11月22日 編集手帳
21歳の史上最年少横綱は初日から黒星を喫した。
〈怪童にも『新横綱』の重荷〉。
翌日の本紙に付いた見出しである。
その相手、
前頭筆頭だった金剛には次の場所でも敗れた。
三振を繰り返した長嶋茂雄さんのデビューに重ならなくもない。
北の湖敏満さんである。
3場所目で金剛を下し、
横綱としての初優勝も飾る。
栄光を極めたその後の土俵人生に説明の要はなかろうが、
ファンからの愛され方は、
長嶋さんとは少しちがった。
盤石の取り口をたたえつつも、
強すぎて逆にあきたらず、
負ける姿も見たくなる。
「憎らしいほど強い」の賛詞にファンの気持ちが表れていた。
横綱昇進の1974年は、
日本経済が戦後初のマイナス成長を記録した年である。
前年に石油危機が起きた。
日本中が元気満々だった〈巨人・大鵬・卵焼き〉の時代が過ぎ、
国民もちょっと引いた目でヒーローを見るようになっていたのだろうか。
長嶋さんはこの年、
大鵬はその3年前に 引退している。
双葉山、栃錦、若乃花、大鵬…昭和の名横綱という“称号”は同じでも、
北の湖の昭和は、
そう昔ではない。
早すぎる訃報に言葉を失う。