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急増 中国人観光客 苦悩するバス業者

2015-11-26 07:30:00 | 報道/ニュース

11月12日 おはよう日本


静岡空港は東京と大阪の中間という立地の良さ。
さらに世界遺産となった富士山を目当てにいま中国人観光客が急増している。
今年の国際線の利用者は去年の2倍以上の約31万人。
空港や周辺のホテルは連日大勢の観光客でにぎわいを見せている。
しかしその経済的な恩恵が必ずしも及んでいないのが観光バス業者である。
「ドライバー同士で話をしていると
 1日1万円くらいで12時間働いて
 コンビニのアルバイトより安い。」
観光客の増加がなぜバス業者の利益につながらないのか。
社長の有賀重裕さんは
従業員6人を雇い
中国人観光客を乗せる観光バスを運行している。
この会社がバスを運行したツアーは富士山や東京などをまわるが
1日当たり受け取る料金は70,000円。
人件費や燃料代を差し引くとほとんど利益は出ないという。
(バス会社 有賀重裕社長)
「運賃の設定が非常に低いレベルで設定してある。
 相当回転させないと利益出せない。」
受け取る料金が安く抑えられている理由
有賀さんが指摘するのがランドオペレーターという業者の存在である。
ランドオペレーターは日本にいながら中国の旅行代理店から仕事を受注する。
日本に事務所を持たない旅行代理店に代わって業務を行う仲介業者の役割を担う。。
指定された予算で宿泊先やバスの手配を行うのである。
バス業者への支払いを安く抑えれば抑えるほど
ランドオペレーターの利益は増える仕組みになっている。
現在急増している中国からのツアーの多くにこのランドオペレーターがかかわっているという。
中国から来日し年間300件もの仕事をこなすというランドオペレーターの女性。
全国各地から少しでも安い価格で仕事を受ける業者を探すことが欠かせないという。
(ランドオペレーター)
「安い業者が多いのは千葉県 三重県 愛知県
 山の奥の県のバス業者はある程度料金に応じてくれる。
 バス代を安く抑えなきゃいけない。
 抑えないとランドオペレーターは全く利益が出ない。
 赤字になるだけ。」
日本人ツアー客が伸び悩むなか
バス業界にとり中国人観光客は今後も増加が見込める数少ないビジネスチャンスである。
有賀さんの会社も生き残りをかけて料金を低く抑えられても仕事を受け続けた。
少しでも利益を出すために営業の範囲を超えてバスを走らせることが増えていったという。
その結果今年8月
この事実が発覚し
バスの運航を100日間止められる行政処分を言い渡された。
(バス会社 有賀重裕社長)
「運転手の給料が最低を割ることはやっぱり不可能。
 仕事薄いならまだいいが
 なかった時があったのでやらざるをえない。」
いまこの会社のように利益を出そうとするあまり法令違反を犯すバス業者は少なくない。
去年全国の運輸局が空港などで観光バスを対象に抜き打ちで監査をした結果
約4割のバスが何らかの法令違反を犯していたことが明らかになった。
こうした違反が事故につながるケースも出始めている。
今年4月に中国人観光客15人にけがを負わせた事故は
車体の安全検査をする時間を削りバスを走らせ続けた結果
ブレーキが利きにくくなっていた。
その理由についてバス会社の社長は
仕事を断れば依頼が来なくなると思った
と話している。
こうした事故は全国各地で相次ぎ
観光客の安全を脅かす事態となっている。
危機感を持った国は対策に動いた。
去年4月新たな制度を起ち上げ
ランドオペレーターからバス業者に支払われる料金は高くなるようにした。
しかし新たな制度が守られていない事実が明らかになった。
20代のバスを保有するバス業者は
ランドオペレーターから毎月40件ほどの依頼が来るというが
新しい料金を提示されたことは1件もないと言う。
(バス業者)
「いま“新料金でやってくれ”というランドオペレーターはいない。
 ランドオペレーターだって出したくない
 いくらかでも抑えたい。」
新しい制度ではバス業者の料金は
静岡空港→富士山→東京の場合
これまで1日7万円ほどだったのが13万円ほに引き上げられるはずだった。
しかしこの業者のもとにランドオペレーターから送られてきた依頼書の料金の欄は空欄となっている。
料金の交渉はすべて電話で行われ
そこで示される額は新たな料金の水準を大きく下回ると言う。
それでも業者の立場上その要求をのまざるを得ないのが実情である。
(バス業者)
「ランドオペレーターにまともに新料金ぶつけたら
 この仕事はなくなる。
 安い料金でもやるところがあるからそっちに行ってしまう。
 仕事がない業者はそれ以下でも欲しいっていうか
 自分で自分の首を絞めているところが多い。」

 

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