新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

紙パルプ産業界は時代の変化に対応できるか

2013-12-03 08:39:54 | コラム
課題は「変化に如何に対応するか」だ:

2日は毎度お馴染みの商社マンと語り合った。為替が¥102台を覗くに至っても、中国等の紙類輸出の新興勢力は対日攻勢を如何に強化するかを積極的に検討しているようだと聞かされた。内需に期待できない以上、さもありなんと思って聞いていた。国産紙は謂わば今年の第一次の値上げが何とか定着して来たが、目下話し合い中の第二次は難航が見込まれている由だった。

今回主な話題となったのは「装置産業である紙パルプは主たる需要分野の印刷媒体が今後とも衰退が続くと見込まれている以上、如何にして時代の変化と流れに対応していくのか、あるいは産業自体が変化して対処すべきなのか」だった。結論から先に言えば「こういう形に変化すべきでは」というような結論は出しようがなかった。

我々の意見が一致した最大の問題点は「装置産業であり、主原料が木材繊維であることからすれば、川上と川下の何れで変化を考えるのか」だった。極論を言えば「紙類は木材繊維を物理変化させたものであり、化学的に変化させていない以上、画期的な新製品を生み出すことは至難の業であること」なのである。

この辺りは東レが炭素繊維を作り上げたことであるとか、富士フイルムが内視鏡や化粧品に活路を求めて経営体質を変化させたのは訳が違うだろうということ。それどころか、現在のディジタル化というかIT化が進んでいる時には「紙を使わないで済む」製品が続々と現れていても、防御の体制も十分に取れていないのではないかとの難問がある点だ。

実は、アメリカでは新聞を始めとする印刷媒体の衰退は21世紀に入ってから急激に進み、05年頃から大手製紙会社数社がコアの製品である印刷用紙事業を売却し、謂わば「脱製紙」に向かって始動していたのだった。世界最大手のインターナショナル・ペーパー(IP)などは「アメリカ国内には新規の設備投資をしない」とまで断言した。

アメリカの大手製紙会社そのほとんどが広大な面積の山林を所有し、そこで育てた樹木を伐採して先ず建材(製材品等)を生産し、その残渣をチップとして製紙の原料とするシステムになっている。簡単に言えば、住宅産業の動向に大きく左右される体質なのである。従って、現在のように長引いていた住宅産業の景気が回復期に入れば、業績も改善されてくるのだ。

しかし、我が国の製紙産業界では一口に言えば「アメリカのような大口径の原木に依存して原料としている体質ではない」ので、川上に遡って簡単に建材の需要回復に活路を求められるシステムは構築されていないのだ。しかも、アメリカの個人住宅は木材建築が圧倒的だが、我が国では東京都内でも見かけるように高層マンションの新築ばかりでは、木材の需要は期待できない気がする。

今回話し合った我ら二人とも自他共に許した悲観論者なので、これ以上議論を進めてもマイナス材料しか出ないだろうと意見が一致して、話題を切り替えてしまった。

上記のIP等は自国を見捨てて中国やブラジルでの投資で大型マシンを建設しているが、これが果たして何処まで成功するかは興味深いものがある。即ち、新興国においては結局は先進国相手の輸出に依存せざるを得ないと思わせるからだ。