プライドの高いご老人

浜岡原発を停止することに関して、いろいろな意見がある。

それは、あって当たり前のことで、議論を尽くすのは当然のことだ。

ただ、考え抜いた上での発言ならいいが、相手の真意を汲まず、反論するためだけの場当たり的な意見は、見苦しい。
それを責任のない人が言うならまだ許せるが、責任ある地位にある人が言ったとなると、その人の能力を疑う。

たとえば、浜岡原発のある御前崎市長の発言（ＴＶニュースのインタビューで）。

「浜岡原発だけを停めるのは理解できない。他の原発も停めるというのならわかるが」

カン氏の会見の前段で、東海大地震の緊急性を述べたことは頭にないのか。
そんな「うちだけが」という感情論で解決できるレベルの問題ではないだろうに。

実際に、福島原発があれほど甚大な被害を被っているから、来るべき災害を防ぐために緊急性に順番をつけて「浜岡原発を」と言っているのだ。
それを市のトップが「ほかの原発を停止しないで、なぜうちが・・・」というのは、感情論の先走り、勘違いの被害者意識としか言いようがない。

市民の安全を守るべき市長が感情論だけで駄々をこねるなど、問題外だ。
資質を疑う。


そして、経団連会長の米倉会長の発言（会見で）。
「民主党の時代になって、わからないのは、結論だけポロッと出てくると。そして思考の過程が、まったくブラックボックスになっている。そのくせ『透明性』というのは、どういうことなのか。そもそもの政治の態度を私は疑いたい」

その批判も、ブラックボックスとは言うが、今回のことは必ず来るであろう東海大地震の危険性を述べることで、簡単に想像できることではないか。

経済会の重鎮であるご老人には、肩書きだけが必要で、理解能力と想像力は必要ないのか。


私が思うに、この二つのケースは、要するに「俺のところに根回しもせずに、発表しやがって」という自民党時代の「根回し政策」が、彼らのプライドだけが肥大した脳みそに、染み込んでいるからだろう。


「こんな重大な話を俺さま抜きで進めやがって！」


それは、自分がトップダウン形式で威張り散らすのは許せるが、他人がその方式を取ると、自尊心が傷つけられたような気になるという夜郎自大な彼らの性格ゆえだろう。


首相本人に直接進言せず、会見の中で言いっ放しの意見を述べるという姑息な手段しか取れない人間というのを私は信じない。


遠吠えをするのは狼だが、彼らには狼ほどの雄々しさはない。