ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

注目産地ラインヘッセンの若手生産者@ドイツワイン

2016-01-20 15:45:16 | ワイン&酒
2009年に日本から撤退した ドイツワイン基金の日本事務所が、今年の1月に再開設されました。

それもあり、今後はドイツワインに注目が集まるかもしれない(あくまでも希望的予測)ので、ドイツワインの生産者をひとつ紹介したいと思います。


Dreissigacker ドライスィヒャッカー (Germany, Rheinhessen)

非常に発音の難しいワイナリーです。
ラインヘッセンの生産者で、当主は若手のヨハン・ドライスィヒャッカー
ニアシュタインとウォルムの中間くらいに位置するベヒトハイムを拠点としています。

ヨハンは2015年5月に来日し、都内でセミナーを行ないました。

その際に、一緒に来日したのが、ドイツワイン輸出協会副会長のビンツさん。
すっかり忘れていましたが、数年前、ドイツを訪問した際に、ビンツさんの案内で、このドライスィヒャッカーのワイナリーと畑を訪問したことを思い出しました。


左)ヨハン・ドライスィヒャッカー氏  右)ビンツ氏

ヨハンさんは大学では経営学を学び、税理士の勉強もしました。
しかし、友人は皆ワイナリーの息子ばかり。
ある日、古いワインを飲んだ時に、ラインヘッセンのポテンシャルに驚いた、と言います。

ヨハンさんには兄がいますが、彼が両親のワイナリーを継ぐことにしました。
彼が継ぐ前は、20アイテムものワインをつくっていました。



「数が多くてブレていた。2001年から変革を始め、伝統的なリースリングとブルグンダー系のワインにフォーカスしようと思った。そこで、最初の3年で植え替えを行なった。また、15年前は誰も取り組んでいなかったビオにも取り組み始めた。

ビオに切り替えることで、ブドウの成長リズムはゆっくりになり、収穫量は少ないが、高品質のブドウが得られる。そうしてつくられたワインは、時間をかけることで開いていくワインになり、グラスの中でも開いてく」と、ヨハンさん。



この日は6アイテムを試飲させてもらいました。


左)Pino_&Co. Rose 2014   右)Organic Riesling 2014

ドライスィヒャッカーではリースリングが主品種ですが、他の白品種と赤品種も少々生産しています。

ロゼは、ピノ・ノワール95%+ザンクト・ラウレント5%。フリーランジュースから。
フレッシュでイキイキとした酸のアタックが心地よく、チャーミングな果実味もあり、唾液がじゅわっと滲み出てきます。余韻は長くありませんが、フードマッチングのことなど考えず、気軽に飲みたいワインでした。

オーガニック・リースリングは、ラムネを思わせるアロマがあり、アタックはパイナップルキャンディのよう。少し舌にプチプチ当たる感じがありました。酸味たっぷり!フレッシュ!目が覚めるキレのよさ!



Bechtheimer Riesling 2013/ Geyersberg Riesling 2013 / Morstein Riesling 2012

Bechtheimer は石灰質+レス混じり、粘土が砕かれた石の土壌。
当時、ゲヴュツツトラミナーを混ぜることで、ワインの口当たりをよくしていたそうです。
この手法は今も有効とのことですが、こちらはリースリングのみ。

2013年は暑い年で、ドイツでも灌漑、補酸が初めて認められた年だったそうです。
でも、ヨハンさんはしませんでした。当然、ものすごいエクスレ度(糖度測定の単位)になっていたので、房を切り、収穫量を半分にすることでブドウのエネルギーを保ったそうです。補酸などでワインの構造を壊すと、ワインのバランスを崩すと考えたからです。
ブドウを試食するごとにアロマが増していくのがわかり、でも、収穫予定の2週間前に試食したら大丈夫、いける、と思ったそうです。

収穫の時期を決めるのに、彼はブドウを食べて決めます。
ブドウを食べると、ワインの味が予想できるのだとか。

「ブドウ畑のエレガンスをワインの中に生かしたい」
と、ヨハンさん。

2013年のベヒトハイマーを飲むと、甘く熟れた桃や杏のアロマ、風味があります。が、骨格がガッチリとし、特に酸の骨格がしっかりとしています。タンニンや雑味的なものもあり、一般的なリースリングとは思えないリースリングでした。

Geyersberg は真南を剥いた畑で、石灰岩が粉砕した土壌で、水はけの良さが特徴です。
この畑のブドウはゆっくり育ち、房も粒も小さいけれど、エレガントでミネラル感があり、スモーキーな香りのワインになるそうです。
たしかに、飲むとスモーキーなニュアンスがあります。色がやや濃く、よく熟しているけれど、柑橘の皮のビターな感じがあり、若さ、スパイシーさ、なめらかさ、ミネラル、アルミニウム的な冷たさも感じました。もう少し寝かせてから飲んでみたいですね。

Morstein は南向きの畑ながら、風がよく通り、非常に冷涼な環境にあります。
土壌に含まれる水分量が多い畑で、それによってミネラル感が出てくるといいます。
色は少しグリーンが入りますが、これまで中でより熟れ、ふくらみを感じました。和の柑橘のニュアンスがあり、そのビター感で引き締まります。

Geyersberg と Morstein の畑のブドウの樹齢は高く、46~48年くらいだそうです。



Wunderwerk Spätburgunger 2012

樹齢15年の若いシュペートブルグンター(ピノ・ノワール)を遅摘みした赤ワインです。
若木からいかにポテンシャルのあるワインをつくれるか?と考え、1本の樹に3~4房だけを残し、マセレーションを2カ月、その後、オーク樽(新樽+使用済み樽)で2カ月熟成させたといいます。

スパイスやリコリス、凝縮したベリーのアロマがあり、アロマと同じ味わいのある、やや軽めのスパイシーなテイスト。黒っぽいイメージがあり、まだ固い状態に思います。

後半2本は2012年のワインですが、この年は冷涼な年だったので、遅摘みで完熟させたブドウを使ったので、結果としていい方向になったようです。

「手をかけて、集中して、でも、自然に近い方法でつくる」
と、ヨハンさん。

ブドウの樹齢は古いものが多く、その中には、古木を嫌がる(収穫量が減るため)他の生産者と交換したものもあるそうです。

せっかくなので、以前訪問した時の画像もいくつか載せておきます。


ゆるやかな斜面に畑があります


遠くにライン川が見えます


夏の盛り 土壌もカラカラに乾燥しています


ワイナリーではいくつか試飲させていただきました



ラインヘッセンは非常に広いワイン生産地です。
畑は、土壌の構成、向きなどによってもさまざまですが、川の影響も大きいと言います。

川、ここではライン川ですが、
たとえば、ベヒトハイムは川から5km離れているので、川の影響は少なくなります。
南向きの赤い土壌で、川に近いローテンハングは、土壌がとてもあたたまりやすく、よく熟した、時には熟しすぎになるくらいのブドウが得られ、ワインに影響するといいます。

ナーエに近いところは、この地方のスイスと呼ばれるほど冷涼で、火山性の斑岩などの土壌から、軽やかで繊細な、スモーキーなニュアンスのあるワインができるといわれます。
石灰岩土壌は酸が丸められ、バランスのよい辛口ワインができます。ブルゴーニュでは石灰土壌にはシャルドネですが、ラインヘッセンでは、リースリングが植えられます。





そうそう、ヨハンはさん、ラインヘッセンの若手生産者団体「Message in a bottle」に入っています。
15年くらい前にワイナリーの次世代生産者たちによって組織された団体で、現在、25名ほどが所属しています。この団体については、私も10年以上前に現地取材をしたことがありました。
ヨハンさんは2003年に入り、若い世代同士で率直な意見交換ができ、ワインの格付けの話し合いなどをしたり、さまざまなイベントをやってきたといいます。
今はもっと若い人たちがグループを作っていますが、Message in a bottleは、若い人によるダイナミックな活動のキッカケをつくりました。



日本におけるドイツワインのイメージの中に、“甘口”といったものがかつてありました。
今の若い世代は、それを知らないかもしれませんが。

今、世界の各ワイン産地で、色々な変化、流れが生まれています。
ドイツもしかり。
ですから、広くて生産量の多いワイン産地「ラインヘッセン」も、今後、要注目なんです。


ビンツさん、ヨハンさん、ありがとうございました!

(輸入元:ワインキュレーション株式会社)


コメント
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