新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

大谷翔平が身体能力競争に敗れた

2021-07-13 14:16:58 | コラム
ホームラン競争での敗退が禍根を残さなければ良いのだが:

今朝は全ての予定を放棄して、大谷翔平君が出るMLBのHomerun Derbyとやらを観戦していた。スポーツジャーナリストの小林信也は70%の確率で大谷君の優勝と予測していた。私は彼は相当程度希望的観測を入れた見方をしていると思って聞いた。私は昨日のうちに「100か0%かだと予想する」と言っておけば良かったと後悔していた。即ち、「大谷君が勝てる確率は極めて低いと見ていたのだ。その根拠は現場を見るまでもなく、この競争は非常にきつい身体能力の争いになるのは間違いなく、それでは彼には勝ち目はないだろう」と見ていたという意味である。

私は今日までに何度も何度も「アメリカという社会、乃至はアメリカの大手企業で働く場合に苦しめられることがある。それは、全ての仕組みというか諸々の制度が彼らの我々とは比較しようもない体格と、それによって生ずる非常に優れた身体能力に基づいて設定されているというか、設計されていること。その中に単独で入って彼らと肩を並べて成果を挙げていくことは、余程彼らの世界を構成する言語・風俗・習慣と思考体系、即ち文化に馴染んでいない限り、落後してしまう危険性が極めて高いのである」と主張してきた。これは経験談である。

大谷翔平はアメリカに渡って4年目であるから、恐らくその体格と身体能力の違いは十分に経験して認識できていると思う。そうだからこそ、あれほど食事に気を配ってウエイトトレーニング等々を積み重ねて、あそこまでの体格を作り上げたのだろうと、私は推察している。ではあっても、言いたくはないが「彼らと我が大和民族では、そもそもの体格の違いだけではなく、子供の頃からの生活習慣が非常に違うので、どんなに努力して頑張っても、彼ら北と南のアメリカの人たちを凌駕するのは容易ではない」のである。この点も、彼らの中に入って経験しなければ分かるまい。

聞くところでは「そのホームラン競争では彼らと雖も体力を使い果たしてしまう程の激務である」のだそうだ。その中に未だ発展途上かも知れないと私が危惧する大谷翔平が入って、身体能力競争を挑みにいくのだから、勝ち抜くのは極めて難しいのではないか」と、私は不安に思っていた。果たせるかな、テレビの画面に最初に出てきたときの大谷君の顔には「不安!」の表情が、一瞬と言えども明らかに見えていたのだった。「矢張りそうだったか」と感じた。

そして競争が始まった。それは始めて見る熾烈な身体能力、就中腕の力の争いであり、予想していたことの数十倍の苛酷な競争だった。しかも、出てきた連中は皆が揃って「スウイングで打つのではなく、球に当たる瞬間を捉えて凄い力をバットで球を強打する」のだった。私は英語には「強振する」という表現がなくて“to hit the ball hard”即ち「ボールを思い切り強く打つ」のだと思っている。大谷が第1シードで最後に登場するまでの7人は、皆この「ボールを思い切り強く打つ」型の打者ばかりで、大谷翔平式の「美しいスウイング型」ではなかったと見た。

しかも、8人目に登場した大谷は焦っていたとしか見えない「思い切り強く打つ」打法になっていたので、最初の4~5スウイングではボールの上を叩いてしまっていたし、美しいスイングを完全に忘れて、彼らに負けじとばかりに力一杯に振り回して打ちに行くだけだった。私はここまでで「これでは駄目だ」と見切りを付けていた。いや、こんなところで負けることは一向に構わないのだが、あの場で見せた崩された(勝手に自滅して崩した)スウイングを、シーズン後半にまで持ち込んだら大変なことになると、悲観的にすらなっていたし、杞憂であって欲しいと願っていた。

私は既に大谷翔平君に何か懸念材料がありとすれば、それは毎度のことである「マスメディアによる過剰な持て囃し方と礼賛の報道である」と何度か指摘してきた。今回も彼らは大谷君が今にも賞金の100万ドルを獲得するかのような報道をするし、ASG(All STAR GAME)では異例の措置でDHのトップバッターと投手を兼務すると、我が事のように喜んで過剰に報じてくれた。

私の主張は「これが大谷君にまで届いて彼が慢心する」と懸念するのではなく「この過剰な期待が妙な結果を生じさせねば良いのだが」と言っているのだ。現に先ほど1回戦での敗退だったし、彼の競争中に見せた疲労感は、如何に身体能力の争いが苛酷なものかという辺りをイヤと言う程見せていた。私は大谷君がこの結果を予測してあったのだが「経験するまでは分からないのだから、挑戦してみよう」との考え方だったら良いと思う。だが、「目に物見せてくれよう(誰に?)」ではなかったら、それで良いのだと思う。彼が奮起して一層の身体能力強化に励んでくれることを望むのだ。

だが、彼には明日の本当の試合があるのだ。これが彼の心身両面の負担にならねば良いのだが。彼の出番が1回の表と裏だけの登場で済めば良いと思うと同時に、幸運を祈っている。