10月14日 サンデーモーニング
ノーベル賞は“日本が受賞した賞”と語った京都大学の山中信弥教授。
日本中が大きな喜びを持ってこの受賞を受け止めた背景には
日本が抱えるここ最近の不安だらけの状況がある。
かつて日本が表彰台の常連だった国際数学オリンピック。
しかし最近は総合ランキングも低下。
国別順位 2009年 2位
2010年 7位
2011年 12位
2012年 17位
2012年 国別順位 1位韓国 2位中国 3位アメリカ
日本の学力低下を懸念する声も聞かれる。
高等教育のレベルを見ても年々海外留学者数が減少。
海外に研さんの場を求める若者の数も減っている。
世界の大学ランキングでも日本の大学の順位は少しずつ下落。
2012年QS大学ランキング
1位 マサチューセッツ工科大学
2位 ケンブリッジ大学
3位 ハーバード大学
30位 東京大学(2007年17位)
35位 京都大学(2007位25位)
特許の出願件数や注目度の高い論文の数といった数字についても
頭打ちだったり他の先進国に抜かれるといった状況である。
加えて日本の研究環境の悪さや研究資金の不足もしばしば指摘されており
こうした状況を嫌って環境に恵まれた海外
とりわけアメリカへの頭脳の流失も続いている。
2008年のノーベル物理学賞受賞者 南部陽一郎さんはアメリカ国籍を取得。
同じ年 化学賞を受賞した下村脩さんの研究拠点もアメリカ。
青色発光ダイオードの発明で世界的に有名な中村修二さんも
やはりアメリカにわたっている。
今回のノーベル賞受賞とは裏腹に将来が不安な日本の学術研究。
さらにこうした分野にとどまらずここ最近は
日本の国力そのものの低下を感じさせるデータも増えている。
国際競争力ランキング(世界経済フォーラム)
2010 2011 2012
1スイス 1スイス 1スイス
2スウェーデン 2シンガポール 2シンガポール
3シンガポール 3スウェーデン 3フィンランド
4アメリカ 4フィンランド 4スウェーデン
5ドイツ 5アメリカ 5オランダ
6日本 6ドイツ 6ドイツ
7フィンランド 7オランダ 7アメリカ
8オランダ 8デンマーク 8イギリス
9デンマーク 9日本 9香港
10カナダ 10イギリス 10日本
大きな要因として挙げられるのが膨大な財政赤字や経済の低迷である。
そこに追い打ちをかけるかのような
去年の東日本大震災と福島第一原発事故。
領土をめぐる混乱ぶりにも日本の国力低下が影を落としているようにも見える。
そんな日本の状況を揶揄するかのような風刺画が
先日 中国のチャイナ・デイリー紙に掲載された。
日の丸のハチマキにメガネをした年老いた男性は痩せ細った腕に筋肉はなく
星条旗の袖から出た手が皮をつまみあげる。
活力を失った日本をアメリカという黒子が支えているように皮肉っている。
一方 アメリカ大統領選では共和党のロムニー候補まで
日本を名指ししてその衰退を口にしたのである。
(共和党 ロムニー候補)
「我々は日本ではない。
10年あるいは1世紀にわたる衰退と苦難に陥っている国に
なるつもりはない。」
世界が指摘する日本の国力低下。
しかし必ずしも悲観するものではないと語る専門家もいる。
(IT生命誌研究館館長 中村桂子さん)
「日本の国力を高めるためには
人を大事にすること。
ところがこの20年くらい人を大事にしなくなった。
お金や便利さがありさえすれば人は幸せになれると信じてきた。
1人1人の力を生かしていかなければならない。
それを国力と呼びたいし
その国力を作る能力は日本に十分ある。」
数多くの挫折を乗り越え今回のノーベル賞受賞に至ったという山中教授は
日本の国力について語る。
「日本は言うまでもなく天然資源は限られているが
しかし研究成果、知的財産は無限に生み出すことができるし
それが国の大きな力になる。」