10月21日 サンデーモーニング
他人のパソコンをウィルスに感染させそれを遠隔操作し犯行予告を行った事件で
逮捕された4人の男性について誤認逮捕の可能性が高いことを
警察庁が公式に認めた。
「警察・検察をはめてやりたかった 醜態をさらさせたかった
という動機が100%です。」
今月10日 事件の真犯人とみられる人物から届いたメールは
ヨーロッパのサーバーを経由するなど発信元がわからないようにしつつ
自らの犯行であることを明かしたのである。
今回の事件では容疑者として逮捕された19歳の男子大学生が
否認していた容疑を一転して認め
保護観察処分を受けるなどさまざまな波紋を呼んだ。
(大学生が住むアパートの大家)
「警察が来て大学生の『俺じゃない』という声が聞こえた。
そのまま連れて行かれて
そのまま帰ってこなかった。」
(街の声)
「いつ何時巻き込まれるかわからない。」
「どう防御していいのか分からない。」
「おっかない時代になってきた。」
この事件では警察の専門的知識が犯人のレベルに追い付いていない状況も垣間見えた。
取り締まりが困難なほど複雑で巧妙化するネットの犯罪の背景にあるのは
あまりに急激な技術の発展である。
インターネットはいまや誰でも手軽に扱え
便利で身近なツールとして日々の生活に欠かせない存在となっている。
しかしその便利さと引き換えに私たちは多くのリスクを抱えることとなった。
そのひとつがサイバー犯罪の増加。
ネットの掲示板を利用し犯罪行為を勧誘する闇サイトが横行している。
ハッカーによる情報流失がもたらすプライバシーの侵害や機密情報の漏えい。
さらにネット掲示板を使ったいじめ問題では
子どもが加害者にも被害者にもなる状況が生まれ自殺などに至る深刻なケースも。
様々な犯罪や問題を引き起こすネット技術の発展の一方で
中東や北アフリカで広がった“アラブの春”と呼ばれる民主化運動や
日本で広がった反原発デモ
中国全土に広がった反日デモでもネットの力がその運動を広げた。
手軽さや便利さの一方でも大きな影響力やリスク。
しかし私たちはこうした技術を十分使いこなしているとは言えない状況である。
(早稲田大学 加藤諦三名誉教授)
「残念ながら人間の歴史を見るとゆがんだ発展をする。
『リスクを伴っているから技術の発展をやめよう』と言ってもこれは無理。
技術がすごい発展をして高度技術社会になればなるほど
恩恵を被る人も犠牲者もでる。」
技術の進歩がもたらす二面性。
たとえば大規模な土木工事に必要不可欠なダイナマイトは戦争にも使われた。
また安全神話をうたった原子力発電も福島原発事故では
技術をコントロールすることの難しさがあらためて明らかになった。
そして遺伝子操作やips細胞などバイオテクノロジーは
医療面での期待の一方で倫理面では様々な問題を抱えている。
新たな便利さを手に入れる一方で技術の発達に振り回されリスクを負うジレンマ。
人間はこうしたジレンマとどう向き合えばよいのか。
「海底2万マイル」「十五少年漂流記」などの作品で知られる
フランスの作家 ジュール・ヴェルヌ(1828-1905)は
科学技術の進歩の中で築き上げた社会は人間の愚かさゆえに滅ぶ姿を描き
科学技術には“人間に許された限界がある”のでは
と問いかけている。
(早稲田大学 加藤諦三名誉教授)
「アメリカにギャラップという調査がある。
『これから生活が良くなりますか?』と聞くと
七,八割の人が『良くなります』と答えた。
『幸せになりますか?』と聞くと
『悪くなる』という人の方が圧倒的に多い。
便利さを求めるのは人間の性だけれども
それに従っていると行き着くところは幸せではない。
技術とは何なのか 何のための技術なのか
技術の原点に立ち返って考える時だ。」
(街の声)
「いったん手にしたものをやめようと言うのは簡単だけど難しい。」
「テクノロジーが発達しても人間は進歩できない動物だと考えてやっていかないと。」
「全部が全部便利になる方向性が良いとは限らない。」