10月20日 NHK海外ネットワーク
経済制裁の緩和で外国製品が急激に増えているミャンマーの生活は
大きく変わろうとしている。
今月ヤンゴンで開かれた日本製品の見本市には約5万人が詰めかけた。
特に多くの人でにぎわったのが
日本の企業が会場の設けたミャンマー版100円ショップ。
(店員)
「お椀が良く売れています。
珍しくてミャンマーにはないものですからね。」
経済の改革・開放政策に舵を切ったミャンマー。
15年ぶりに販売が再開されたアメリカの清涼飲料水は早くも大人気。
街には外国の製品があふれている。
最も目立つのは輸入中古車の急増。
輸入制限の撤廃で
中古車の価格はこの1年足らずで4分の1から5分の1に下がった。
市民の間で高まる車の購入熱で
信号待ちのドライバーに車のチラシを売る商売まで始まった。
買い替えを進める車のカタログ。
車の種類は豊富で人々の消費意欲を刺激している。
消費ブームを引っ張っているのがミャンマーでも比較的豊かな人たちである。
ヤンゴンに住むジン・マウン・エイサン(34)。
先月初めて日本の中古車を約120万円で購入した。
車は幼稚園に通う娘の送り迎えに大活躍である。
「自分の車を持ててとてもうれしい。」
ジン・マウン・エイサンは7人暮らしで
政府機関で公務員として働いていたが4年前外資系海運会社に転職した。
英語を話せることが決め手だった。
月給は40万円と前の約25倍で生活は一変した。
「電子レンジもトースターも洗濯機もあるが古いから買い換えたい。」
夢は次から次へと膨らんでいく。
「今度テレビを見に行こう。
42インチの薄型テレビ。」
「以前は経済制裁の影響で外国製品は限られたものしかなかった。
今度は2人の娘たちにそれぞれiPadを買おうと思っている。」
若者の間では
参入が相次ぐ外国企業への就職のチャンスをつかもうという動きが広まっている。
外国企業ではビジネスの公用語として英語が不可欠である。
ある英語教室には約1,000人が通っている。
ジン・ミン・タンさん(24)は英語教室に週2日通っている。
「英語を上達させたいです。
そしていい仕事に就きたいです。」
ジン・ミン・タンさんはミャンマー北部出身。
同郷の友人5人とアパートで共同生活を送っている。
友人がそろうと決まって始まるのが就職についての情報交換。
「ホテルに就職口があるらしい。
給料は結構いいみたい。」
「でも英語の能力がかなり必要になる。」
(ジン・ミン・タンさん)
「夢は自分で仕事を始めることだが
そのためにもまずはいい会社で働ければいいと思う。」
ヤンゴンをちょっと離れると昔ながらの生活が今も続いている。
地方ではほとんどの人が細々と農業を営んでいる。
夫婦と4人の子どもの一家は野菜を育て自給自足に近い生活をしている。
子どものおもちゃもすべて手作り。
村には舗装道路がなく橋もない。
ヤンゴンから車と牛車を乗り継いで2時間。
日本からの直行便で一緒になった田中一郎さんに農場へ案内してもらった。
そこでは原野を切り開いて飼育材などを栽培していた。
田中さんはミャンマー各地で地元の大学教師とともに
農業の技術指導を続けている。
ミャンマーの人たちが自立できるようになるためである。
(農業指導 田中一郎さん)
「商業には皆さん目を向けますが農村地帯まで目を向けませんので。
農民の生活自体は変わっていませんし収入も増えていません。
やはり農作物の収量を上げるのが先決ではないかと思います。」
(ヤンゴン大学教授 イエさん)
「ミャンマーは農業の国で80%が農業従事者だから
農業が発展すれば皆うれしい。
日本など外国はミャンマーの農業に投資してほしい。」
アジアの発展から取り残されてきたミャンマー。
今始まった変革の動きを地方にも広げることが国民全体の生活の向上につながる。