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被災地発新ビジネス ⑤続く原発事故の影響 ある福島農家の挑戦

2014-03-14 09:10:00 | ビズ プラス
3月2日 BIZ+SUNDAY


東京電力福島第一原発の周辺では今も11の自治体が避難指示区域に指定され住民の帰還が進んでいない。
さらに重くのしかかるのが消費者の福島県品に対する厳しい見方である。
福島第一原発から70キロ離れた須賀川市で原発事故の後 風評以外と向き合う農家がある。

福島県須賀川市で果物と野菜を生産している農家 寺山佐智子さん。
2011年8月 最も売り上げの大きい桃の収穫時期。
寺山さんの桃からは放射性物質は検出されなかった。
しかし福島産というだけで消費者が購入を敬遠。
廃棄せざるを得なかった。
それまで年間300万円あった農園の売り上げは100万円以下に落ち込んだ。
(寺山佐智子さん)
「『やっぱり今年は福島の桃は贈れないよね』という方が多かった。
 ちゃんとわかってもらって売っていかないといけない時代になるだろうなと。」
寺山さんはそれまで人まかせだった販売方法を見直すことにした。
全国で開かれる復興イベントに積極的に参加して
直接 消費者に福島の農産物の安全性を訴えることにしたのである。
理解してくれる消費者にはその後もネットを通して販売している。
しかし最近は復興イベントが減少。
風評被害が続く中 売り上げも伸び悩んでいる。
自ら栽培する農産物の安全性を都会の人に知ってもらうためにはどうしたらいいのか。
寺山さんは新たな取り組みを始めた。
地元の農業を体験してもらうツアーを考えたのである。
自宅の蔵を約100万円かけて宿泊施設に改装。
宿の経営やツアーを企画できるように株式会社も設立した。
(阿部農縁 寺山佐智子さん)
「風評に向かって槍を向けない。
 それはそれで受け止めるだけ。
 人が安全と言われても安心を勝ち取るのは人それぞれなので
 それを安心と思って選んでいただける方を1人でも多く
 その方たちに感謝をしてその縁を大切にする。」
寺山さんは近所の農家にも体験の場を提供してくれるよう呼びかけた。
賛同した1人 酪農家の小林加代子さん。
原発事故の直後に小林さんの牛乳も一時出荷停止となった。
消費者の信頼を取り戻したいと寺山さんの誘いに応じた。
(小林加代子さん)
「こういうツアーをやっていくという話を聞くうちに
 福島の酪農のことを少しでも皆さんにわかってもらえたらいいなと参加した。」
2月 寺山さんは農業体験ツアーを試験的に行なった。
参加したのは東京から来た親子である。
寺山さんと被災地復興の勉強会で知り合った。
この日 最初に案内したのは小松菜を栽培する農業用のハウス。
有機栽培された野菜の採れたてのおいしさを知ってもらうのが狙いである。
小林さんの牧場では乳搾りを体験した。
絞った原乳はチーズに加工。
チーズは野菜がたっぷり入ったみそ汁に入れる。
小林家に伝わる母の味である。
夜は寺山さんの宿泊施設で食卓を囲んだ。
(岸憲正さん)
「東京にいたり消費地域にいると
 ベクレルとか数値とか検査体制でしか情報来ないけど
 ここに人が住み生きていて我々も享受している。
 そういうのを感じてくれたかな?」
福島の農業を回復されるには消費者と生産者の距離を近づける地道な活動が欠かせないと寺山さんは考えている。
(阿部農縁 寺山佐智子さん)
「一人だけ自分のところだけよくなっても絶対どん詰まりがあって
 そんなに伸びるものではなくて
 みんなでやっていった方がすごく可能性が広がっていく。
 みんなが喜んで笑顔になって元気になっていくことを提案するのが私の役割。」


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