リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

プライドのない記事

2011-05-03 09:27:44 | オヤジの日記
タブロイド誌は、いつも書きっぱなしの記事で紙面を埋める。

たとえば、日本有数の程度の低い新聞である「夕刊フジ」。
ネットで東日本大震災の記事を検索していたら、「なんだ、これ?」というような夕刊フジの記事に遭遇した。

それは、だいぶ前の記事のようだが、中国漁船衝突事件で映像を流出させた元海上保安官の一色氏が、ノンフィクション作家の坂東氏、元仙台市長の梅原氏などとともに、被災地である岩手県陸前高田市に支援物資を届けにいったという記事だ。

そこで彼らは、瓦礫の山となった被災地で、ある中年女性に出会ったというのだ。

その人は、たどたどしい日本語で、「ココからココまで、ワタシの家だったのに、みんな壊れたよ!」と言ったのだという。
その人が乗っていたのは、多摩ナンバーらしい。
陸前高田市の住民が、多摩ナンバーはおかしい、と彼らは思った(そういう例はいくらでもあるので、私は変だとは思わないのだが)。

そして、記事は言う。
「一行が連想したのは、戦後の混乱期、一部のアジア人が持ち主がよく分からない土地を不法占拠したこと」(過去のことを持ち出して読者を誘導する手法)

さらに、地元のボランティアの人が言うには「多摩ナンバーのアジア人などありえない」とのことだった(断定文を使って読者を誘導)。

彼らはその後、岩手県大船渡市、石巻にある避難所でも、「銀座を闊歩するような高級な服を着た老夫婦」と出会う(その写真があれば信憑性は高まるのだが)。
「どちらから?」と聞くと、老夫婦は「カナガワ」とだけ答えた。
その発音は、「明らかに日本人ではなかった」という(『発音』という不確かな要素を使って誘導)。

そこで、坂東氏は言うのだ。
「ともに不自然なのは間違いない。国籍に関係なく、犯罪は許されない。被災者らが自警団が結成しているというが、新たな苦難を背負わせるのは忍びない。政府主導で対応してほしい」(原文ママ)。


驚いたことに、記事はそれだけである。


検証も後追い記事もなく、彼らの一方的な話を載せて「被災地に得体の知れないアジア人がいた」ことを印象付けようとしただけである。

片方の視点だけで記事を作るという安易さ、愚かさ。

これを当事者がブログなどで書くのは、構わないと思う。
公共性がないのだから。

しかし、公共に広く配布する新聞が、なんの検証もしないで「伝聞だけ」で記事を書くのは、危険ではないだろうか。

それがたとえ本当にあった出来事だとしても、裏づけは必要だろう。

裏づけのない文章は、書きっぱなしの与太記事だと私は判断する。
記事としての価値は、まったくない。
埋め草(紙面を埋めるための短い記事)ほどの価値もない。

裏づけのない伝聞記事だったら、誰にでも書ける。
しかし、プロがそれをしないのは、彼らが矜持(プライド)を持っているからだ。
自分が書く文章に責任をもつのが、プロ。

だから、こんな矜持のない文章を平気で書くひとは、プロではない。


夕刊フジは、素人の集団か。