不思議な

蒸し暑く、汗の気になる季節である。

わたしは顔に汗をかかないので一見涼しげに見えるが、実は結構汗っかきだ。

しかし、普通にかいた汗は臭わない。

問題は精神的な動揺でかいた汗だ。

例えば仕事で失敗をしたとか、厄介なお客さんに対応しているなんてときは

背中にどっと汗をかくのだが、これもほとんど臭わない。

問題は、誰かと話しているときにかく脇汗だ。

談笑しているにも関わらず、びっしょりと脇汗が出る。

本当は自分が緊張しているのが分かる。

ニコニコと相手と話しているけれど、気持ちは全く楽しんでいない。

嫌いな相手ばかりではないのだ。

嫌いじゃない相手でもそういう汗が出る。

そして、このときの汗が独特の臭いを発する。

例えるなら、アゲハの幼虫を突付いたときのような臭い。

あまり一般的ではない例を挙げてしまったが、アゲハの幼虫を突付くと

なんともいえないつんとする臭いを発するのだ。

なんかね、楽しい会話をしなきゃいけないっていうプレッシャーがあるんだ。

相手とうまく会話しなきゃいけないっていう強迫観念。

別にいいのにねぇ。

馬鹿だねぇ。

フランス人というよりは

20日前に髪を切ったばかりというのに、もうモサモサしてきた。

昔から、髪がやたらと早く伸びる。

「苦爪楽髪」といって、苦しいときには爪が早く伸び、

幸せなときには髪が速く伸びるというけれど、爪も髪も伸びるのが早い。

もっともこのことわざは、全く逆の「苦髪楽爪」ともいうから意味不明なのだが。

新陳代謝がよいのだろうか。

中学時代の同級生と久々に会ったときに白髪の話になった。

お互いまだ、気になるほどには出てきていないのだが

二人とも元々髪の色が薄いから、染めてるみたいだよねと言うと

「自分はXXちゃん（わたしのこと）ほどではない」と言う。

「XXちゃんは、全ての色素が薄いから。フランス人みたいに」

フランス人・・・

って、色素が薄いのか？

欧米人じゃなくてフランス人・・・

確かに子供の頃の写真を見ると、周りの子が健康的に日焼けしているのに

わたしだけ真っ白である。

目の色も髪も茶色い。

しかし顔立ちは、ものすごく平坦。

髪が茶色いのも色が白いのも、からかいの対象だった。

今はみんな美白に夢中だけど、子供の頃は日焼けこそがステイタスだったから。

なまっちろいのは気持ち悪かったのだろう。

子供のわたしに言ってやりたい。

大人になったら、羨ましがられるよって。

まあ、そんな感傷はどうでもいい。

先日、髪にきらりと光るものがあったので白髪かと思って抜いてみると

白髪には違いないのだろうが、なんと透明であった。

テグスのように透明で細い。

フランス人というよりは・・・

白熊？

かけてくるぞと勇ましく？

先日、やっと美容院へ行った。

セミロングを「颯爽とした大人の女風ショート」にするつもりだったのだが

出来上がってみると「まったりしたこけし」だった。

思い通りにはいかないものだ。

一年ぶりに髪を切るので、いささか迷いが生じ、中途半端なショートにしてしまったせいだ。

それでも美容院から帰ってきたばかりのときは、ふんわりとして「こけし度」も低かったのだ。

髪を切るとき、どの美容師さんにも頼むのが「なるべく頭を大きく見せてくれ」ということ。

というのは、わたしの髪は細い上に腰がなく量も少ない。

とにかくボリュームがあるように見せたいので、「頭をでっかく」という注文になってしまう。

パーマをかければいいのだけれど。

停電断水のとき、パーマかけてた人はどうしたのかと尋ねたら

幸いパーマの人はいなかったが、カラーの人はいたそうで

完全に断水する前になんとか洗い流し、タオルを巻いて帰ってもらったという。

風邪引きそうだ。

結局、中途半端な長さの上に、美容院のブローが取れてしまうと「こけし度」が高まってしまった。

ただでさえ、のっぺりした顔立ちだというのに。

今のところ、なんとか頭をふくらませて出かけているが、毎日のブローは電気の無駄遣いじゃなかろうか。

やっぱりパーマかけるか。

水持参で。

タオル巻いて帰る覚悟で。

やりませんけど

一年間、美容院へ行っていない。

こんな人いるんだろうか。

いるだろうな。

前髪だけ自分で切って、まとめ髪にしてしまえばなんとかなる。

しかし。

先日、前髪を切っていて、切ってはいけないところを切ってしまった。

もう限界だろう。

一年前はショートだった髪型が今やセミロングだ。

本当はずっと、パーマをかけようと思っていたのだ。

しかし今、パーマをかける気持ちの余裕がない。

この際、また短くしてしまおう。

洗髪に時間もかからず乾きも早い。

先日、三日ほど風呂に入れなかったときも、強く思ったのだ。

落ち着いたら髪を切ろう、と。

だが。

落ち着かないな、なかなか。

後ろも自分で切っちまおうか。

いくらなんでも・・・

相対か絶対か

先日、母の実家へ行くと祖母に

「夏はやせちゃったなーと思ったけど、今はふっくらしたね。その方がいいよ」

と言われびっくりした。

なぜ驚くかといえば、この祖母は９２歳。

目も耳も悪くなく、飲んでいる薬もなく、記憶力もいい。

さすがに年のせいか、暮れから足が痛いと言っているが

それまでは毎日畑に出て野菜を作っていたのだ。

それにしたって、わたしの顔を見るなり「あら、XX子」。

孫は１１人、そのうち半分は女、しかもうちは三姉妹。

よく誰かと間違えたり名前が分からなくなったりしないものだ。

しかも夏に訪ねたときのわたしの様子を覚えていたとは。

恐るべき観察力だ。

確かに昨年の夏、わたし史上一番といっていいほどやせていたのだ。

６月の半ばから食欲がなくなり、ダイエットをしたことがある人ならわかるかもしれないが

食べなくなってすぐに体重が落ちるわけでもやせるわけでもない。

三食抜けば1キロくらいはすぐに落ちるが、それは単に胃が空になっただけでやせたわけではない。

やせるのは、食べない状態が続いてしばらくしてからだ。

４０.５キロまでは量ったが、後はもう怖くて体重計に乗るのをやめてしまった。

３９という数字を見てしまったら、立ち直れないような気がしたからだ。

その後、内科で相談したところ食欲の出る薬を処方され（そんなものがあるのだ）

７月の半ばにはだいぶ食べられるようになっていたのだが

その後もしばらく体重は戻らなかった。

テレビでも街でも口を開けば「ダイエット」「やせたい」という女の子は多いが

彼女らのほとんどがやせすぎである。

やせているのに自分がやせているという自覚がなく、もっとやせたいと言う。

とある女性タレントがテレビで

「どんなにやせていても、自分は太っているからもっとやせなきゃと思っていた」と語っていたが

それはもう、病気である。

十分に美しいのに整形を繰り返したりという悲劇も、そういうところから生まれるのだろうか。

他人との比較がコンプレックスを生み、コンプレックスは人を不幸にする。

急にやせたせいで、顔がたるみ、しわが増え、わたしは老けた。

しかしそういうことも、昨年の苦しみを思えばどうってことないじゃないか。

祖母が「夏よりいい」と言ってくれたじゃないか。

もっと美しくなりたい、若くありたいと願うより

まあまあの自分で納得したほうが幸せなんじゃないだろうか。

なんて思うのは、負け惜しみだろうか・・・