日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

18番ホールからちょっと早めの年賀状

2013-12-21 16:05:02 | 編集手帳
12月10日 編集手帳

『どうぞお先に』と題する阪田寛夫の詩がある。
〈真偽のほどは分からんが
 井伏鱒二氏は修業時代の文学仲間ライバルに
 よくこうおっしゃったと人から聞いた
 「どうぞお先に」…〉(『含羞詩集』より)

いつか抜き返す自信があって言えるセリフである。
年輪を重ねて作品に深みが増す文学者ならばそれもいいが、
肉体の全盛期に勝負をかけるスポーツ選手に「どうぞお先に」の余裕はない。
つらい時を過ごしただろう。

ゴルフの日本シリーズJTカップで宮里優作選手(33)が優勝した。
苦節11年、
初めて手にした栄冠である。

アマ強豪から鳴り物入りでプロに転じたが、
きまじめな性格が裏目に出てか要所で力を出し切れず、
大学の後輩である池田勇太、松山英樹両選手に先を越された。
いつしか定着した「藍ちゃんのお兄ちゃん」という脇役然とした呼ばれ方が胸にこたえないはずがない。
優勝の瞬間、
芝生に泣き崩れたのも分かる。

以前、
週刊誌が「年賀状に書く言葉」を読者から募ったことがある。
入選作を覚えている。
〈九千転び萬まん起き!〉。
18番ホールから、
ちょっと早めの年賀状をもらった気分である。
コメント