12月7日 編集手帳
夏目漱石『こころ』にある。
〈かつてはその人の膝の前に跪ひざまずいたという記憶が、
今度はその人の頭の上に足を載せさせようとするのです〉。
怨念を捨てるのは日常の人づきあいでもむずかしい。
ましてや27年間も監獄につながれた怨念は想像に余るが、
弾圧する側にいた白人に対して、
その人が過ぎし日の恨みつらみを語るのを聞いたことがない。
勝利に至る不屈の心のみならず、
勝利したのちの寛容の心においても「偉人」であっただろう。
「白人に反対しているのではない。
白人優越思想に反対しているのだ」。
人種差別と闘い、
対話によって南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃に導いたネルソン・マンデラ氏が95歳で亡くなった。
南アの人々は悲しいときも歌い、
踊る。
氏の自宅前には訃報を聞いて集まった人の波ができた。
黒人も白人もいたという。
その光景が何よりの供養だろう。
〈窓開あけつつ聞きいるニュース南アなるアパルトヘイト法廃されしとぞ〉。
皇后陛下のお歌にある。
窓――。
人類の恥部であった人種隔離という“開かずの窓”を素手で砕き、
歴史に風を入れた人である。
夏目漱石『こころ』にある。
〈かつてはその人の膝の前に跪ひざまずいたという記憶が、
今度はその人の頭の上に足を載せさせようとするのです〉。
怨念を捨てるのは日常の人づきあいでもむずかしい。
ましてや27年間も監獄につながれた怨念は想像に余るが、
弾圧する側にいた白人に対して、
その人が過ぎし日の恨みつらみを語るのを聞いたことがない。
勝利に至る不屈の心のみならず、
勝利したのちの寛容の心においても「偉人」であっただろう。
「白人に反対しているのではない。
白人優越思想に反対しているのだ」。
人種差別と闘い、
対話によって南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃に導いたネルソン・マンデラ氏が95歳で亡くなった。
南アの人々は悲しいときも歌い、
踊る。
氏の自宅前には訃報を聞いて集まった人の波ができた。
黒人も白人もいたという。
その光景が何よりの供養だろう。
〈窓開あけつつ聞きいるニュース南アなるアパルトヘイト法廃されしとぞ〉。
皇后陛下のお歌にある。
窓――。
人類の恥部であった人種隔離という“開かずの窓”を素手で砕き、
歴史に風を入れた人である。