新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2014年度の世界の紙・板紙の統計に思う

2015-12-02 09:49:21 | コラム
中国が果たして世界第2位の経済大国の名に相応しいのか:

アメリカの紙パルプ産業界専門の調査機関、RISIが昨14年度の全世界175ヶ国の紙・板紙の生産と消費量の統計を発表した。それによれば、消費は対前年比0.7%増(以下何れも対前年比)の4億748万 ton、生産は1.0%増の4億64万 tonとはなっていた。

地域別に見れば、欧州42ヶ国では消費が0.3%増の9,741万 ton、生産が1兆628万tonで0.1%増だった。北米、即ちアメリカとカナダでは消費が7,715万 tonで▲0.1%で生産は8,426万 tonの▲0.8%となっていた。今となっては2年前の統計に近くなってしまったが、欧州では成長が見られたものの肝腎の北米ではマイナス成長を見せて、景気の不振というよりも紙媒体の衰退が続いていることを示したように思えてならない。

我が国は消費が2,735万 tonとほとんど横ばいで、生産は2,624万 tonで▲0.9%で、遺憾ながら景気が未だ回復途上にあったことを見せていたのではないかと感じた。

上記の統計から大まかに判断すれば、ICT化が目覚ましく進んだ北米と日本では印刷(紙)媒体の続落傾向が続き、それが紙・板紙の消費量の減少に繋がっているということだとみえる。一方、欧州での下げ止まりはICT化による印刷媒体の低迷期を脱したとみるのか、踊り場に来かのか何れだろう。

ここで世界第2位の経済大国・中国である。消費は1億329万 tonと1.9%の成長で生産は1億758万 tonと2.8%と増加傾向を続けていた。大雑把にいえば、新興国が全世界の成長を支えているということだ。因みに、アジア30ヶ国では消費が1億8,308万 tonで、生産が1億8,295万 tonと2.3%の伸びとなっていたのだ。

そこで、私の主張である「中国を何かにつけて世界第2位と言うのはおかしい。その13億5,569万の人口を考えて言え」に基づいて、上位30ヶ国の人口1人当たりの消費量を採り上げていこう。

第1位は13年と同様にベルギーで317.3 kgで前年比+7.8%、2位はオーストリアで255.7 kgで+2.1%、3位はドイツで246.1kgの+4.2%、4位には前年度27位のUAEが236.4 kgと+91.3%という脅威の成長でトップ10入りを果たし、5位には前年6位のフィンランドが235.3 kgで+14.0%、6位がアメリカで前年の4位から転落の224.0 kgで±0%、7位が我が国でここでも前年の第5位から地位を下げた215.1 kgと±0%だった。以下、8位が前年の10位から上がってきたオランダで201.7 kgの+8.4%、9位は韓国でこれまた7位から転落した195.0 kgで+0.4%。10位にはニュージーランドが前年の11位から一つ上がる190.1 kgの+7.2%が入った。

意外にも上位10ヶ国中ではマイナス成長が見られず、私にはICT化の悪影響(?)が収束したかにみえるのだ。実は下記のことが言いたくてこの統計を採り上げたのだ。

中国は前年の73.2 kgから76.2 kgと+4.1%という堅調振りだったかに見える。だが、20位のチェコでも143.1 kg、30位のクウェートが110.2 kgだったことを見れば、アメリカや我が国のほぼ3分の1程度に過ぎない。30位のクウェートと比べてもその70%見当と小さい。「これでも世界第2に経済大国だと言えるのだろうか」と、識者やマスコミに問い掛けたいのだ。中国は単に大きな人口に押し上げられた世界第2位ではないのか。

私はICT化の進捗が紙・板紙の需要にマイナスに作用するのもさることながら、これから先の世界の消費と需要の伸びを支えていくのは中国を始めとする新興勢力となることが益々明瞭になって来たと思わせてくれた統計だったと思うのだが。

参考資料:紙業タイムス社刊”FUTURE” 1802号