子供が閑居して

20代の半ばの頃、一生独身でいるつもりだというわたしに

当時40半ばと思われる同僚女性が「でも子供は産んだほうがいい」と力説した。

「子供を育てることで人は成長する」と続ける彼女に、内心うへーと思った。

だったら子持ちの人はみんな立派なんじゃないの。

傍若無人なおばさんが（おじさんも）よくいるけれど、あれが成長の成れの果てなの。

最初からちゃんとした人は、子供など持たなくてもちゃんとしてるんじゃないの。

などなど、反感を覚えたものだ。

子供を持つことそのものは否定しない。

わたしも、結婚はしなくても子供は欲しいと思っていた時期があった。

しかし「結婚」＝常識みたいな考え方にはどうにも賛成しかねたのだ。

あれから20年近くが経ち、40代独身は珍しくもなくなり

世間から奇異な目で見られることもあまりない。

ただ最近、結婚や子育ては人を成長させるかも・・・と感じるときがある。

人生の第一ステージは誕生から子供時代

第二ステージは思春期、恋愛、そして大人に

第三ステージは結婚、子育て

第四ステージは、子供の手が離れ仕事や趣味の円熟期

第五ステージは老後

とまあ、オーソドックスな人生すごろく。

ちょっと古臭いかもしれないけど。

このすごろくで言えばわたしは、第二ステージで止まったままなのである。

子育ての苦労も知らず、ＰＴＡにも参加せず、嫁姑や親戚づきあいの煩わしさもなく

ママ友（という言葉は嫌いだが）との軋轢もなく・・・

とにかく、人と関わる煩わしさからことごとく免除されている。

というか、そのためにわたしは結婚しなかったのだ。

人と関わる機会を増やしたくない一心で独身を選んだのだが

最近ふと、だから自分はいつまでも子供じみているのだろうかと思う。

知人の男性に、結婚前と後では、驚くほど変わった人がいる。

なんというか、ひどく大人になった感じ。

成長したなーと妙な感慨を抱いてしまう。

まあね、年齢的にも責任ある立場になり、落ち着きが出てきたってのもあるんでしょうけどね。

虐待とかネグレクトとか、ろくでもない親もいるんだし

必ずしも結婚や子育てが人を成長させるわけでもないんだけど。

どうでもいいことを考えてしまうのは、最近あまりにも自分が子供っぽくて

嫌になる出来事があったからなんですが。

こういうことで悩む自体が子供なんだよなー。

やっぱり

自転車で出かけたら迷子になった。

いつの間にか、まったく知らない場所にいた。

おかしい。

どうしてこんなところに来てしまったのだろう。

のどが渇いたので販売機で何か買おうと思ったがお金を持っていない。

どうして手ぶらで来てしまったのだろう。

しかもひどく薄着だ。

そのうち、大雨に降られてびしょ濡れになる。

寒い。

どうしよう。

大きな阿吽像のような物を見つけたあたりで気が付いた。

これ、夢じゃないか？

どう考えても夢だろう。

そう思うとちょっと安心して落ち着いた。

そのうちうっすらと覚醒し、布団にいる自分と傍らに眠る猫に気づいた。

やっぱり。

夢か。

それから安心して、泥のように眠った。

フランス人というよりは

20日前に髪を切ったばかりというのに、もうモサモサしてきた。

昔から、髪がやたらと早く伸びる。

「苦爪楽髪」といって、苦しいときには爪が早く伸び、

幸せなときには髪が速く伸びるというけれど、爪も髪も伸びるのが早い。

もっともこのことわざは、全く逆の「苦髪楽爪」ともいうから意味不明なのだが。

新陳代謝がよいのだろうか。

中学時代の同級生と久々に会ったときに白髪の話になった。

お互いまだ、気になるほどには出てきていないのだが

二人とも元々髪の色が薄いから、染めてるみたいだよねと言うと

「自分はXXちゃん（わたしのこと）ほどではない」と言う。

「XXちゃんは、全ての色素が薄いから。フランス人みたいに」

フランス人・・・

って、色素が薄いのか？

欧米人じゃなくてフランス人・・・

確かに子供の頃の写真を見ると、周りの子が健康的に日焼けしているのに

わたしだけ真っ白である。

目の色も髪も茶色い。

しかし顔立ちは、ものすごく平坦。

髪が茶色いのも色が白いのも、からかいの対象だった。

今はみんな美白に夢中だけど、子供の頃は日焼けこそがステイタスだったから。

なまっちろいのは気持ち悪かったのだろう。

子供のわたしに言ってやりたい。

大人になったら、羨ましがられるよって。

まあ、そんな感傷はどうでもいい。

先日、髪にきらりと光るものがあったので白髪かと思って抜いてみると

白髪には違いないのだろうが、なんと透明であった。

テグスのように透明で細い。

フランス人というよりは・・・

白熊？