新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月30日 その2 解散の大義が弱かったのではという理由

2017-09-30 11:08:18 | コラム
消費税率引き上げを考えると:

私は安倍総理がこれを解散の理由の一つに挙げた時に「弱いのではないか」と感じたとは既に述べた。だが、その根拠にまでは触れていなかった。聞いていて感じたことは、増税分の使途が何であれ、プライマリーバランスがどうあろうと、その原資となってくるのは所詮は国民と企業が納める税金なのであるという点だった。

税収の増加が先か、景気の回復が先かなどという議論は「鶏と卵」論にも似たりで、決め手はないと思う。そこで、私は税収の決め手となるものを「企業が増益となるような景気」の状態を基本として考えてみようと思い立った。簡単に決めつければ、景気が良くなって国内外の需要が盛り上がり、製品が順調に売れてそれに伴って企業の利益が増えてくるとしよう。

そうなれば、それまでは萎縮していた経営担当者たち(現在の経営陣には往年の松下幸之助のような経営者はいないと見做している)も勢いづいて躊躇い続けていた昇給もさせるし、配当も増額する気になるだろう。法人税も増えるだろう。そういう段取りになれば、個人の消費も伸びていってGDPの伸びを順調に支えることだろう。消費税収も増えていくだろう。

この筋書きは大変結構なことだと思う。だが、肝腎の税収の増加は所詮は国民のお金の中から生じていくものでしかないのだと、私には思えるのだ。仮令、海外の諸国の景気も回復して我が国の輸出も順調に伸びても、今や我が国のGDPに占める輸出の比率などは一桁なのだ。依存するのは飽くまでお国内での生産であり個人消費の増加というのか成長だ。

そこで現状を見れば、アベノミクスが最初から目指した2%のインフレは未だに達成されていないし、寧ろ街中にはデフレとしか思えないような値下げ競争が止まっていないとお見える。しかも、総理が繰り返し企業に昇給を求められても、そこまで出来ているのは大手の企業の間だけで、我が国に無数にある中小以下の株式会社までには浸透していない。

だがしかし、そうだからといって何時までも多くの経営者たちが思い切って給与水準を引き上げてまで消費を盛り上げようと試みるだけの度胸と勇気があるかといえば、私には極めて疑問に思える。その根拠は後難を恐れて言い続けてきたことで「経営者の劣化」がかなり顕著であるからだ。

私は現在の我が国の景気がバブル期のような活気を取り戻すとは思っていないが、その陰には世界全体の経済が活況を呈していないのも一つの大きな原因であると思っている。アメリカの景気は確かに順調だが、トランプ大統領は「アメリカファースト」を標榜され、対米輸出の大手である中国や我が国を「怪しからん」と言わんばかりに責めている始末だ。即ち、自国のことばかり考えているのだ。

私が安倍総理の解散の演説を聴いていて「弱いのでは」と感じた根拠はこのようなものだが、資本主義を信奉する体制にあっては、国民が自然に増税に応じられるような景気の回復が先だろうとは思うだが、その前に企業が十分に利益を挙げてくれねばならないし、その為には国民の一人一人の可処分所得が増えなければ如何ともしがたいのだ。その為には企業が十分な利益を挙げる必要があるのだと、何処まで行っても止まらない気がする。だが、国民全体の25%以上を占めている我々後期高齢者の多くは、可処分所得が増える望みはないのだ。


小池旋風の回顧

2017-09-30 10:16:01 | コラム
良く考えれば自分も真っ向から旋風を浴びていた:

ここ数日間は小池百合子さんと希望の党のことばかり論じていた。そうなった理由をよくよく振り返ってみれば、それは小池さんが毎日のように新たな展開をして見せたし、マスメディアが競って採り上げたからだったと思う。何を隠そう、それについつい釣られていたのが自分だったということ。

更に振り返れば過日Prime Newsに登場した細野豪志が、司会の反町にどれほど辛辣且つ無礼に突っ込まれても全く動揺することなく、顔色一つ変えずに余裕綽々で対応して見せた裏には何があったのかとは論じて見せた。何かがなければ、あれほど落ち着いていられないのだとは思ったが、小池さんがあれほどの筋書きを着々と準備していたとは思いも及ばなかった。今となっては驚くだけだった。

そこに今度は若狭勝の満を持しての登場である。私はこの人物が一体全体何をしたくて自民党在籍中から小池さんを側近として支持したかと思えば、小池さんが都知事になった後の補選に立候補して当選して見せたりしたのだ。そうかと思えば、自民党を脱党して細野豪志以下の民進党中途退学組と鋭意新党結成の謀議を続けて、一向に実りがないかのようなフェイントをかましてくれたのだった。

それだけではない、小池さんも「若狭氏には任せておけない」というようなことまで言ってのけたのだった。しかも若狭は今となっては堂々且つ滔々と彼と小池さんが如何に緻密に希望の党の創立を準備していたかを語るのだ。察するに「謀は密なるを以て良しとする」を地で行って、如何にも煮え切らないようなヘラヘラした態度を取っていた訳が、鈍感な私には漸く解った次第だ。辞め検さんも大した役者かと思わせてくれた。

29日のPrime Newsでは希望の党が民進党からの入党の applicant (小池さんが「アプライ」という英語をお使いだったので、当方も負けじと打って出た次第だ)に安保法制と憲法改正の踏み絵を課すというのに対して、共産党の山下は「それでは自民党を補完するだけのことではないか」との疑問をぶつけたのを興味深く聞いていた。私にも、この2件だけでは自民党と何処が違うのかと思わせてくれるのに十分だ。

先ほどまでやっていた日テレ(読売テレビ)の辛坊治郎の番組では、橋本五郎は「希望の党が233を超えられるだけの候補者を擁立できるのかが鍵だ」と語っていた。確かに民進党からのapplicantに細野以下の先着組を足したのでは不足だ。そうであるから、小池さんは「三都物語」とやらで本日、松井大阪府知事と大村愛知県知事との会談に臨むのだろう。でも、小池さんは本当に都知事に専念なさる気なのだろうか。

その含みを持たせて引っ張るのかも知れないが、それでは誰しもが読むことが可能な筋書きで意外性はなくなる。だが、当分の間は小池人気というか、私の言う「小池マジック」は消えることはないだろう。でも、都知事を任期一杯続けていれば、次回の解散の頃までにマジックが持続できるのだろうか。また、70歳近くなった体力では、総理の激職が務まるのだろうかという心配はしないのかな。