新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカを語ろう

2023-05-01 07:57:11 | コラム
久しぶりにYM氏と語り合った:

先ず、申し上げておくと「彼と私がアメリカを語れば、テレビ的にもジャーナリズム的にも著名な権威者が語られるアメリカとは多少違っている」ということ。彼と二人でこれまでに何度か語ってきたアメリカを余り多くの方が「そうか。アメリカとはそういう国だったか」と感じ入って下さったことがなかったと思うし、解ってもらえないだろうと自信もある。

それは、決して我々(ここには仲間である在カリフォルニア州のSM氏も加えて良いだろうが)は真実を語っていない訳ではなく、アメリカ人の一人として、彼らの中で働き、語り合い、生活し、家族とも付き合い、彼らが見る日本と彼らがビジネスの機会等で経験した日本を語るのを聞いてきたのであって、特派員や駐在員の方々のように正面切ってアポイントを取って質問をして知り得たアメリカを論じておられているのとは、一寸どころか大いに違うと思うのだ。

少なくとも私は公に発表される統計や資料に基づいてのアメリカ及びアメリカ人を語っているのではないのだ。彼らの行動の決め事に従って動き、彼らと行動を共にし、彼らが決めた仕事の進め方の手順に従って職務を遂行してきたのである。解りやすくしようと思って言えば「伝聞を語っているのではなく、実際に経験した『アメリカ人という人種はこのように行動する』と語っているのだと理解願いたい。

よりハッキリ言えば、新聞記者さんが取材した程度では見えてこないような実態と言うか実情を語っているのだ。おそらく、YM氏やSM氏や私が言うことは権威者として信じられているジャーナリストや専門家の見解とは違うことが多いと思う。それは当然のことで、だから私は繰り返して「内側から見たアメリカ」と称してきたのだ。記者さんが夫婦ともMBAの大手企業の管理職の家庭の夕食会に呼ばれて、森羅万象を親しく論じ合うような取材の機会を得られるか。

YM氏が教員をしていたスタンフォード大学のビジネススクールの経済学の教授にアポイントが取れて、丁々発止とアメリカ経済の問題点を論じ合って記事にできるだろうか。彼は一度たりともそういう機会に出会ったことがない回顧していた。尤も、我が国の新聞社の記者に経済学に通暁していて、スタンフォード大学の経済学部の教授と議論ができる人がいるだろうかとも疑う。

この辺りを称して、我が事業部の副社長兼事業部長が“We are making the things happen.”と言ったのである。彼の真意は「事を起こしているのが我々製造異業界にいる者たちであり、ジャーナリストたちはそこを後追いして記事にするか、論評しているだけだ」なのである。更に手厳しく言えば「外で取材している部外者に何か解るのか」なのだ。だが、彼らは事が起こった後で実に詳細に原因や結果や失敗を評論するので、権威者として通用しているのではないか。

YM氏はスタンフォード大学、シラキュース大学のビジネススクールで合計3年、プリンストン大学とペンシルベイニア大学のビジネススクールで5年と通算8年アメリカの大学の教員の一人として経験してきた。SM氏は早稲田大学を経てアメリカの大学も卒業してからアメリカでの就職を経験して以来40年以上もアメリカで暮らし、特にアメリカの大学の事情に精通している。私はMeadとWeyerhaeuserの2社で22年間の専門職だった駐在マネージャーだった。

この3名にアメリカ歴を総計したら何年になるのか、考えてもらいたい。SM氏の長女はカリフォルニア州の弁護士であり、次女はUCLAのMBAであり大手外食チェーンで海外駐在中である。これら3名が語るアメリカの実情と、マスコミの権威者が報じるアメリカと異なっていて当然ではないのか。こと、トランプ大統領についても、YM氏が何時も言っていたように、彼の周囲(即ち、アメリカの一流私立大学の教授たちである)にトランプ否定派ばかりなのは当たり前である。

YM氏は「トランプ氏は今や圧倒的多数となってしまった彼を支持する低階層の者たちに聞こえが良いことを言い続けるのだから、人気は維持できているはずだ」と断言している。トランプ前大統領は彼の支持層が「労働者階級だ」と述べた。この労働組合員たちがどういう人たちで構成されているかをご承知か。私は在職中に何度も組合員に説明会を行っていたから言えるのだが、1994年にUSTRのカーラ・ヒルズ大使が指摘されたように「彼らに対しては初等教育の充実と識字率の向上が必須なのである」は事実なのだ。階層が違う人たちに集まりのだと言ってご理解願えるだろうか。彼らは死ぬまで組合員なのだ。

知らない方は驚くだろうが、小学校教育も受けず字も読めない者たちが普通にいるのがアメリカの労働組合なのだ。しかも、そこにはアメリカ人だけではなくヒスパニックもいれば東南アジアから逃れてきた外国人も雇われているのだ。そういう少数のはずだった民族は間もなく白人を追い越すのだ。トランプ氏はそういう多数派に近くなってきた者たちの支持を得るべく、下品なswearwordまで使った演説をして彼らを引きつけようとしているのだ。

これが「アメリカの実情を知る者がアメリカを語るとこうなる」というお話です。信じたくないと思う方は信じられなくても結構。覚えておいてもらいたいことは「アメリカに労働組合は日本における会社内組合とは全く違う」と言うこと。経営者とは言わないまでも、管理職になった者に、組合経験者なんていないってこと