7月7日 編集手帳
朝顔という花には、
どこかしら人に時の流れを考えさせるものがある。
俳人の石田波郷は〈朝顔の紺のかなたの月日かな〉と詠んでいる。
鉢植えを育て、
夏休 みの絵日記に写生をした小学生の遠い昔を思い出す人も多かろう。
東京・入谷の鬼子母神できのう、
「朝顔市」がはじまった。
なでしこジャパンに声援を送ったすぐあとでその話題に接したせいか、
ふと、
ユニホームの紺のかなたの月日を思い浮かべた。
4年前、
同じサッカー女子ワールドカップ(W杯)のドイツ大会を制したなでしこたちである。
東日本大震災という心の干天に降った慈雨のような優勝は忘れようにも忘れられぬものがある。
今回のカナダ大会は残念ながら米国に阻まれて連覇は成らなかったが、
世界一に輝いた前回の興奮とはまた別の贈り物をもらった気がする。
試合後、
涙の止まらない岩清水梓選手の肩を、
初戦で骨折した安藤梢選手が笑顔で抱いていた姿が瞼(まぶた)に残る。
〈ただ人は情あれ、
朝顔の花の上なる露の世に〉(室町期の歌謡集『閑吟集』)。
ものの本によれば、
朝顔の花言葉は「固い絆」と「明日もさわやかに」だという。