新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

天災は忘れないうちにもやってくる

2021-07-04 10:56:43 | コラム
熱海に土石流が発生した:

このニュースをこれだけ聞いたときには「おかしいな。あの温泉街でホテルと旅館ばかりの街に、何故土石流が発生するのか」と奇異に感じた。ところが、ずっとテレビのニュースを見ていると「伊豆山」だと分かった。私は熱海の地理には詳しくないが、在来線で熱海の駅の手前に見える丘が伊豆山であり、別荘や住宅があるくらいは承知していたが、熱海市に伊豆山の地名があるとは知らなかった。

土石流が温泉街に発生したのではないと知って、妙に納得したことは「なるほど樹木が生い茂っている丘陵地帯ならば、土石流が発生するのだ」という点だった。だが、一般の方が撮られたのだろう動画を見て、始めてその凄まじさを知ったのだった。

先ずは犠牲になられた方々のご冥福をお祈りしたい。昨日からテレビでは集中的にこの災害関連のニュースばかりなので、何がどのように発生したかが見えてきた。先ほどまでフジテレビでは橋下徹氏と防災の専門家である山村氏が指摘していたことは「全国に数万ヶ所もある崖というのか丘陵地帯があり、そのような場所の危険性は明らかなので、それを回避するためには移住が最大の防止策である」との点だった。更に「移住するのは経済的にも何も極めて難しいことなので、慎重な検討と対策が」とも追加されていた。

私が認識していることであり、外国人に「何故我が国では太平洋沿岸の人口が稠密なのか」を説明するときには「国土の70%以上が居住には適さない山岳か丘陵地帯であるから」と語ってきた。その太平洋沿岸であるが、小田急線や京急線の沿線である程度以上と東京から離れると、線路の両側の丘陵地帯に隙間なく下から頂上まで住宅が林立している景色が見えてくるのだ。それを見ていると、時々は「地盤は大丈夫なのだろうか。大雨でも降った際の防止策は適切なのかな」と考える事もある。

だが、私が危険だと見ているのは「丘陵地帯でも山でも広葉樹が隙間なく立っていて、その裾野とでも言いたいような地域に建っている住宅地」なのである。危険ではないかと言う根拠は「間伐されていなくて下枝が払われていない場所に闊葉樹が多いと、地盤が固まらないだけではなく、降雨があった際に地面に水分が溜まって弱くなる、即ち崩れやすくなる」という危険性である。手入れというか林業者による管理が行き届いていなかったことには、色々と原因がある。だが、紅葉して美しくなるという我が国独得の広葉樹林には、このような危険が潜んでいるのである。

私は今日までの間に伊豆山をじっくりと観察したことがないが、少なくとも在来線か新幹線が通過したときに見えて来る景色では、樹木は多かったような印象があった。今回はそれだから土石流が発生した訳ではないと思う。それは、上から押し流されてきた物の中には、水流で樹皮を剥かれてしまった木材が見当たらなかったからだ。

これまでの所、ゲリラ豪雨や予測不可能だった雨降りは殆ど西日本ばかりだったし、東日本では3.11以降ではこれという記憶に残るような大災害は生じていなかった。私はこれはもしかすると、天災の恐ろしさを忘れかかっていた我々に「天災は忘れないうちにも、予期せざる地域をも襲ってくるのだ。十分に備えておくべし」という警告でもあるかと思って、テレビのニュースを見て、あらためて天災の恐ろしさを感じているのだった。COVID-19だけでも始末しきれないのに、大豪雨とは「ときによりすぐれば民の嘆きなり、八大龍神雨やめたまへ」を思い出した。