12月11日 ワールドWaveモーニング
12月26日で生誕120年の節目を迎える毛沢東。
中国共産党の創設者の1人にして現在の中華人民共和国の建国の父。
その一方で大躍進政策や文化大革命では多くの人を死に追いやったことでその後の評価がしばしば議論の的になり
毀誉褒貶(きよほうへん)が非常に激しい人物でもある。
ところが奇妙なことに今のブームはそうした毛沢東の功罪を改めて考え直すというよりは称賛一色。
一部にはさながら神とあがめる神格化の様相も呈しているようである。
中國内陸部 湖南省韶山(しょうざん)。
毛沢東の生まれ故郷で鉄道の駅には大きな肖像画が掲げられている。
26日の生誕120年を前に記念の横断幕や電光掲示も市内のあちらこちらで見られる。
11月に湖南省を視察した習近平国家主席は省のトップにしっかりと記念行事を行うよう指示している。
郊外にある広場には巨大な毛沢東像。
中国有数の観光スポットになっていて全国から家族連れや団体客が大勢訪れる。
花をささげる人たちの列も後を絶たない。
ガイドの声に合わせ像に向かって拝礼を三度繰り返す人たち。
毛沢東が神としてあがめられているように見える。
観光客は巨大な毛沢東像との対面を終えると近くにある土産物に向かう。
どの店内にも毛沢東の顔をかたどったメダルやバッジなどたくさんの種類の記念品が並んでいる。
なかでも毛沢東の像は一家に一体はあるべきお守りとして人気を集めている。
「崇拝する偉人なので自宅にお招きして一家を守っていただくのです。」
毛沢東の像は地元にある町工場で作られている。
この工場は毎年大小合わせて3000体~4000体の毛沢東像を生産し
売り上げは500万人民元(8千万円)は下らない。
生誕120年を迎えた今年は生産量が4倍近くに増えているという。
土産物だけでなく役所や企業などに飾る大きな銅像も手掛けている。
高さ1m83㎝の銅像は生前の毛沢東の等身大である。
ある企業からの注文生産で価格は日本円にして約120万円。
別々に作っていた頭と胴体がつながったところで工場社長が出来栄えを見に来た。
毛沢東の像であるからには不恰好はゆるされない。
頭の向きがおかしくないか念入りに点検する。
この工場では生誕記念の12月26日までに納品しなければならない銅像の注文を他に設けていて
残業を増やして生産を急いでいる。
(工場社長 蘇正良さん)
「私たちは絶えず品質向上に努めており毛主席に似ていると好評です。
お客様からの注文が増えて最近はとても忙しいです。」
生誕120年を前にした毛沢東ブームは他にも広がっている。
毛沢東時代の古い書籍や写真などの収集いわゆる“赤のコレクション”の人気もそのひとつである。
10月下旬には北京でオークションも行われ100点以上が出品された。
(競売人)
「次は『毛沢東選集』。
最低価格は2万元です。
3万5千 3万8千 4万元。
4万元(約64万円)他にいませんか。
最後ですよ。
はい あなたのものです。」
毛沢東と直接関係のある物には特に高い値がついた。
将来の値上がりを見越して片っ端から競り落としていく人もいる。
(オークション参加者)
「書籍の値段は年々 上がっています。
この2年間は特にすごいです。
今年は毛沢東生誕120年で赤のコレクションが大人気です。」
毛沢東といえば“功績第一 誤り第二”という言葉があるように
大きな功績だけではなく政策には誤りもあったといった評価が高まってきたように思えたが
なぜいま称賛一色なのか。
今の中国のメディアや学校教育などでは毛沢東の功罪のうち罪の部分に触れることはなく
中国を建設した偉人という面だけが強調されているからである。
このため共産党幹部の腐敗や貧富の格差の拡大がどんどん深刻になるなかで
庶民の間では毛沢東時代は皆が平等で良かったというムードが広がっている。
宗教活動に制限がある中国で毛沢東が一種の信仰の対象になっていると言える。
一方で格差社会のひずみから生まれた信仰さえも
オークションのように金儲けのチャンスを見出そうという動きもあることが今の中国を表している。
今のブームは習近平国家主席が後押しした部分もある。
習主席は最高指導者になってからもこの1年間は大衆路線を全面に打ち出し
ぜいたくの禁止や党幹部の汚職の摘発の強化によって
格差の拡大に不満の庶民に寄り添う姿勢をアピールしているがこれは毛沢東のやり方に倣ったものである。
庶民の間に広がる毛沢東信仰を利用して自らの求心力を高める狙いがある。
習近平主席への権力の集中が進んでいるという見方もある。
習近平政権は26日に毛沢東生誕120年の記念行事を開催するとみられるが
香港のメディアによると
他の行事を共産党中央の許可なしに行わないようにという指示が出ているということである。
これは浪費を戒めることの他に
習近平主席こそが毛沢東の正当な継承者なのだと強調する狙いもありそうである。
ただ庶民に寄り添う大衆路線といってもあくまでも上からの政治運動であって
国民が政権を監督するシステムを取り入れようというものではない。
政治改革や民主化を求める人たちへの締め付けは逆に強まっている。
社会のひずみが毛沢東信仰につながっているが
毛沢東に倣う政治が社会の閉塞感をさらに強めるという構図が浮かび上がっている。
12月26日で生誕120年の節目を迎える毛沢東。
中国共産党の創設者の1人にして現在の中華人民共和国の建国の父。
その一方で大躍進政策や文化大革命では多くの人を死に追いやったことでその後の評価がしばしば議論の的になり
毀誉褒貶(きよほうへん)が非常に激しい人物でもある。
ところが奇妙なことに今のブームはそうした毛沢東の功罪を改めて考え直すというよりは称賛一色。
一部にはさながら神とあがめる神格化の様相も呈しているようである。
中國内陸部 湖南省韶山(しょうざん)。
毛沢東の生まれ故郷で鉄道の駅には大きな肖像画が掲げられている。
26日の生誕120年を前に記念の横断幕や電光掲示も市内のあちらこちらで見られる。
11月に湖南省を視察した習近平国家主席は省のトップにしっかりと記念行事を行うよう指示している。
郊外にある広場には巨大な毛沢東像。
中国有数の観光スポットになっていて全国から家族連れや団体客が大勢訪れる。
花をささげる人たちの列も後を絶たない。
ガイドの声に合わせ像に向かって拝礼を三度繰り返す人たち。
毛沢東が神としてあがめられているように見える。
観光客は巨大な毛沢東像との対面を終えると近くにある土産物に向かう。
どの店内にも毛沢東の顔をかたどったメダルやバッジなどたくさんの種類の記念品が並んでいる。
なかでも毛沢東の像は一家に一体はあるべきお守りとして人気を集めている。
「崇拝する偉人なので自宅にお招きして一家を守っていただくのです。」
毛沢東の像は地元にある町工場で作られている。
この工場は毎年大小合わせて3000体~4000体の毛沢東像を生産し
売り上げは500万人民元(8千万円)は下らない。
生誕120年を迎えた今年は生産量が4倍近くに増えているという。
土産物だけでなく役所や企業などに飾る大きな銅像も手掛けている。
高さ1m83㎝の銅像は生前の毛沢東の等身大である。
ある企業からの注文生産で価格は日本円にして約120万円。
別々に作っていた頭と胴体がつながったところで工場社長が出来栄えを見に来た。
毛沢東の像であるからには不恰好はゆるされない。
頭の向きがおかしくないか念入りに点検する。
この工場では生誕記念の12月26日までに納品しなければならない銅像の注文を他に設けていて
残業を増やして生産を急いでいる。
(工場社長 蘇正良さん)
「私たちは絶えず品質向上に努めており毛主席に似ていると好評です。
お客様からの注文が増えて最近はとても忙しいです。」
生誕120年を前にした毛沢東ブームは他にも広がっている。
毛沢東時代の古い書籍や写真などの収集いわゆる“赤のコレクション”の人気もそのひとつである。
10月下旬には北京でオークションも行われ100点以上が出品された。
(競売人)
「次は『毛沢東選集』。
最低価格は2万元です。
3万5千 3万8千 4万元。
4万元(約64万円)他にいませんか。
最後ですよ。
はい あなたのものです。」
毛沢東と直接関係のある物には特に高い値がついた。
将来の値上がりを見越して片っ端から競り落としていく人もいる。
(オークション参加者)
「書籍の値段は年々 上がっています。
この2年間は特にすごいです。
今年は毛沢東生誕120年で赤のコレクションが大人気です。」
毛沢東といえば“功績第一 誤り第二”という言葉があるように
大きな功績だけではなく政策には誤りもあったといった評価が高まってきたように思えたが
なぜいま称賛一色なのか。
今の中国のメディアや学校教育などでは毛沢東の功罪のうち罪の部分に触れることはなく
中国を建設した偉人という面だけが強調されているからである。
このため共産党幹部の腐敗や貧富の格差の拡大がどんどん深刻になるなかで
庶民の間では毛沢東時代は皆が平等で良かったというムードが広がっている。
宗教活動に制限がある中国で毛沢東が一種の信仰の対象になっていると言える。
一方で格差社会のひずみから生まれた信仰さえも
オークションのように金儲けのチャンスを見出そうという動きもあることが今の中国を表している。
今のブームは習近平国家主席が後押しした部分もある。
習主席は最高指導者になってからもこの1年間は大衆路線を全面に打ち出し
ぜいたくの禁止や党幹部の汚職の摘発の強化によって
格差の拡大に不満の庶民に寄り添う姿勢をアピールしているがこれは毛沢東のやり方に倣ったものである。
庶民の間に広がる毛沢東信仰を利用して自らの求心力を高める狙いがある。
習近平主席への権力の集中が進んでいるという見方もある。
習近平政権は26日に毛沢東生誕120年の記念行事を開催するとみられるが
香港のメディアによると
他の行事を共産党中央の許可なしに行わないようにという指示が出ているということである。
これは浪費を戒めることの他に
習近平主席こそが毛沢東の正当な継承者なのだと強調する狙いもありそうである。
ただ庶民に寄り添う大衆路線といってもあくまでも上からの政治運動であって
国民が政権を監督するシステムを取り入れようというものではない。
政治改革や民主化を求める人たちへの締め付けは逆に強まっている。
社会のひずみが毛沢東信仰につながっているが
毛沢東に倣う政治が社会の閉塞感をさらに強めるという構図が浮かび上がっている。