12月10日 編集手帳
『どうぞお先に』と題する阪田寛夫の詩がある。
〈真偽のほどは分からんが
井伏鱒二氏は修業時代の文学仲間ライバルに
よくこうおっしゃったと人から聞いた
「どうぞお先に」…〉(『含羞詩集』より)
いつか抜き返す自信があって言えるセリフである。
年輪を重ねて作品に深みが増す文学者ならばそれもいいが、
肉体の全盛期に勝負をかけるスポーツ選手に「どうぞお先に」の余裕はない。
つらい時を過ごしただろう。
ゴルフの日本シリーズJTカップで宮里優作選手(33)が優勝した。
苦節11年、
初めて手にした栄冠である。
アマ強豪から鳴り物入りでプロに転じたが、
きまじめな性格が裏目に出てか要所で力を出し切れず、
大学の後輩である池田勇太、松山英樹両選手に先を越された。
いつしか定着した「藍ちゃんのお兄ちゃん」という脇役然とした呼ばれ方が胸にこたえないはずがない。
優勝の瞬間、
芝生に泣き崩れたのも分かる。
以前、
週刊誌が「年賀状に書く言葉」を読者から募ったことがある。
入選作を覚えている。
〈九千転び萬まん起き!〉。
18番ホールから、
ちょっと早めの年賀状をもらった気分である。
『どうぞお先に』と題する阪田寛夫の詩がある。
〈真偽のほどは分からんが
井伏鱒二氏は修業時代の文学仲間ライバルに
よくこうおっしゃったと人から聞いた
「どうぞお先に」…〉(『含羞詩集』より)
いつか抜き返す自信があって言えるセリフである。
年輪を重ねて作品に深みが増す文学者ならばそれもいいが、
肉体の全盛期に勝負をかけるスポーツ選手に「どうぞお先に」の余裕はない。
つらい時を過ごしただろう。
ゴルフの日本シリーズJTカップで宮里優作選手(33)が優勝した。
苦節11年、
初めて手にした栄冠である。
アマ強豪から鳴り物入りでプロに転じたが、
きまじめな性格が裏目に出てか要所で力を出し切れず、
大学の後輩である池田勇太、松山英樹両選手に先を越された。
いつしか定着した「藍ちゃんのお兄ちゃん」という脇役然とした呼ばれ方が胸にこたえないはずがない。
優勝の瞬間、
芝生に泣き崩れたのも分かる。
以前、
週刊誌が「年賀状に書く言葉」を読者から募ったことがある。
入選作を覚えている。
〈九千転び萬まん起き!〉。
18番ホールから、
ちょっと早めの年賀状をもらった気分である。