10月24日 おはよう日本
東北有数の米どころ 山形県庄内地方でもいま新しい取り組みが始まっている。
滑るように水田を一直線に走るホバークラフト。
無線操縦で進みながら除草剤をまく。
鶴岡市で農業法人の代表を務める大瀧敦さんがこうした技術を導入する背景にあるのは農地の大型化だった。
地元の農家5人と10年前に農業法人を設立し水田を年々拡大。
いまは倍の43ha(東京ドーム約9個分)に拡大した大規模農家の1人である。
大型化で目が行き届きにくくなり稲の育ちにムラが出て収穫量が思うように増やせない問題に直面していた。
このため企業の支援を受け生産効率を高める対策に乗り出した。
使ったのが小型の無人機ドローンである。
特殊なカメラを搭載し田んぼの上を飛ぶ。
田んぼの生育が順調な場所と生育が悪い場所をカメラで撮影する。
生育が悪い場所には無線操縦の小型ヘリコプターが向かい肥料の量を自動計算し撒く。
(大瀧敦社長)
「田んぼの中心部分は遠目に見て判断することしか今まではできなかった。
それがしっかりできるようになればムラがなくなっていい。」
企業が3つの田んぼを調べた結果
ドローンや小型ヘリを使った田んぼは
使わなかった田んぼに比べ生育のムラが平均で40%減った一方
収穫量は平均で10%増えた。
今後 他の田んぼも含め詳しい効果をまとめる予定である。
(大瀧敦社長)
「今までのような経験と勘でやるのではなくて
新しい技術を取り入れ科学的なデータのもとに栽培をしていけば
今までにない農業経営ができると思う。」
農家からは新技術に期待の声もあるが
導入にかかる費用の捻出は新たな負担である。
浅間山を望む長野県佐久市。
農家を行政が強力に支援する取り組みが行われている。
佐久市の農業法人の社長 丸山和則さん。
水田を管理し経営完全に役立つシステムを利用している。
スマートフォンで稲の生育状況や従業員の作業時間のデータを入力すると
田んぼの作業にかかる人件費が表示される。
人件費の高い田んぼには必ず何らかの理由があるとみて原因を徹底的に調べている。
(佐久市の農業法人 丸山和則社長)
「データを蓄積することで
無駄な作業の洗い出しとかそこにかかるコスト削減につなげていきたい。
それを次年度
また次の年につなげていけば大きなコスト削減
経営改善が期待できる。」
生産コストを下げることができればその分が農家の手取りにつながる。
長野県はそう考え企業と契約。
丸山さんを含め県内8つの農業法人に今年から3年間このシステムを試験導入している。
システムの年間の利用料金は合わせて600万円。
地域全体の競争力を生み出すために全額を長野県が負担している。
(長野県の農業技術課)
「皆さんにまずはやっていただいて効果を検証しながら
大勢の皆さんに使ってもらえるようなシステムになればいいと思う。」
地域の農業現場への普及。
専門家は経費の面で技術を活用しやすいようにすることが重要だと指摘している。
(先端農業連携推進機構 原誠統括責任者)
「農家にとって低料金のサービスでないと経営が成り立たなくなる。
高価な高度のものよりも
一定の品質のサービスを低料金で提供できるようなビジネスが立ち上がってくると思う。」
人口減少やTPPの大筋合意など次々と農業現場に押し寄せる変化の波。
乗り越えるには収益性を高め競争力のある農業の新しいモデル作りがカギになると言えそうである。