7月2日 編集手帳
根津甚八さん演じる青年の独白がある。
〈夕暮時(ゆうぐれどき)というのが嫌いだった。
昼間の虚勢と夜の居直りのちょうどまん中で、
妙に人を弱気にさせる〉。
往年のテレビドラマ『冬の運動会』の一場面を向田邦子さんのシナリオ集から引いた。
「どうにかする」の虚勢が「どうにでもなれ」の居直りに転じる境目が夕暮れどきかも知れない。
私見を申し添えれば、
たしかに仕事をしていて何となく尻の落 ち着かぬ時間帯ではある。
その時間帯を趣味に、
団欒(だんらんに充てられるとすれば、
意味のある試みだろう。
国家公務員の始業時間を1~2時間早める夏の朝型勤務「ゆう活」(ゆうやけ時間活動推進)が始まった。
業務によっては、
早めに登庁しても退庁の時刻はそう変わらず、
労働時間が長くなるのを心配している人もいるはずである。
全員歓迎とはいくまいが、
残業を減らして長時間労働の慣行を改めるきっかけになればいい。
川崎洋さんの詩『どうかして』の一節を思い出す。
〈夕陽ゆうひ/教えておくれ/どうして/坂の上に子供達が集まって/お前を視みるのか〉。
平日の夕方、
自宅のそばで答えを見つける人もいるだろう。