行っても驚くだけだろう。
 それなら、顔見知りの私が行った方がまだ良いというわけだ。
 私は電話を切って、ようやく雨の上がった外へと出た。

 愛原:「タクシー」

 そして、永代通りを流して走る空車のタクシーを拾い、それに乗って事務所へと戻ることにした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする