4月14日付 読売新聞編集手帳
【天気】には、
「天候」のほかに「晴天」の意味がある。
「きょうは天気だ」などと使う。
英語の【weather】(ウエザー=天候)には「荒天」の意味がある。
空を仰ぐ心にも、
お国柄があるのだろう。
天気といえば、
いい天気、
というおっとりした気質は愛すべきものだとしても、
場合によりけりである。
空から落ちてくるかも知れないのが雨粒ではなく、
衛星もどきの弾道ミサイルであるとき、
場違いの「おっとり」は失態以外の何ものでもない。
失敗に終わった北朝鮮のミサイル発射で、
日本政府は情報の伝達と発信に未熟さを露呈した。
米軍が発射を探知し、
防衛省にも瞬時に伝わったのに、
政府が発射を認めたのは43分後、
すでにメディアが「打ち上げ失敗」を報じたあとである。
慎重な確認作業に時間を要したという。
ならず者の夜襲を警戒しているときに庭先を不審な影がよぎれば、
「目の錯覚かな」「猫かしら…」と思っても、
まずは声を発してこその危機管理だろう。
傷ついた国家の威信を
北朝鮮がいかなる暴挙で埋め合わせるのかは予想がつかない。
日本の空に荒天の“ウエザー”が続く。