日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

アイソン彗星 勇気一つを友にして 

2013-12-07 07:00:00 | 報道/ニュース
11月30日 編集手帳


哲学者の九鬼くき周造は『人生の踊おどり』という詩に書いている。
〈運命よ/私はお前と踊るのだ/ひつしりと抱いたまま〉。
過酷な未来と分かってはいても、
運命と踊らねばならないときがある。
人も、
星も。

「世紀の大彗星すいせい」ともいわれるアイソン彗星が消えた。
太陽に接近して蒸発したらしい。
おのが意思で選べぬ星の軌道とはいえ、
12月初旬に肉眼で観測するのを楽しみにしていた天文ファンからは落胆の声が聞こえる。

ギリシャ神話の青年イカロスを思い浮かべた人もあろう。
蝋(ろう)で付けた翼で天高くのぼりすぎ、
太陽の熱に溶けて墜落、
落命した。

氷でできた雪玉のような身体で太陽に向かって飛んでいく…。
運命と抱き合い踊ったアイソン君のような、
怖いもの知らずのわが青春はいま何処いずこ――と、
初老の繰り言をつぶやいてみる。

何十年かの昔、
NHKの『みんなのうた』で聴いたイカロスの歌を覚えている。
〈両手の羽根をはばたかせ/太陽目指し飛んでいく/勇気一つを友にして…〉
(『勇気一つを友にして』)。
北風に背を丸めてうつむきがちな季節、
しばし、
空を仰いで青春のかけらを浴びるのもいい。
コメント