![]() | One Hundred Mountains of Japan |
クリエーター情報なし | |
Univ of Hawaii Pr |
![]() | 日本百名山 (新潮文庫) |
深田久弥 | |
新潮社 |
深田久弥の「日本百名山」は、日本の山の愛好家にとってはバイブル的な本だ。この本は、単なる山ガイドではなくその山の品格、歴史、個性を選定の基準に百座が選ばれている。この百座に選ばれなかった山々でも素晴らしい山がいくらもあり、これが最良とは思っていないが、日本の北から南までを山を網羅し、日本の歴史や文化を山に絡めて語られた山岳随筆として素晴らしい作品だと思っている。
その「日本百名山」を、英国の登山愛好家がこつこつと10年以上かけて全編英訳し今年の1月、「One Hundred Mountains of Japan」のタイトルで出版したという。訳者は、スイスの国際決済銀行に勤めるマーティン・フッドさんで、日本に留学したり働いたりした経験があり、登山や山スキーを楽しんでいたそうだ。英訳を始めた動機は「日本語を忘れないように」と、日本で初めて登った白山(石川県)の章から翻訳を始めた。作品中で多く引用される「万葉集」「奥の細道」といった古典の英訳には苦労したそうだが、山田さんという女性に古典の解釈を助けられた。その後、マーティンさんと山田さんは結婚し、2人で完成した英訳作品を出版しようと、深田久弥の長男に了解をとり出版にこぎつけたという。
海外では、その国の歴史や文化を山と共に語られた本はなく、英訳本が出る事で日本人が育んできた自然との関係を、海外の人が深く理解するきっかけになるはずである。特にマーティンさんの訳は、英語が詩的で美しく、しかも著者の味が残ったものになっているそうだ。残念ながら、この英訳本を読みこなすほどの語学力はないが、外国の人が日本の山に惹かれ、英訳して世界に発信してくれるなんてとても嬉しい事である。日本の山は、四季折々に彩を変え、その都度新しい発見を我々にもたらしてくれる。世界の山々を知っている訳ではないが、世界に誇れる山々が日本には数多くあるという事は自信を持っていい。
因みに、白山の出だしはこんな風に訳されているそうだ。
《日本人は大ていふるさとの山を持っている。》
《A mountain watches over the home village of most Japanese people.》