新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

後追いの学問、後追いの対策

2021-07-30 09:24:31 | コラム
経済学とは後追いの学問である:

この一言は、昭和37年(1962年)4月に、今となっては懐かしき日本の会社時代に大阪支店勤務を命じられたときに、不運にも私の部下となった長崎大学経済学部出身の切れ者が教えてくれたことだった。彼は「経済学者たちが研究の成果を活かして、優れた理論を組み立てて教えて下さるが、所詮は今日までに起きた現象を後から分析したものであって、将来に何が起きて世界に如何なる影響を与えるかは経済学では予見できないと思っておられた方が無難である。経済学とは後追いの学問である」と、英文学科出身の私を諭してくれたのだった。

この彼の説が正しいかどうかなどを、今日ここで論じるつもりはない。だが、これを聞いたときには「なるほど、尤もな説であるな」とは理解していた。この解説は、嘗て故本田宗一郎氏が「統計などを尊重することに意義を見出せない。統計は過去の傾向を教えてくれるが、将来に何が如何なる形で起きるかを知らせてくれない」と主張しておられたのに、本質が良く似ていると思っていた。

そこで言いたい事は「兎角、世論調査では『政府の新型コロナウイルス(COVID-19)対策を評価しない』が過半数を占めている場合が多いと出るのは疑問だ」なのである。即ち、上記の「経済学は云々」というのと同じではないのかと言うこと。COVID-19の襲来を予想していた者もいなかっただろうし、疫学や感染症の専門家のお医者様にしたところで、未知のウイルスが侵入してきたのだから、その結果で何が起きていたか、どうすれば多少抑制に効果があったか等々を事後に追いかけて、分析して対策を練ったに過ぎないのではなかっただろうか。先手は取りようがないのではないのか。

言うなれば、所詮は後追いであり、予め「こう来るだろうから、こう言う手を打っておけば、ウイルスは侵入できなかったはずだとの予防策があったのではない」と思う。「我が国は島国なのだから、水際対策を徹底して、外国からの人の入国を絶対的に止めておけば」というのも素晴らしい反省材料だが、言ってみれば後追いの策と言うか知恵に過ぎない。私自身も「後手後手」であるとか、「モグラ叩き」であり、発生した現象に対応してきただけで根本的に封じ込める策にはなっていないと批判してきた。西村康稔大臣、加藤勝信厚労相(当時)を貶してきた。

安倍政権と菅政権が取ってきた対策は所詮は後手であり、後追いになるのは仕方がないとは見えていても、小池都知事のカタカナ語に無意味に依存した策も、賞賛にはほど遠かったのである。いや、諸外国のように都市封鎖を実行しても抑えきれなかったCOVID-19を、頭から押さえ込める策などはなかったと思う。もしあるとしたら「国民全員の外出を禁じ、集会を禁じ、必要最低限の人たちに国内全土を消毒しに回らせる」くらいしか思いつかないが、これは先ず物理的にも経済的に不可能だし、中国の二番煎じで民主主義国家では成り立たないだろう。

マスメディアが如何に無知でもこれくらいのことは解っていそうなものだが、彼らは性懲りも無く連日連夜「ウイルスは怖いぞ。また昨日何千人も何万人も感染者が増えたぞ」であるとか「またワクチンの副反応で何人が苦しんだ」とか言って、罪なき一般大衆を脅かし続けるのだ。その上で、世論調査をするのだから始末が悪い。オリンピックの重大な感染源が増えたかのように選手と随行者から陽性者が出たと報道する。政府の苦労には一切評価も感謝は示さずに、批判ばかりだ。

今となっては菅首相が力説され力を注いでおられるようにワクチン接種率を上げていくことは、極めて効果的で重要な対策なのだ。だが、マスメディアはここを先途とワクチン接種の負の面ばかりを強調したがる。彼らは一体全体何処の国の報道機関かと問いかけたい。彼らはその反面、世界のメダル獲得大会を貶しておきながら、優勝者のことは全力を挙げて賞賛しているという自己矛盾を繰り返すのだ。メダルとやらを何個獲得しても、COVID-19は退散しない事くらい彼らとても解っているのだろう。

マスメディアも、彼らの報道に惑わされているかのような罪なき一般大衆も、少しは「後追いにならざるを得ない対策」を評価したらどうだ。そして、菅内閣や小池東京都が要請するように「自粛」して、これ以上の感染拡大(「リバウンド」でも「クラスター」でもない)を防ごうとしたら如何か。自分は自分で守るしかないのだから。