虹の岬の喫茶店 | |
クリエーター情報なし | |
幻冬舎 |
小さな岬の先端に喫茶店があった。そこには一人で店を切り盛りしているおばあさんがいた。彼女は、いつも「美味しくなーれ」って念じながらコーヒーを淹れてくれる。しかも、お客さんの人生に寄り添う音楽を的確に選曲してくるところが凄い。心に傷を抱えた人々が、その店に引き寄せられるように集まってくる。彼らは、その店との出会いで変化し始めて行くという素敵な話だ。
物語は、短編の連作というスタイルを採っていて、それぞれの章ごとに音楽がテーマになっている。テーマとなった曲は「アメイジング・グレイス」・「ガールズ・オン・ザ・ビーチ」・「ザ・プレイヤー」・「ラブ・ミー・テンダー」・「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」である。しばらく前にABBAの「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」を聞いたばかりだったので、何だか嬉しかった。そして、最後は主人公の悦子さんの章で終わる。悦子さんが、なぜ一人で店を切り盛りしながら、時折海を眺め何を待ち続けていたのかが明かされる。そのくだりは、まるで映画を見ているような感じで頭にシーンが浮かんできた。
さて、このお話のモデルとなった喫茶店は、実際に千葉県の明鐘岬にあるそうだ。作者の森沢明夫氏が実際に訪れたことがあり、その喫茶店の事が気に入って小説化されたという。そして、いよいよ明日から、この小説にほれ込んで映画化までしてしまった吉永小百合の「ふしぎな岬の物語」が公開される。もちろん、喫茶店の女主人、悦子さんを演じるのは吉永小百合である。小説も素晴らしかったが、映画も是非見てみたい。
それはさうと、「悟浄出立」は面白いです。
万城目学(まきめまなぶ)さん38歳の作品ですが、
漢籍に通暁してゐて、教養の深さを感じます。
「父司馬遷」「虞姫寂静」など落涙を禁じえません。
また、後者で「四面楚歌」の状況を私は、40年間
間違へてゐたことを発見しました。
ぜひ一読ください。
悟浄出立も、すぐに予約したのですが、まだ順番待ちです。
番が回って来るのを楽しみにしてます。