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パリの一筋の光

2015-11-22 07:30:00 | 編集手帳

11月21日 編集手帳

 

 秋が深まりゆく。
シャンソンの『枯葉』が似合う季節である。
第2次世界大戦直後のフランス映画に使われ、
後にジュリエット・グレコの名唱を得て、
世界の心をつかんだ。

物憂い曲調に加えて、
過ぎ去った恋への追想を描く歌詞の魅力があるのだろう。
日本でも様々に訳して歌われるが、
少女の絵で知られる画家、中原淳一の訳詞が忘れがたい。

〈風の中のともしび
 消えていった倖(しあわ)せを
 底知らぬ闇の中
 はかなくも呼び返す…〉。
胸に響く言葉がこの秋はいつもと違って聞こえる。
パリに倒れ、
呼び返しても決して戻ってこない家族や親友を思う人たちの悲嘆と無念が重なるからである。

過激派組織「イスラム国」による同時テロから1週間がたつ。
「戦争状態」に陥ったパリは厳戒態勢がつづく。
更なる蛮行の阻止へと国際社会も連帯を強め、
包囲網が形成されつつある。

〈君たちに憎しみという贈り物は与えない〉。
同時テロで妻を失ったジャーナリストのメッセージをかみしめている。
憎悪でなく理性を力として不条理に立ち向かう意思表示だろう。
底知れぬ闇の中にあってほの見える、
一筋の光である。

 

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