評価
焚書、隠れ家、記憶狩り、秘密警察、ナチのユダヤ狩りを思い起こさせるキーワードが散りばめられた物語。消えゆく運命を持つ有機体である人間の哀しみの中にアンネの姿を垣間見つつ読了。
鳥、香水、フェリー、左足、大切だったものが、みんな、少しずつ消えてゆく島に住む「わたし」は小説家。記憶をなくさない住民を検挙する秘密警察の目を逃れて、編集者のR氏を隠れ家にかくまうが捜査の手がヒタヒタと忍び寄る。そんな中、R氏は秘密裏に保存されていたフェリーの切符、ハーモニカ、ラムネなどを使って既に消滅した「わたし」の記憶を呼び覚まそうとするのだが・・・
「これが小川洋子の世界観なんだなぁ~」としばし納得。