4月21日 NHK海外ネットワーク
パリの通りには青地に白い文字のプレートが取り付けられている。
しかし最近はいたずらの表示が各地で見られる。
“サルコジ袋小路”。
選挙ポスターの落書きには
サルコジ大統領のスローガンの“強いフランス”が
“死んだフランス”に書き換えられていた。
かつての支持層の中にも今回はサルコジ大統領に投票しないという人たちがいる。
シルビィ・アンドレさん(52)。
住宅の暖房設備などを取り付ける会社を夫と経営している。
前回の選挙ではアンドレさんのような中小企業経営者の多くが
サルコジ大統領を支持した。
フランス経済を活性化させるという公約に期待を寄せたのである。
しかしこの5年間景気は低迷し会社の売り上げは20%減。
住宅業界はサルコジ政権の下で進められた規制緩和によって競争が激化。
さらに住宅建設にかかる税金も引き上げられた。
サルコジ政権の政策で経営が苦しくなったと感じている。
「大統領に私たちの声は伝わらなかった。」
「そうだね。
何も聞いてくれなかった。」
アンドレさんはサルコジ大統領以外の候補に投票することにしている。
「フランス国民への約束が果たされなかったのでがっかりしている。
22日の投票ではサルコジ氏には投票しない。
彼に罰を与えるため。」
サルコジ大統領に対する有権者の不満がつのるなかで
支持を伸ばす社会党のオランド候補。
厳しい雇用状況を改善してくれるのではないかと期待する若者がいる。
「“変化は今”
これがスローガンです。」
ヨアン・モワザンさん(23)
オランド陣営の選挙運動を手伝っている。
モワザンさんは約50社の企業をまわったが就職できなかった。
職業紹介所にはほとんど求人は張り出されていない。
フランスでは若者の5人に1人が失業中である。
「サルコジ大統領は若者の失業対策に何もしなかった。
経済は前よりもひどくなっているし
良かったことは何もない。」
厳しい状況にあるサルコジ大統領。
ヨーロッパの信用不安対策をともに進めてきたドイツのメルケル首相は
支持を明確に打ち出した。
ドイツ メルケル首相
「サルコジ大統領は政策面でも近く
あらゆる面で応援する。」
これに対しモワザンさんたちのもとにドイツの若者がやってきた。
メルケル首相と対立するドイツの野党の若者たちである。
同じ左派の政党としてオランド候補の陣営を視察し激励するためである。
信用不安対策として
“財政の切りつめだけでなく雇用確保を重視”するオランド候補の政策。
ドイツの若者たちもオランド候補が大統領になれば
EUの政策が変化するきっかけになると期待している。
ドイツの若者
「オランド候補は信用不安対策の正しい解決策を示している。
彼が勝つことはヨーロッパにとって重要。」
信用不安対策が大きな争点となっている今回の仏大統領選挙は
ヨーロッパのほかの国々も強い関心を持ってみつめている。
サルコジ大統領はヨーロッパの信用不安に対して
ドイツのメルケル首相とタッグを組んで
いわばメルコジと呼ばれる蜜月関係にあったが
選挙の結果次第で独仏の関係が崩れて
信用不安に対する取り組みにも支障が出る可能性がある。
オランド候補の主張はこのメルコジ路線の修正を求めるものである。
税制赤字の削減だけでなく
経済成長や雇用の促進にも配慮するべきだと主張している。
オランド候補が当選するとドイツとの間に微妙な路線の違いが生まれることになり
これに対して市場が反応することも考えられる。
信用不安は市場のムードに左右される。
大国フランスとドイツの間で路線の違いが生じる懸念があるとすると
市場が動揺する可能性がある。
巻き返しをはかるサルコジ大統領もまさにその点をついて
オランド候補だと信用不安が再び深まると
有権者の危機感をあおっている。