11月12日 編集手帳
普通は「じゅういち」と読む。
これは通称で、
正式には「いちいち」と読むのがほんとうらしい。
戦後初めての国産プロペラ旅客機「YS―11」の“11” である。
Yはローマ字の略号で「輸送機」を、
Sは「設計」を意味する。
数字は、
エンジン番号1と機体番号1を組み合わせた「11」だという。
呉智(くれとも)英(ふさ)さ んの著書『言葉の常備薬』(双葉社)からの受け売りである。
二つの〈1〉には開発に携わった人々の誇りと感慨がこめられていよう。
その〈1〉がカレンダーに並んだ日である。
お披露目に、
これ以上の吉日はあるまい。
国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」がきのう、
約1時間半の初飛行を果たした。
国産旅客機の開発は「YS―11」以来、
ほぼ半世紀ぶりとなる。
海外のライバル機を相手に、
技術力のみならず、
販売力でも最強の〈1〉を目指す旅がこれから始まる。
何年か前、
缶コーヒーのCMで宇宙人がつぶやいていたのを思い出す。
「この惑星の住人は上を向くだけで元気になれる」。
青空に機影を仰ぐ航空ファンの表情をテレビで眺めては、
宇宙人にそっとうなずく。